第21話 睡蓮の話
水の大仙女睡蓮の調べてくれていたのは、私がどうしてこんな風に幼い姿で転生してしまったのかということ。
私は、蕨に連れられて、睡蓮の家へ入る。
片付いた室内。干し柿が梁から吊るされている。
几帳面な睡蓮の生活を表したかのような整えられ、手入れされた生活器具が目に入る。幼い蕨の持ち物なのだろうか、手縫いのウサギのぬいぐるみが置かれている。
「西王母様……」
「睡蓮、気にせず桃華って呼んで」
「では、桃華様。私が調べていたことをご報告させていただいても?」
私は、睡蓮の言葉に、コクリと首を縦に振る。
「記録を調べましたところ、現状の桃華様のように幼い姿で転生されたという前例はございませんでした。皆、十分に成長した状態で転生を遂げられます」
大人の姿で、元の記憶も明確に持って、私が転生してきたあの森に来るのだそうだ。
「一つの可能性として、転生前の桃華様が、幼い状態であった……なんてことも考えましたが、桃華様の話では、人間界では、お仕事をされるほどの年齢で大人であったとのこと」
そう。建築関係の仕事をしていたということは、思い出した。仕事で田舎に住んでいる施主を訪ねて赴いた帰りに、私はコンビニで見つけた桃を食べて、この場所に来たのだ。
思えば不思議な話。
桃に選ばれたのだと長牙が言っていたけれども、やっぱり何かの間違えで、突然返品されて、あの桃を食べた場所へ戻されるのではないかと、内心疑っている。
「では、なぜ? それを追求しても、何も出て来ませんでしたので、どうやって? という観点から考えてみましたところ」
「何か分かったの?」
「それを出来る能力があるとすれば、生死や成長を司る桃華様か、東王父様が関連していると考えることが自然ということになります。他に方法を探ってみても、どう考えても、桃華様か東王父様の仙術を使わなければ、不可能です」
「ということは、やっぱり私を殺害したのは、東王父ってことかしら?」
まだ見ぬ前世の桃華の伴侶であった東王父。
その東王父が仙術で、私の成長を阻害しているということか?
どんな奴かは分からないが、ずいぶん卑劣なやつだ。許せないな。
おかげでこんなに苦労している。
まだ会ってもいない東王父だが、ずいぶんと印象は悪い。
「東王父様にお会いするのは、まだ時期が早そうですね」
「そうね。その様子では、東王父は、私を殺害する気でいるかもしれないわ」
何故そんなことをするのか、本人に問い詰めたい想いはあるが、今は時期ではない。今は、早春の門を取り戻したところだ。
崑崙山へ逃げたという仙女達を呼び戻し、桃源郷の守りを万端にする。
そうして、蚩尤の襲撃を防いだ上で、ラスボスの東王父に会うのが妥当だろう。
炎花と蓮華の様子を見に行くという睡蓮と分かれ、私は蕨と長牙と一緒に王宮へ。幼い蕨は一人にしておけないから、睡蓮が戻るまで、お泊りだ。ちょっと楽しい。
「桃華様!! 良かった! どうしようかと思ってたんです!」
着いた途端に、青鳥が走ってくる。
「どうしたの? そんなに慌てて」
「どうもこうもないんです! 急に東王父様が訪ねて来られてぇぇ!!」
え? 何て?
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