episode.18 エゴが魅せる魔法石
「バトンタッチだな。」
「はい!」
さっきまでとは違い、ルイスは何処となく固かった。
唐突に訪れた自分の番に緊張するのは分からなくもないが、このままでは結果が出るまで身が持たないだろう。
「肩の力を抜け。大丈夫だ。昨日お前が製錬したあのルーン、あれは良いルーンだ。」
ルイスの方に手を置いて安心させてやる。
すると、少しずつ力が抜けていくのが分かる。
これならもう大丈夫か。
「ありがとう御座います、先生。行ってきます!」
そう言ってステージ中央に向かうルイスを見送り、俺は爺さんと一緒に脇に下がった。
「さあて、気を取り直して次の勝負だ!今度は互いの弟子同士の戦いだ!これはこれで熱い戦いだあ!」
オーツの掛け声で何度目かの歓声が沸く。
それは俺らにとっては何を思うでもないことだが、あの二人にとってはどうやら違うみたいだ。
「まずはエレキスターの"自称"一番弟子にしてこの国の宰相の娘。そして王都一の製錬技師専門学校で昨年度学年次席で卒業した新進気鋭のニューフェイス――エリン・フォーリンドレイクだ!」
オーツの紹介に合わせてその長髪を靡かせてステージの前方に出るエリン――。
その姿は流石ルイス以上のプライドの塊と言うべきか、それはもう堂々たるものだった。
「ちょっと、"自称"はいらないわよ。私は正真正銘エレキスター様の一番弟子なんですから。」
「お、おう……悪りぃ。」
あまりの図太さにオーツもたじたじな様子だ。
第三者で脇から見ている俺には面白いの一言だが、爺さんも溜息を溢しているところを見ると普段からああなのだろう。
「さ、さて!対するは、エリン嬢と同期であり更には首席で卒業した、こちらも期待大の大型新人――ルイス・エンバーデンだあ!」
オーツの紹介に合わせてルイスも同じようにステージ前方にゆっくりと歩みを進める。
しかし、緊張の所為かエリンとは対照的に弱弱しく肩を縮込ませていた。
普段はエリンと同じプライドの塊のくせして人前には慣れていないのか。
思わず溜め息を漏らしたくなったが、俺はその考えを直ぐに思い直す。
「ええっと……。」
オーツは額に汗を滲ませて何やら口籠っていた。
不思議に思うも、広場を見ればその理由は一目瞭然だった。
「ねえ、あの子って……。」
「そうそう。例の子よ。」
ふと近くにいたステージ下の見物人の声が耳を擽る。
聞こえたのはたった二言だったが、それだけで誰のことを話しているのかは明白だった。
見物人達はエリンの時の熱量を冷まし、ヤジを飛ばさないまでも腫れ物を見る目でルイスを見ていた。
「み、皆さま!今回の勝負では素性や人柄は評価対象外です!ですので、世間に流れている噂や与太話は一旦置いておいて、純粋に彼女達の腕前を楽しんで下さい!」
オーツは慌ててフォローするも効果はなく、ルイスは見物人達の方を見れないのか俯いていた。
そんな苦しむルイスを必死に庇うようにオーツは声を上げ続けるも、見物人達の様子が変わることはなかった。
「まったくあやつは……。」
そんな中、横でエレキスターがぼやきながらエリンを見つめていた。
視線の先の女の横顔は満足そうな悪役と言うに相応しい笑みを浮かべていた。
「そういえば、ルイスがどんな悪評を流されたのか聞いたことなかったな。」
正直どうでも良かった。
犯罪的な悪でないのであれば、俺にとってルイス自身の評判なぞどうでも良かった。
一緒に働いていれば、そいつの性格や考えは嫌でも共有される。
それが合えば不都合はないし、合わないのであれば辞めてもらうだけだった。
でも、ルイスはそれに値しなかった。
若干の性格のきつさはあるもののそれは目を瞑れる程度のものだし、何よりあいつの術式銘彫の腕は本物だ。
それに製錬技師として仕事したいという情熱はいつも伝わってくる。
「爺さんは知ってるか?ルイスがどんな噂流されたのか。」
「ん?まあ、エリンが流したものじゃからな。じゃが、それを知って何とする?」
別にどうもしない。というより俺にはどうにもできない。
だが、例えどんな悪評だろうと、その真偽にかかわらず、俺だけはあいつの味方でいてやらなければならない。
