第35話

「カエ〜逢坂さんに弱みでも握られちゃってるの?かわいそう」


休み時間に、りこが私のところにやってきた。


「それはないけど、頼まれたし」


「もーそんなの無視したらいいのに。鈴野くん、知ってる?カエってお人好しなんだよね。私が守ってあげないと、本当騙されやすくて。お母さんいないし、お父さんは仕事しかしてないし、カエってひとりぼっちで可哀想な子なの」


「…そう」


伊織くんはこちらを向かない。


「カエ。逢坂さんにガツンと私が言ってあげようか?」


「喧嘩しないでほしいから…」


「カエは本当優しいね〜」


りこはにこにこして席に戻った。

そのまま授業は終わり、りこと帰る。


「カエ、本当に入院してたの?」


「うん。隣町なんだけど…」


「そうだったんだ。心配してたんだよ?」


りこは…元気だ。

分かれ道で別れて、家に着いた。

伊織くんは遅れて帰ってきた。


「カエさん。もやがかなり薄くなってるよ」


「え!うそ」


なにもしてないけど。


「満足したみたいだ。…やっぱりあの人がつけてたんだ」


「…なにに、満足?」


「とりあえず座ろう」


ソファーに腰掛ける。伊織くんに見つめられた。


「カエさんを自分より下にする。そして、自分が注目を浴びる」


「…えーと、それを、続けないと、また…?」

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