【全55話完結済】
綺麗で優しく、読み易い文章によって綴られる、人と鬼の和風恋愛ファンタジーです。
人が鬼を恐れるというのは良くありますが、このお話の鬼はお伽噺のような悪者ではなく、人より大きな体で力が強くて角があるだけ。
それでも人と鬼は互いに恐れ忌み嫌い、交わる事無く暮らしている。そんな世界のお話です。
本来は禁じられた山へ入り、薬草を取っていた薬師の「かすみ」は鬼の若者「烈火」と出逢い、ちょっと天然のかすみがグイと行けば、ツンとしていた烈火が徐々にデレていく。
本文は至ってシリアスですが、つまりこういう事です。
とはいえ単なる恋愛だけのお話ではありません。
女が仕事を持つなどおかしいという価値観の中で、村で唯一の薬師という職を持つかすみの立場や、人と鬼の根深い確執など、現代とは切り離せないテーマも含む深い作品。
ネタバレは避けますが、タグにもある通りラストはハッピーエンドですので安心してご一読下さい。
「人間は臆病な動物なのだよ」
臆病だからこそ残酷になり、鬼を迫害する
鬼の恨みを買い、人間に害をなす
どうすれば分かり合えるのだろう?
現代社会に生活している私たちも日々、人と関係に悩んでいます。
好き、嫌い、惚れた、腫れた。
でも、生き死にまではいかないもの。
それが人と鬼との関係になると、すぐ殺し合いへと発展してしまいます。
そんな憎悪入り混じる関係でも、間に立とうとする者はいます。
その葛藤たるや、どれほどのものか。
直接の迫害を、親子供を殺された者と、聞いただけの者との温度差はいかほどか。
作者である「らん」さんが、優しい文体で語りかけるお話に耳を傾けてみてください