十五膳目:五月某日(日)約五年ぶりの県外出張

 ピピッ、ピピピッ、ピピピピピッ――


 耳元で鳴り響く、スマートフォンのアラーム音。

 いつもの時間に、いつもと同じ音が、いつも通りに奏でられているが、視界に入ってくる天井や室内の様子は、いつもとは違うものになっている。

 ……あれ? あっ、そうだった。ここは、自室じゃない。

 久しぶりに、本当に久しぶりに、自室以外のベッドで眠りについていたんだ――――


 今回、自分は某県外のホテルに一泊二日滞在中。

 とは言っても観光ではなく、丸二日間に渡る講習会参加のためにこの場所に訪れている。

 朝の九時から夕方五時半まで、講習会が開かれる会場に缶詰め状態。

 仕事上、どうしても必要なこの講習会のため、貴重な休日を割いてまで、遠路はるばる各種公共交通機関を利用してやってきた。

 本来であれば家族旅行も兼ねて計画を立てていたのだけれど、我が家の寝ぼすけ坊主の部活と重なってしまったので断念。

 まあ、家族旅行とは言っても、日中こちらは缶詰め状態のため、連れ合いと寝ぼすけ坊主だけの観光になってしまうのだが。

 それでも、夜はフリーになるわけだから、多少なりとも遊びたい誘惑には駆られる……のだが、甘かった。

 丸一日かけての講習会により、自分の気力体力精神力はガリガリと削られていき、頭はすでに飽和状態。

 これ以上、何かをするという活力は微塵も残されていなかった。

 昨日の講習会後、僅かな時間で出来たことと言えば、宿泊先のホテルに移動するまでの散策と、地元にはないスーパーを物色することぐらいだった。サビシイ。

 講習会二日目もまた同じルーティンになることは確定なのだが、一つだけ一日目と違うことがある。

 それは、『宿泊先のホテルでの朝食バイキング』だ。


 あの、世界的な感染が流行してからの数年間、まったくと言っていいほど地元から移動することはなく、県内旅行ですらも我が家の寝ぼすけ坊主の受験があったため我慢していた。

 そのため、ホテルでの朝食バイキングも、かなり久しぶりの体験となっていた。

 今回の県外出張が決まってからというもの、講習会でまる二日ほぼ缶詰め状態になることはわかっていたため、せめて宿泊するホテルだけでも楽しみを味わえる場所にしたいという強い気持ちで選んだこの場所。

 滞在希望のホテルの条件としては、『研修会場に近いこと』+『アメニティ用品がそれなりに揃っていること』+『朝食バイキング付き』を設定。

 その中でも、特に重要視したのは、『朝食バイキング』。限られた中での、唯一と言ってもいいかもしれないお楽しみなのだ。

 HPに掲載されている写真付きの説明文を読み、『豊富な朝食メニュー』や、『焼き立てのオムレツやフレンチトーストの提供』という文言を決定打にした。

 カリカリベーコンやスクランブルエッグ、サラダの盛り合わせやきんぴらなどの和食の小鉢もあれば、朝カレーも常備されているとのこと。

 さらには、飲み物にもこだわりを持っているようで、コーヒーやフレッシュジュースだけではなく、様々な緑茶も楽しめるようになっているのだとか。

 嗚呼、朝ご飯が待ち遠しい。


 とりあえず、いつもの時間に起きてしまったので、少しでもお腹を空かせるために、朝の散歩と行きますか。


『たっぷり。どっさり。いただきます』




 *今回の話は五月にUPするはずでしたが、久しぶりのガチ講習会であまりにも疲れてしまい、書きためていることすら忘れていました……。ご容赦を。

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