十七膳目:八月某日(木)今年もやってきた夏野菜との闘い

「あぁ、今年は“おばけ”との闘いか。どうしようかな……」


 酷暑が続く、八月のある朝。

 野菜室に大量に入れられた緑のなが〜い物を見て、連れ合いと一緒に朝食を取りながら深いため息をつく。

 この“おばけ”に美味しく打ち勝つためには、どんな作戦を練ったらよいのか。

 今年もまた、頭を悩ませる時期になってしまった。


 我が家の裏庭には、ジジババの趣味で家庭菜園が作られているのだが、夏になるとトマトやきゅうり、ナスに枝豆など、実に様々な野菜が収穫できるようになっている。

 そのため、料理担当の身としては、豊富な野菜を活用できるため大変助かっているのだが、あくまで家庭菜園のため、採れる物の中には、形が不揃いの物や味がイマイチな物もあり、収穫量もバラバラだ。

 で、大変なのが、育ちきれなかった物や育ち過ぎた物が『大量に』採れた時。

 野菜のため、物によっては長持ちせず、しかも一度に大量に採れるため、それを加工するのに苦慮するのだ。

 ちなみに、これまで最も苦戦したのが、赤くなりきれなかったトマト、つまり青トマトだ。

 そのまま生で食べることは難しく、他の料理に入れてもえぐみが強く出てしまう。

 どう料理に活かそうか試行錯誤したのだが、結果、『挽き肉たっぷりのトマトソース』にすることで、青トマトとの闘いはなんとか勝利。


 毎年、何かしらの野菜と闘っている気がするのだが、今年は育ち過ぎたきゅうり、いわゆる“おばけきゅうり”との一騎打ちとなった。

 そのまま切ってサラダとして食べても別に問題はないのだが、毎日毎日採れ過ぎるため、消費が追いつかない。

 しかも、“おばけきゅうり”は普通のきゅうりより味がぼやけており、あまり箸が進まないのがホンネ。

 漬物にしても、家族はそれほど食べるわけではないし、炒め物にしても好みの味になりにくい。

 う〜ん、どうしたものか。

 そんな頭を悩ませていると、連れ合いが様々あるネットレシピの中から、ある一品を試してみた。

 

 それは、ナムル。

 特大おばけきゅうり三本をダダダっと細切りにし、同じく細く切った赤パプリカ一個と茹でもやし、裂いた蒸し鶏むね肉を混ぜ合わせる。そこにゴマ油と塩、醤油といりごまを入れて完成だ。

 おばけきゅうりを細切りにすることがかなり面倒なのだが、それ以外の工程はいたってシンプル。

 そして、味もバッチリ。夏の暑い日にはピッタリのレシピのため、さっぱりと、そして大量に食べることが可能に。

 このレシピを使ってからは、我が家ではほぼ毎日のように朝食プレートの一品として並んだり、一日部活の我が家の寝ぼすけ坊主用のお弁当に活用したり。大変重宝される一品に生まれ変わった。


 というわけで、今年の夏野菜との闘いも、無事に勝利。

 来年の挑戦者は、これ以上のツワモノでないことを願いたい。



「――、おはよう。ご飯ですよ」



 まだまだ暑い日が続く中。

 今日も元気に、いってらっしゃい。


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