第7話 仕事
「ちょっと長牙! まだ桃華様は食事中でしょ?」
青鳥は長牙に文句を言う。
「だって仕方ないだろ。桃華様には、やっていただきたいお仕事が沢山あるんだから!」
長牙がムッとする。
どうやらゆっくりと朝食の粥を堪能している暇はないようだ。
慌てて飲もうとすれば、むせてしまう。
どうもこの小さい子どもの体は、未成熟で色々と面倒だ。
コンコンとむせれば、青鳥が背を撫でてくれる。
「ほら、桃華様がむせちゃったじゃない! ちっちゃい子はちゃんとゆっくり食べないと、喉につっかえてしまうんです!」
青鳥が、ベエッと長牙に舌を出して不満をあらわにする。
「長牙、今日の予定は?」
私が尋ねれば、
「昨日の睡蓮様との出会いで、一つ考えたことがございまして。五行の大仙女様が数名この桃源郷に留まっていらっしゃいます。早春の門が閉じられてしまったことで、力は弱まっていらっしゃいますが、それでも他の者よりかはやはり力は強く知識も豊富です。大仙女様を訪ねることで、早春の門を取り返す方法を考えたり、桃華様の記憶を取り戻したり、そういったことの手助けになるかと思いまして」
と、長牙が答える。
なるほど。大仙女と言われているくらいだから、何か知っているかもしれないということか。水の大仙女の睡蓮が調べておいてくれていると言っていた。その調べた内容と合わせて考えるためにも、こちらからも動いた方が良いということか。
「その活動をしつつですね、
長牙が付け加える。
ええ~っ。……まあ、仕方ないのか。だって、私の西王母の力を使わないと、国のいたるところで国民が困っているのだから。
昨日見た蚩尤は、とても恐ろしい物だった。
黒い霧に包まれていて、その正体は見えなかったが、とても邪悪な気を感じた。
あれを、あの夢で見た美女、つまり私の先代の西王母……ややこしいな、生まれ変わる前の私は、難なく倒していたという。
本当にあの美女が、私の生まれ変わる前の姿なのだろうか? 今の姿になる前は、自慢じゃないが、そんなにパッとしない容姿だったのだが。
普通を絵に描いたらこんな感じになりましたっていう感じ? 目立たず、卒なく。可もなく不可もなく。そういう人生だったのだが。
それが、生まれ変わったら、こんな可愛い少女になっていて、生まれ変わる前は、とんでもない美女だった。しかも、唯一と言われる仙術を持っている。
本当かよ? 実際に桃華としてここに居ても、まだそう思う。パッと目覚めたら、元の体に戻っていて、あのコンビニの近くにあった田舎のバス停で爆睡していたっていう謎の夢オチになりそうな気すらしてくる。
「まずは、火の大仙女様にお会いいたしましょう!」
元気よく長牙は言った。
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