それが雇用主として――いいや、師匠としての務めだ。
「教えてくれ、エレキスター。」
俺はその目を一心に見つめた。
暫く目を合わせていると、エレキスターはおもむろに二人の方を見遣った。
「ルイスと言ったか。エリンが世間に流したのは、あの子が【人殺しの子】だということじゃ。」
「人殺し?」
その単語に俺の胸はズキンッと痛みを覚えた。
ルイスのことではなく、自分のことを言われた気がした。
「アリス・エンバーデン――その名に聞き覚えは?」
「いや、ないけど……エンバーデンってことは、ルイスの身内か誰かか?」
俺の返しにエレキスターは小さく頷き、その視線をルイスの方へ向けた。
「あの子の母親の名じゃ。数年前まで国認製錬技師じゃった。」
「ルイスの母親が国認っ!?マジか。んなん初めて聞いたぞ。」
「まあお主が知らんのも無理はない。あの子は自分では言わんじゃろうし、アリスが国認になったのはお主が王都を去ってからじゃったからの。」
ルイスの母親が国認というのは驚いたが、もし母親が術式銘彫を得意としていたら、あいつの腕前が母親譲りなのだとしたら――そう考えれば納得がいく。
「あれ?でも、それならどうしてルイスのやつ俺の所に来たんだ?噂がどうだろうが、母親の工房に入れば良かっただろうに。」
「…………。」
俺の疑問にエレキスターは顔を沈めた。
その様子に俺は不安に駆られた。
〝ルイスは【人殺しの子】〟――それがエリンの流した悪評だ。
さっきエレキスターはそう言った。
仮にそれが本当だとしたら、ルイスの母親が殺人を犯したということになる。
「アリスはもうこの世にはおらん。3年前に病に倒れてしもうた。」
エレキスターは力なくそう呟いた。
3年前ってことは、俺が王都に戻って来たおよそ2年前か。
俺が王都を去ったのが約13年前だから、ルイスの母親が国認でいたのは長くて10年前後か――。
いや、病と闘っていたのなら実際に国認として仕事していたのはもっと短かっただろう。
国認ともなれば出来る仕事の幅はぐんと広がる。
思うように腕を振るえなかったとなると、さぞ無念だったことだろう。
「でも、それなら【人殺しの子】ってのは、エリンがついた真っ赤な嘘ってことか?」
俺の問いに、エレキスターは歯切れ悪く首を横に振った。
「嘘かといえば、そうとは言い切れん。が、捉え方の問題じゃな。」
「どういうことだ?」
「エリンが流した噂の由来は、あの子の父親にある。」
そう言ったエレキスターの目は珍しく若干の潤いを帯びていた。
「父親が人殺しってことか?」
「そうじゃな。あれを人殺しと呼んで良いものか……儂には分からん。」
爺さん婆さんの話はどうしてこう要領を得ないものなのか――。
エレキスターのはっきりしない物言いに胸がむず痒くなってくる。
「ルイスの父親は何をしたんだ?」
俺は急かすようにエレキスターに詰め寄った。
その様子に、エレキスターは一呼吸間を置いてからおもむろに答えた。
「あの子の父親はアリスを永遠の眠りにつかせたのじゃ。」
「永遠って……はあっ!?」
ルイスの父親が母親を殺した――。
どうしてそんなことを、と思うも、直ぐに思い直した。
同時に、病院に連れて行った時のルイスの顔が脳裏を過る。
「なあ爺さん。もしかして――」
「察しがいいな。そうじゃ。あの子の父ロイドは、アリスの意志を尊重し、医師に無許可でアリスを〝安楽死〟させたのじゃ。」
やはりそうか。
だとしたら確かに言い方次第、捉え方次第で【人殺し】と悪評になるのも頷けるか。
いや、たとえ正しく伝わったとしても安楽死の考え方は賛否が分かれる難しい問題だ。
本人が望んでいたとしても非難する者はどちらにせよ一定数は現れただろう。
でも、だとしても――。
「人殺しが背負う宿命も知らねえ奴等が好き勝手言いやがって……。」
俺は心の底から腹が立った。
悪評を流したエリンはもちろん許せないが、何より百聞は一見に如かずと言うのにそれを無視して真偽も確かめず、言いたいことだけ言って非難する見物人達に虫唾が走って仕方がなかった。
「お主が言うと重みが違うな……。」
