第31話

「騒いだのは…ただ、私、カエさんと話すきっかけが欲しかったの。だって、いつも同じ人といるから」


「りこのこと?」


「そう。みんなカエさんと話したいのにさ、私は特別みたいにして。カエさんと話したいのみんなだよ」


「そうかな?」


「別に席替えはしなくてもいいけど。今日結構カエさんと話せたし」


「…でも、席替えしよう?その方が、みんなと話せるきっかけにもなるかもしれないし。伊織くんだって、友達いないって言ってたから」


「えー、カエさん名前呼び?」


「あ…、そうだね…」


うっかりしてた。まだ寝ぼけてる。


「いいなぁ〜カエさんにオッケーもらえるなんて。私の方が友達になりたいのに」


「…友達に…?」


あれ…な、泣いてる!?


「私…性格悪いでしょ?なめられるの嫌だから、頑張ってるんだよ?だけど、みんな私のことアイドルとしか見てないし、誰も…友達になろうって思ってない」


「友達なろうよ」


「え!?」


逢坂さんの手に、私の手を重ねた。


「まわりくどくしないでいいのに。そのまま言ってくれなきゃわかんないよ。なるべく問題に巻き込まれないようにって思ってた。わざとだったなんて知らなかったな」


「カエさんごめんね〜」


わ、女の子に抱きつかれちゃった。しかも、すごく逢坂さんいい香り。


「カエさん!」


伊織くんが勝手に家庭科室の中に入ってきた。そんなにドタバタしてないつもりだけど。


「大丈夫。逢坂さん慰めてた」


「なんで泣いてる?」


「ちょっとお!鈴野くん!カエさんに無理矢理近づくなんて最低。ぬけがけ許さないから!」


「は…?」


「私のカエさんなんだから」


さらにぎゅーっと抱きしめられた。

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