第14話

なんの話するつもりかな?バイト辞めるって言いたいのかな?

そう思いつつ、屋上のドアを開けた。


「く、来るな!」


え…先客?


「すみません、お邪魔…」


靴が、揃えられている。

目の前には、制服を着た男の先輩が、フェンスの外側にいた。


「邪魔するな!」


だめ。これは、先輩の意思なんだ。だから、止めてはだめ。目をつぶって、見てないことにしないと…


「う、うわぁ!」


つまづいたんだ…このまま下へ落ちたら…


気がついたら右手を自分の前にやって、思い切り腕を上に振っていた。先輩は空へ上がった。そのまま拳を掴み、自分の方へ引っ張る。


「わ!」


怯えた声を出した先輩は、そのまま引き戻された為、後ろを向いたままやってきた。なんとかキャッチしないと。慌てて走ったけど、そうできなくて私へぶつかる。勢いあまって、転んだ。先輩の顔を見ると、どうやら気絶しているようだった。


あー、やばい。…めまいがする。


「カエさん…」


しまった鈴野くんが来た。ここに来たのは、約束していたから。うっかりしてた。今の見られた?


だとしたら…


そうか、忘れてた。前から、私をマークしてたのは、そういうことだ。


「鈴野くん、この先輩倒れちゃってて。保健室に連れて行って」


「いや、カエさん…」


くらくらするけど、なんとか立てた。


「私のことはもう忘れて」


私は、自由に普通に平凡に生きたいだけなのに。それは許されないの?


歩け、フェンスは、壊せばいい。


「まっ」


手を伸ばそうとした、鈴野くんの手をなぎはらった。

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