第15話 体育祭の打ち上げ
長いようで短かった体育祭が終わった。
俺たちの組は小舞子さんの借り物競争での活躍あってか総合優勝。
小舞子さんを勝利の女神、だなんて呼ぶ声が絶えない。
それに付随して注目されたのが……そう、小舞子さんに駆り出された男子生徒A、つまり俺である。
「アイツなんなんだよ。小舞子さんと仲よさそうだし!」
「もしかして付き合ってんのかな?」
「俺前に二人で歩いてるところ見たぞ? やっぱり付き合ってるんじゃないか?」
噂をされながらも肉を焼く。
目の前に肉がある。なら焼くだけだ。
「で、実際どうなんすかね、和奏くん?」
「その話はしないって約束だろ? ってか焦げるからこれ食え」
「あっ、それ私が育てたお肉ちゃんだよ⁈ でもしょうがない、枚方くんにあげる!」
「感謝感謝♪」
「愉快だね、このテーブル」
「能美さん、食う専すぎません?」
「凜の分まで私が焼くよ」
……状況を整理しよう。
今俺たちはクラスで体育祭の打ち上げに来ていた。
会場は焼き肉屋。
一つのテーブルに座れるのは五人ほど。
流れるように座っていき、俺の隣にレン。正面には春咲さん、能美さん、小舞子さんが座っていた。
おかげさまでさっきから見られてしかいなかった。
……全く、随分と面倒なことになった。
「わぁ美味しそう! いただきます~! ん~!! 美味しいっ」
「……やけにテンションが高いですけど、気にならないんですか、小舞子さん?」
「え、気になるって見られてること? 気にしなくてよくない?」
「まぁそうなんだけどね。別に気にはしてないけど、気にしてなさすぎる小舞子さんが気になるっていうか……」
「何なぞなぞ? 私苦手なんだよね」
う~ん、と小舞子さんが顔をしかめる。
そりゃそうだ。言ってた自分でさえ分からなくなっていたのだから。
「とにかく、目の前に肉があるのだから肉を焼き、そして食うのみだな」
「おっ、わかってるねぇ~」
上機嫌で肉を頬張っていく。
その姿を見ているうちに周りは気にならなくなっていた。
腹ごしらえも済んだところで場所をカラオケに変えることになった。
クラス全員が入れるパーティールームを取ることができたらしく、大盛り上がりである。
「うぇーい!」
「「「「うぇーい!!!」」」」
なんとも頭の悪そうな盛り上がり方だが、なんだかんだでこういうのが楽しかったりする。
俺は歌うのは得意ではないため完全な盛り上げ専門。
申し訳程度にマラカスをシャカシャカ鳴らしておく。
「で、ほんとに付き合ってないの?」
「付き合ってないよ」
「えぇじゃあなんで借り物競争の時に和倉連れてったの?」
「同じクラスの男子ってお題で、たまたま和倉くんと目が合ったからだよ」
「へぇーまぁそうだよね」
女子はカラオケそっちのけで小舞子さんに質問攻めをしていたが話は落ち着いたようだ。
俺に対する鋭い視線はなくなっていて、男子数名は安心したように頬を緩ませていた。
「話変わるけど、好きな人いないの?」
「え、私? いないいない」
小舞子さんの言葉が妙にチクリと刺さる。
別に、なんてことない言葉なのに。
「そっかー。でも、もし小舞子さんに好きになられたら落ちない男なんていないよね」
「うんうん! 絶対そうだよ! 羨ましいなぁ」
「そんなことないよ」
「もぉ~謙遜しちゃって~」
なんともまぁピンク色の話題だ。
これが俗に言う女子トークってやつか。
「盗み聞きとはタチが悪いですなあ和奏くん?」
「他の奴らも聞いてんだからいいだろ? それに聞こえちゃうもんはしょうがない」
「まっ、お前の弁明も分からんでもないけどな」
レンが小舞子さんの方を見る。
「なんてったって学校一の美少女の恋バナだからな」
「小舞子さんが学校一の美少女、ねぇ……。やっぱり、人気すげぇな」
「おっ、遂に高い山に登る気になったか?」
「そういうのじゃねぇって」
と言いながら小舞子さんの方を見ると、今度はクラスの男子数人を交えて話をしていた。
その中心で笑っている小舞子さんを見ているとモヤっとして、コップを持って立ち上がる。
「ドリンクバー行ってくる」
「おう、行ってらー」
そして逃げるように部屋から出た。
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