エレキスターは静かにそう呟くと、もうこちらには目を合わせてはこなかった。
「勝負方法は互いが製錬してきたルーンを5人の審査員が評価し、評価点の高い方が勝ちというシンプルなルールだ!」
ようやく広場が許容できるくらいには鎮まったところで、オーツはここぞとばかりに話を進めた。
「それではまず今回協力してもらう審査員を紹介しよう。」
オーツの手振りに合わせて俺らとは反対側の脇から4人の男女がぞろぞろとステージに上がって来た。
始めこそ俺とオーツ、エレキスターの3人であの2人のルーンを評価するつもりだったが、ここまで事が大きくなったが故に、相応な審査員を用意することになってしまった。
「結構豪華だな、メンツ。」
先頭にいるのは確かエミリア商会の幹部で宝石商をやっている男だ。
何度か顔を合わせた事がある。
その後ろにいるのもおそらく商会の人間だ。
見たことない男だが、身なりがオーツや先頭の男と似ている。
更に後ろにいる女は、あれは評議会の副議長ミシェル・ストリーバーか。
評議会の人間――それもよりによってミシェ
まあその気遣いは素直に嬉しいが、評議会のそれも副議長が審査するとなると誤魔化しの類は一切聞かない。
ルイスにとってもシビアな戦いになるのは間違いないだろう。
そして一番後ろにいる男――直接の面識はないが、雑誌とかで見たことある顔だ。フレイやエレキスターと同じ国認製錬技師だったはず……が、名前は忘れた。
「4人目の審査員は皆様ご存知の国認製錬技師ミリオスタ・レーゼンツヴァイツだ!」
オーツの紹介でそんな名前だったなと思い出す。
雑誌の特集とかよく受けているだけに歓声の上がり方が他とは違う。
何と言うか、歓声がアイドルみたいに黄色い。
「腕は良いのに相変わらずの派手さが傷じゃな。」
「同感。目立つのに優越感覚えるタイプ、俺苦手なんだよな。」
投げキッスまでしている姿を見て、俺もエレキスターも若干引いていた。が、それでも見物人たちは喜んでいるのだから正義はあちらにあるのだろう。
余の中ってのは相変わらず理不尽だ。
「そしてそして最後の審査員は、エミリア商会魔石管理部の部長代理で今回の司会進行を務めるこの俺オーツェンが担当するぜ!」
ミリオスタに負けじと自身を誇示しようと一段と声を張るオーツだが、会場の視線はミリオスタのまま動かず、俺は横で見ていて同情を覚えた。
ルイスに慰められながらもオーツは肩をがっくり落としては、他と同様に後方の審査員席へと着いた。
「ええー、それじゃあ評価方法について説明するぜ。」
明らかにテンションが下がった声で適当感満載な感じで口を開くオーツ。
いちいち拗ねるなと傍から見ていて思うも、女っ気一つなくここまできてしまった不憫さを考えれば仕方がないのかもしれない。
「評価方法は、審査員それぞれで4つの項目を1項目につき最大10点の計40点満点で評価する。ルーンの評価項目は、【純度】、【魔力充填率】、【術式銘彫】の基本項目3つと、そのルーンに施された創意工夫や製錬技師の個性等――まあ要は【独創性】だな。その4項目で評価する。勝敗は5人の評価点の合計が高い方が勝者とするぜ。」
なるほど。独創性を評価項目に入れる当たりいかにも商人らしい。
ただ単に製錬技師の腕を評価するだけなら基本項目の3つだけ見ればいい。が、ルーンの実用性を考えればそれだけで一概には評価できない。
というのも、ルーンは主に私生活と外での戦闘に使われる訳だが、例えば前者ならルーン式家電を使う場合、機能が多く使い勝手がいいのは基本項目がしっかりしている物になるが、消費者が家電を選ぶ際の基準は機能だけではなく、時にはそのデザイン性も考慮される。
ルーンとしての出来がいかに良くても、サイズや見た目が気に入らなければ売れ残ることになる。
更には、ルーンは実用性こそなくとも趣向品――具体的には宝石と同じ扱いだったり、インテリアとして飾る為に使われることもしばしばある。
そう言った場合は魔法の効果力が左右される純度や術式銘彫は二の次で、輝き方や結晶の透明度といった見た目の方が重視される。
そしてそれは、後者にしても同じことが言える。
