十八膳目:九月某日(土)ついに我が家にもやってきた!令和の米騒動

 朝、六時。

 心地よいメロディーと共に、柔らかな湯気が鼻をくすぐってくる、この時間。

 炊き立てのごはんが一日の始まりを教えてくれる、いつもと変わらない朝の日。

 しかし、もしかすると少しで、この朝の光景が変わってしまうかもしれない――――


 今年の四月から高校生になった、我が家の寝ぼすけ坊主。

 中学校までは学校給食があったのだが、高校では昼食用のお弁当が必須になってしまったため、去年よりもご飯もおかずも倍の量を準備することになってしまった。

 そのため、毎朝のほんの僅かな楽しみだった『二十分間の二度寝タイム』は、泣く泣く終了。

 朝五人分の朝食と夕食の仕込み、そして、連れ合い用、寝ぼすけ坊主用、そして自分用のお弁当を同時に作るためには、今までの六時二十分起きでは到底間に合わない。

 実は六時起きでもタイムリミットとしてはギリギリの時間なのだが、朝は出来るだけ寝ていたい自分にとって、これ以上早く起きるのは無理な話。

 というわけで、今では、平日の朝は六時きっかりに起床する生活リズムに変わり、物凄い眠気と毎朝戦いながら、キッチンで慌ただしく動き回る日々が続いている。


 そんな、バタバタ状態の中でも何とかやってこれているのは、毎朝のメニューがテンプレートで出せるから。

 炊き立ての白いご飯に、油揚げと野菜を入れたお味噌汁。そして、魚または卵料理をメインに据えたワンプレートおかずが毎度の定番。

 基本の土台があるからこそ、この短時間でこなすことが出来るのだ。

 だが、その基本土台が、ここへ来てガラガラと崩れかかろうとしていた。

 ――――そう。しばらくニュースや新聞で報じられてきた、『米不足』の余波によって。


 我が家は、家族全員がご飯派であり、かつ、米処の地域に住んでいるため、年間三百六十五日、または三百六十六日、余程のことがない限り白いご飯が必ず朝食に出てくる。

 我が家にとって、米はパワー。『米は力なり』なのだ。

 そんな普段もりもりと食べている我が家の米は、ジジババの知り合いの米屋から仕入れている。特定の期日に三十キロサイズの米袋がドドンっと届くようになっているのだ。

 そのため、家には毎年大量の米があるため、年度途中で不足になって別のお店で買い足したことなどなく、最初は『令和の米騒動!』なんて報道を見ても何を言っているのか飲み込めず、キョトンとしていたのだ。


 こんな米処の地域で、そんな現象が起こるわけないだろう。

 どうせ、都会の一部の地域だけの話が、大きくピックアップされているだけなのだろう。


 と、ご飯茶碗にたっぷりと盛った白いご飯に、専用のタレで旨味を染み込ませたマグロとアボカドの漬けた物をこれまたたっぷり盛り付けてむしゃむしゃと食べながら、そんなニュースを眺めていた日から数週間後。


 その、『令和の米騒動!』が、遂に我が家にもやって来てしまったのだ。

 なんと、毎年米を購入していた米屋の米びつが、空っぽになってしまったらしい。


 そんな、バカな……。


 確かに、数日前に近所のスーパーでも、『お米の購入は一家族一袋まで』といった張り紙がされているのを見かけたのだが、その時はこんな地方にここまで余波が来ているなどと思ってもみなかった。

 住んでいる地域はそこら中田んぼだらけだし、今は新米の稲刈りがほぼ八割ほど終わっていると聞いていたから、例え米不足であったとしてもすぐに補充されると思っていたのだ。


 なのに、米屋に米がないなんて。信じられない……。


 当面は、既に購入予約してある分があるため、我が家ですぐに米不足になることはないと思われるのだが、それでも、一ヶ月後にはどうなるかわからない。

 これからは、朝食にパンを導入することになってしまうのか。

 しかし、その場合、いつもの朝食作業ルーティンが崩れてしまい、あの短時間でこなすことに支障が出かねない。

 基本土台があるからこそ、あの時間でやりこなせているのに、別の要素が入ってしまったら、きっと大幅な時間ロスになってしまうだろう。

 そうすると、結果的には、今よりももっと早く起きねばならず、自分の睡眠リズムにも変化が出てきてしまうかもしれない。

 それだけは、イヤだ。朝は、ゆっくり寝ていたいのに。

 本当に困った、我が家の米不足問題。

 とりあえず、朝がパン食の皆様に、どんなメニューを食べているのか聞いてみたいところ。

 パンの他にも、朝食メニューで何か良いアイディアがあれば、教えていただきたい。



「――、おはよう! ご飯ですよ〜」



 秋不足も感じる今日もまた。

 美味しいご飯を食べて、いってらっしゃい。


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