第36話

「わからない」


わ、抱きしめられた。


「カエさん、傷ついた?」


「ううん、平気。冷静になれた」


「カエさんは、ひとりぼっちじゃないから。俺がいる」


「もちろん。わかってる」


「対策考えよ」


「うん」


紙とペンを用意して、とりあえず思いついたことを書く。伊織くんはそれを見ている。


「つまり、私とりこ、逢坂さんが一緒だとだめなんだよね?」


「そう、みたい」


「逢坂さんと、りこだけのときは?」


「一切話さない。関わらないし」


「じゃあ、私が学校辞めたらいい?」


「え…」


伊織くんは見つめてくる。これは癖なのか?


「カエさんが辞める必要ない」


「なら、どうやったら…普通にできる?」


「…1年は、いて。俺が、前と同じく、逢坂さんと話してたらいいんでしょ?」


「…でも、伊織くん」


「家で会えるから。カエさんのこと、こうしていつでも見れるから」


「うーん、伊織くんが疲れない?」


「平気」


でも、抱きつく率がだんだん上がってません?


「カエさん…そういえば、首回されたけど、あれってどうやってる?手を使う?」


「ううん?なにも。無意識に」


「へぇ…すごい。疲れてはない?」


「うん。ありがとう」

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