戦闘用のルーンにしても一番重視されるのはもちろん魔法の効果ではあるが、ルーンをそのまま使う魔法は別として、【《斬》強化】のような武器や防具等に直接組み込んで追加効果を付与するタイプの人工系ルーンの場合は、効果の次に見た目も重視する冒険者もいる。
特に女性冒険者はこの傾向が強い。
もちろん最終的には個々に合った強い武器の方が売れるが、より多く手に取られるのは見た目が恰好良かったり、可愛かったりする物だ。
如何に強くとも手に取ってもらえなければ買ってもらえない――。
商人達にとっては必ずしもルーンの質だけが重要ではない。
今回の審査が如何にも商人らしいと言うのは、そう言うことだ。
「さあまずどっちから行く?」
オーツが2人に聞くと、真っ先に手を上げたのはエリンだった。
「当然私からよ。いきなり高得点をとって貴女の自信を喪失させてあげるわ。」
この審査員達を前にしてその自信を保てるのは素直に感心する。
まあただ馬鹿なだけかもしれないが――。
「そういやあいつのこと何も知らねえんだけど、実際腕の方はどうなんだ?」
「ん?ああ……。」
エレキスターの反応はエリンとは真逆で呆れているように見えた。
「爺さん?」
想像していなかった反応に若干疑念が湧く。
まさかとは思うが、まあその答えは見ていれば分かるか――。
俺は敢えてそれ以上エレキスターには追求しなかった。
「私の作ったルーンはこれよ!」
そう言ってエリンは懐から取り出したルーンを高く掲げた。
見た目は赤い綺麗な正八面体のルーンだ。
下手に装飾していないところを見るに戦闘用の魔法――それも装備に組み込むタイプではなく、純粋な攻撃魔法系のルーンだろう。
色からして恐らくは炎熱系の魔法。
となれば、さっきオーツの挙げた基本項目がより重視される。
評価項目に関しては2人には事前に伝えられていたはず。
それでも独創性を無視したということは、それだけ自分の持つ技術に自信があるってことか。
「魔法名称は《
エリンはルーンを用意された台の上に置き、その詳細を説明する。
審査員達は台の周りに円になってそれを囲み、各々それを眺め、手に取って観察し、測定機なども使って評価していく。
「純度は258か。かなり高いな。」
「地の色も綺麗ですし、何より発光の色合いが良いです。透明度もあることから魔法鎚の打ち方に無駄が少ないのがよく分かります。精錬と結晶化の技術は二級の製錬技師にしては突出していますね。」
商会2人の高評価に満足そうな顔を浮かべるエリン――。
その顔だけで声は聞こえずともどんな評価なのか目に見える。
「こりゃあ結構やばいか?」
エリンがルイスのように何か一つの技術に突出していたり、全体的に中程度の腕なら勝てる見込みは十分あった。
しかし、全てにおいて高評価となるとルイスに勝ち目はなくなる。
昨日見せてもらったルイスのルーンは間違いなく最高のルーンだ。
だが、精錬や結晶化は正直ぎりぎりの及第点と言わざるを得ない。
こういうことは本来願ってはいけないのだが、エリンのルーンに何か欠陥でもあってくれれば活路を見出せるんだが――。
「確かに精錬と結晶化に関しては頭一つ抜けているわね。けど――」
口を開いたのは副議長のミシェルだった。
相変わらず表情を変えず冷淡とも取れる声色で話し出す。
「術式がかなり荒いわ。《災炎を統べる者》のルーン術式は基本『二重螺旋鎖状式』のはずだけど、このルーンに刻まれた術式は『二鎖多点交差式』で彫られてる。意図して術式構造を変えているならそれも勿論ありだけど、このルーンにはその意図が見受けられない。術式銘彫が苦手だから難易度の低い銘彫方法で誤魔化そうとしているのが見え見えね。」
そこまで言うとミシェルはエリンを見た。
当の本人は図星を突かれたと言わんばかりに先程とは一変して顔を俯かせては唇を噛んでいた。
「相変わらず辛口だなあ、ミシェルは。この子はまだ1年目なのだろう?もう少し緩く見てあげてもいいんじゃないか?レディなんだし。」
「性別は関係ないでしょ。ミリオスタ、貴方の腕は尊敬してるけど、そういうところは嫌いだわ。」
