第22話 東王父 水月

 前世の私である先代の桃華を殺した最重要参考人、犯人だと疑惑がある東王父がここに来ている。

 なかなかのパワーワードだ。


「早春の門が開いたことで、桃源郷に異変が起きたことにお気づきになられたそうです。『早春の門が開いたならば、西王母桃華が転生しているはずだ』。と、おっしゃられて!」


 青鳥が、オロオロと焦っている。

 だが、ここまで来てしまったのなら、仕方ない。

 これは、堂々と迎え撃つことによって、相手がどんな人間で、どう考えているのかを知るべきだろう。


「分かったわ。会ってみる」


 どんな奴かは知らないが、ここで青鳥と長牙が警戒している前で私をまた殺害することはないだろう。

 ドキドキしながら待っていれば、現れたのは……とてもイケメン。

 隣に連れている青龍は、私の長牙と同じ『使い魔』ということだろう。

 炎花を見た時にも、イケメンだとは思ったけれども、東王父は、なんだか違う、オーラみたいなものを感じる。


 炎花が可愛いアイドル系のイケメンなら、東王父は、イケメンの俳優さんかな? あの夢に出てくる前世の桃華と並べば、ため息をつくほどのお似合いだろう。


「なんだ。ずいぶんと小さく生まれ変わったものだな」


 え、今私を見てがっかりしなかった?

 待って、私だって好きでこんな幼い姿ではないし。

 がっかりされるのは、心外なんだけれども、えっと……殴っていい?


「東王父の……」

水月すいげつだ。そんなことも覚えていないのか」

「仕方ないでしょ? そんなこと言われたって。こっちは、転生してきてまだ間もないのよ? しかも、どうやら手違いで幼い姿だし、記憶も曖昧だし……」

「ふうん」


 なんだか少し寂しそうな水月。


「水月様。この小さな桃華様が、『早春の門』を取り戻したというのですか? とても信じられません」


 水月の隣の青龍が、そっと水月が耳打ちする。


「何よ。何か文句あるの?」

「水月様にその口の利き方! 桃華様と言えども許しませんよ!」


 どうやら、ウチの長牙とは違って、この青龍は水月に忠実なようだ。

 

「気にするな。霖雨りんう。ちっこくて粗野でも『桃華』だ」


 粗野ってなんだ! 粗野って!

 ―――粗野、つまり言葉や行動が荒っぽいってこと?

 ほら、長牙! 霖雨みたいに、「桃華様を愚弄する気か!」なんて言い返せ!


「粗野……。まあ……それは否めませんが。ですが、この方は、本当に桃華様なんです。使い魔の私が保証いたします」

「ちょっと、長牙! その言い方!」


 私はムッとする。

 水月と霖雨は、目を丸くしている。


「今生の桃華は、ずいぶん元気だ!」


 水月がそう言って笑った。

  


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