第19話

「…もしや、名前はいおり?」


「…カエさん、名前で呼んでくれるの?」


「…その、カエさんっていつも呼んでなかったよね?なんで急に?」


「ずっと呼びたかった。でも、照れ臭くて。いつも心の中で呼んでて。それともかえでがいい?」


「いや、カエでいい」


「カエさんの手、すごい細くて柔らかくて優しい手」


鈴野くんはまた手を握ってきた。


「なに?」


「振り払われたときは驚いた。すごい力だった。なにも触れてないのに。あれだけのエネルギーを使ったら身体にガタがきちゃうよね…」


「そうだけど…」


「カエさん、危ない目に遭わないように、これからはできれば一緒にいたい」


「どうやって」


「カエさんのうちに住むとか」


「無理だよ」


「学校では2人でいつも一緒にいるとか」


「いや無理」


「…不安だな」


「そんなこと言われても。あ、そういえば、お父さんと仲良くなってたとか知らなかったんだけど」


「…バイト終わって、カエさんがいないときに話してた」


「お父さん仕事中じゃないの?」


「そうだけど!みんな、協力してくれた。俺が、カエさんが好きなことも話してたし」


「え、待って…えー、なにそれ」

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