「わお、手厳しい!」
ミリオスタの茶化しにミシェルは呆れた様子で溜息をついた。
「まあでも、ミシェ姉の言う通り商品として並ぶ分には製錬技師として何年目だろうが関係ないのは確かだな。」
「オーツェン、その呼び方仕事中は止めてっていつも言ってるでしょ。」
「あ、悪りぃ。つい……。」
オーツは頭を掻きながら反省するように何度も頭をペコペコさせた。
「そうだぞ、馴れ馴れしい!だいたい君は彼女の何なんだ!?やけに仲良さそうにしよって!羨まけしからん!」
「いや、学生時代の先輩ってだけだよ……ったく面倒くせえな。」
相変わらず俺の耳には声は届かないが、審査員達の空気が柔らかくなったような気がする。
とはいっても審査は真面目にやって欲しいところだが……。
「まあとはいえ、術式自体は荒いもののちゃんと成り立っている。発動はするし、純度が高い分、術式構造で効果が弱体したところは補填できている。実用性の面では並以上を付けてもいいだろう。」
「ですね。結晶化の手順も一般的なフリードマン法が使われているので量産も難しくありません。流石はエレキスター様のお弟子さんです。」
商会の2人の意見に緩んだ空気が一新すると、皆同意見だと頷いた。
「んじゃ、そろそろ点数を決めて発表と行きましょうか。」
オーツの一声で審査員がそれぞれタブレットに点数を打ち込んでいく。
「爺さんは何点だと思う?」
脇から見ていた俺達には審査員達が何と言っていたかは聞き取れない。
だから正確なことは何一つ分からない。が、様子から読み取るにそう低くはないだろう。
「そうじゃな……まあ精々110点前後じゃろ。」
エレキスターがそう答えた直後、電光掲示板に点数が表示された。
商会A 純度10点 魔力充填率8点 術式銘彫5点 独創性1点
商会B 純度10点 魔力充填率9点 術式銘彫6点 独創性2点
副議長 純度 9点 魔力充填率6点 術式銘彫1点 独創性0点
ミリオ 純度 9点 魔力充填率7点 術式銘彫3点 独創性0点
オーツ 純度10点 魔力充填率8点 術式銘彫5点 独創性1点
合計 純度48点 魔力充填率38点 術式銘彫20点 独創性4点
総合点 110点
エレキスターの予想は見事に的中した。
これまでの言動からエリンに対して結構当たりが強いイメージを持っていたが、なんだかんだでちゃんと弟子のことを見ているんだな――。
それが点数が出た直後の俺の素直な感想だった。
「110点が出ました!独創性が殆んどない中でこの点数はなかなかの高得点だ!」
オーツは各審査員に点数の基準を聞いて回り、見物人達に説明していった。
この中では術式銘彫の点数が比較的割れているが、その理由はミシェルの指摘した点が大きく響いている印象で、商人の視点で実用性を鑑みたオーツ達と、あくまで製錬技師としての技術面を重視したミシェルとミリオスタで割れたと言える。
「このメンツに評価されて100点超えたなら十分だな。」
それは決して過小も過大もしていない正直な呟きだったが、目線の先のエリンを見るに本人は点数に納得がいっていないようだった。
「もう少し素直に結果を受け入れれば良いものを……あやつの成長しない一番の理由じゃな。」
「まあそれが良い所でもあると思うけどな。あそこまでプライドが高いなら、諦めも相当悪いだろうし、俺ら職人にとってそういうのは大事だ。」
「ほう。そうかそうか。それは良かった。」
俺の言葉にエレキスターは急に機嫌よくしたように笑みを溢した。
不思議に思うも、気にする間もなくルイスの審査が始まろうとしていた。
「そんじゃお次はルイスちゃんのルーンの審査だ!」
オーツはそう叫ぶとルイスに近づいては耳元で顔を近づけた。
「立場上贔屓は出来ねえけど応援はしてるから頑張れ。」
ガチガチに固まっていたルイスにニコッと笑顔を向けては、オーツは元の位置に戻っていった。
「ありがとう、オーツさん。」
ルイスは一度深呼吸をして気持ちを落ち着かせ、そしてゆっくりとポケットからルーンを取り出した。
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