第2話
『ピンポーン』
家のチャイムがなった。
彼はドアを開けるとそこには一人の男がいた。
「勇太、早く行くぞ」
馴れ馴れしく話しかけられたが、もちろん"今の"佐野勇太にはその男との面識はない。
しかしずっと黙り込んでいるわけにもいかない。
「どこに?」
勇太は目の前の男に聞いた。
「どこって、お前が一番楽しみにしてたじゃん。俺らで企画してた旅行。早く行こうぜ」
旅行。以前の彼が友達と一度も言ったことの無かったものだった。
「わ、わかったよ」
興奮を抑えられなかったのか、部屋にあった適当なバックに適当に服を押し込めて急いでを出た。
旅行先で彼らは名所巡りをしたり、食べ歩きをしたりと色々とやったらしく勇太の家に戻った頃には二人ともベットに寝転がっていた。
「弘毅、俺こんなに楽しかったのは初めてだよ」
勇太は満足げに友に語る。
「お前が俺のこと下の名前で呼んだの初めて聞いた」
食事の予約を弘毅の名義で行ったのでついついそう呼んでしまった勇太にとってその言葉に肝が冷えた。
「だけどそんなに楽しかったのか。俺だけじゃなくてよかった」
弘毅の言葉に勇太は安堵すると共に喜びを感じていた。友達がいる喜び、それを知った。
弘毅の帰り際、勇太は噛み締めるように言った。
「俺たちはずっと友達だ」
「ああ、もちろんだ」
その言葉とともに自宅のドアが閉まった。
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