第23話 仕方ないじゃない
笑われてしまった。
仕方ないじゃない。私は、こんな風に小さく転生してしまったのだ。
「私なりに頑張っているのに」
「頑張っている? だが、力が足りないのは、明白だろう? この桃源郷を見てみろ」
「見てみろって何よ。緑豊かに青々と植物が元気にしていますが?」
「そこがおかしい。『桃源郷』だと言っているだろうが。西王母の力が正常に働いているならば、ここは、桃の花の淡いピンク色に包まれて、霊気があふれているはずだ。そうすることで、蚩尤を寄せ付けない」
そう……よね。確かに。
だって『桃源郷』だもの。その語だけを聞いて絵を描くとすれば、それは、桃の花があふれかえり、花の匂いあふれる世界だろう。
現状のような、緑あふれる世界というのは、正常ではないと言われれば、そのような気がしてくる。
「長牙、本当のところ、どうなのよ?」
「そりゃ、東王父様がおっしゃる通りなのですが……まあ、仕方ないですよ。だって、こんなに幼い桃華様に、その仙術の力で桃源郷全てを覆いつくせ、なんて言えません。最終目標はそれとしても、幼いちっこい桃華様には、到底無理ですから」
むぅぅ。
そういう言われ方をすると、何だかひっかかっちゃうのよね……。
「早く大きくなれ。桃華」
東王父・水月が、優し気な微笑みを浮かべる。
あれ? この人は、前世の私を殺したのではなかったの?
それが、どうして私の成長を願い、そんな優しい表情を浮かべるの?
「貴方は……私を殺したのではないの?」
「わ、ちょっと! 桃華様! そんな露骨な!」
私の言葉に、長牙が慌てる。
「フッ。その通りだな。だが、詳しい話は、お前が成長してからだ。今のままでは、何の話にもならない」
東王父は、そう言って、霖雨と一緒に立ち去ってしまった。
どういう意味なのか、サッパリ分からない。
「良かったですね。小さくて。お陰で相手に攻撃の意志はなかったようですし」
青鳥が、やれやれと、胸をなでおろす。
「だいたい、あんな風にこちらを吟味されるのは、いけ好かないです!」
長牙が、ムッとしている。
それは、私も同意する。
品定めされて、何だ、ちっこいじゃないか! と勝手に失望されるのは、ちょっとどころでなく腹が立つ。
「しかし、早春の門も取り戻しましたし、これで仙女達も崑崙山から帰って来ますでしょう。そうなれば、この桃源郷もずいぶんと安全になります。そうなれば、ゆっくりと、桃華様の成長の秘密を探ることが出来ましょう」
長牙の展望は、とても前向きだ。
長牙の言う通り、良い方向に好転してくれればいいのだけれども。
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