第13話 夜食
「まあ、まずは、木の大仙女様をお探ししてお話を乞いましょうよ。大仙女様しか知らないことがあるかもしれませんし」
青鳥が皆をなだめる。
そう青鳥は言って、部屋を出て行った。
青鳥が部屋を出て行ってすぐ、炎花が、グリグリと長牙の眉間を拳で攻める。
「てめえ! 大事なことをずっと黙って嫌がって!」
「ちょっと! 炎花様! 痛いですって!」
大暴れしている二人。
私は、見ている内に疲れで眠くなる。
料理上手の青鳥の作る夕餉なんて楽しみでしかないし、お腹は空いているんだ。
「おっと!」
うつらうつらして椅子から転げ落ちそうになる私を、炎花が受け止めてくれる。
「ご飯は食べたいのに……」
そう目を擦りながら呟く私に、
「本当に小さな子みたいだ」
と炎花が苦笑いをする。
「後で起きた時にお夜食を食べさせてもらえるように、青鳥に頼んでおきますから」
耳にかろうじて届いた長牙の言葉に、私は、コクリと首を縦に振る。
炎花が私を抱き上げて寝所に連れていってくれる。
私が目を覚ました時には、青鳥は、温かいフォーを作ってくれた。
優しい味のフォーは、パクチーの香味と合わさってスルリと胃に落ちていく。
「炎花と長牙は?」
「もう休んでいますよ」
「ごめんね。夜中に仕事させて」
美味しい物が食べられるのは有難いが、本来、青鳥だって休んでいるはずの時間ではないだろうか?
「いいんですよ。まだ幼い桃華様を連れ回す長牙が悪いんです。あの虎、何を焦っているんでしょうね? もっとゆっくり桃華様の成長を見守ればいいのに!」
青鳥がそう言って苦笑いする。
「青鳥は、先代……私が人間の世界へ行く前の桃華が死んだ時を知っているのでしょう?」
「ええ。先ほど申しました通り、この目で見ました。でも、何かおかしかったんじゃないかって自分でも信じられないんです。だから、長牙と相談して、桃華様の記憶がちゃんと戻って、事の真相が分かるまでめったなことは言わない方がいいと思って黙っていたんです。だって、東王父様が、西王母様を殺害って、シャレにならない仙界全てを揺るがす出来事ですから! それなのに、長牙のやつ、炎花様の脅しに負けるなんて」
西王母の伴侶であり、西王母と対をなして仙界を治める東王父。西王母とともに蚩尤を退けるために戦っていた。
その東王父が、西王母を殺害して何の得があると言うのだろう。もし、西王母の桃源郷が欲しくてそうしたのであれば、とっくの昔にそうしているだろう。
だが、東王父がこの桃源郷を支配しているという話はない。
今の桃源郷は、残された力の弱った仙女達や長牙、青鳥が、民と共に必死で守っている状態だ。
えっと、じゃあ浮気? 他に好きな仙女が出来たから、西王母・桃華が邪魔になったとか? え、それはすごく腹が立つ泥沼サスペンス展開。
東王父に会ったことはないが、それは嫌だな。
「明日、木の大仙女様を探しに行きましょうと、長牙が申しておりました。焦らずに、正しい真実を探しましょうね! 桃華様!」
青鳥の言う通りだ。
今あれこれと想像して勝手に東王父を疑っても仕方ない。
私は、コクリと首を縦に振った。
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