第23話

「カエさん、やっぱりそのもやを早く取ったほうがいい。カエさんは本来そういう性格じゃないはず」


「そうなのかな…」


伊織くんは、今度は私の頭を撫でながらじっと見ている。


「だから、なんとかお祓いできる人を探してみるよ。いろんな寺に行ってみる」


「…実家は?」


伊織くんはタオルを持ってきて、私の涙を拭いてくれている。


「残念ながら形だけ。本物の人は見たことなくて。カエさんは心配しないでゆっくり休んでて」


頭を優しくなでられた。私も伊織くんをなでる。


「ふわふわな髪の毛なんだ」


「カエさんは、結んでないと、大人っぽくていいね」


「え、そうかな?」


いつも2つに結んでるけど、髪型とか見られてたのか…。全然気が付かなかった。


「うん。じゃあそろそろ行く。なにかあったら、このボタン押して。俺はちょっと寺に行くから。夜は帰る」


「ありがとう」


「…ううん」


ナースコールくらい押しますよ。

伊織くんは、そんなに動くような人だと思ってなかった。今まで全然見てなかったなんて失礼だ。だけど、まだ眠たいし任せて寝よう。


それから夏休みになり、毎日伊織くんはやってきた。なんだか変だな。前からずっと知り合いだったかのような気分。


「カエさん、宿題してるんだ…」


「うん。お父さんがお店でりこからもらったって。そういえば、学校ではなんで休んでることになってた?」


「先輩とぶつかってショックで倒れた」


「それ、伊織くんが考えたんだよね」


「そう。だから、宿題しなくてもいいと思うけど」


「暇だし」


「寝てなよ」


「起きてる時にする」


「…カエさん勉強得意なんだ」


「そうでもないけど」


「俺は苦手」


「へー?意外。見せてあげようか?」


「うん」


見るんだ…。

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