お坊さん

第22話

「失礼します。調子はどうですか?」


「あ、大丈夫です…」


これが主治医かな。病室に、おじいさんの先生っぽい人が入ってきた。伊織くんは、私のベットの横の椅子に座っている。


「なにか気になることがありますか?」


「あ、右手は折れてませんか?」


「あぁ、大丈夫だよ。学校の先輩と角でぶつかるなんて、相当急いでたんだね。これからはゆっくり歩かないと」


「はい…」


そういう説明?伊織くんを見たら頷いた。


「どういうわけか、衝撃で低血糖と低酸素状態でね。無理して学校に行ってたんだね」


「…わかりません。それで先輩は」


「あぁ、なにも覚えてないらしい。もう退院したよ」


「そう、ですか」


「じゃあ、ゆっくりしてなさい」


…伊織くんとお父さんが、うまく話してくれたんだ。そっか、そうだよね。先生はそのまま部屋を出て行った。


「カエさん、大丈夫?」


「ごめん…涙が…」


「タオルでいい?」


「うん…伊織くん…」


「うん」


伊織くんにぎゅっと抱きしめられた。私のこの能力を知ってる人は、両親と伊織くんだけ。


「ごめんね、変なことばっかり言って…私、伊織くんのこと全然信じてなかったのに…」


「カエさん、俺になんでも言って」


「私、この力が、怖い…怖いけど、なくなるかと思うと、それも怖い。でも、使わないと力が勝手に出てきたら、どうしよう…怖い」


「カエさんは、いつもどうしてたの?その力を使いどきに使ってた?」


「前は…そうなってほしいと思うとき、勝手に動いてた。でも、今は、こうしたいと思った時だけ動かせる…けど…私がやってる感覚はあんまりない…かもしれない」

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