第七章―――四神と紅玉の過去―――
かつてこの大陸は4つの国に分かれていた
4つの国各地に聖獣の加護を受けていたとされる
東の蒼龍、西の白虎、南の朱雀、北の玄武、これらの聖獣が国を守り、大地を守っているとされていた
ある時何千年もの間、保たれていた均衡が崩れ、四神たちはこの世から封印されてしまった
四神の力を解放できるのは、花嫁と呼ばれる精霊のみとされている――――
「……で、私は南の朱雀の花嫁……で合ってる?」
パチパチと焚き火が燃える中、明凜が口を開いた
「おおよそ、その通りだ。」
明凜たちは早馬で覇東国へ向かっている途中、暗くなってしまったため林の中で野宿をしていた
まだ暦は春先、夜は冷え込むため焚き火をしている
「それにしても、冷えるわねぇ。紅玉、魔力でなんとかならないの?」
「……俺が力を使うとこの林がみんな燃えるが、いいか?」
ボウッと赤紫の炎を手の平の上に出した
「い、いいわよっ!やらなくて!丸焦げになっちゃうじゃない!冗談がきかないんだからぁ。」
「あいにく、子供の頃のまま魔力はコントロールできなくてな。一度使ったら、焼き付くしてしまいそうだ。」
ため息をつきながら焚き火をいじる
「生まれ持ったものだから仕方ないけど、難儀な能力よねぇ。どうやったらうまく使えるようになるのかしらね?」
「さあな……この紅い瞳で生まれたからには朱雀の力を使えるとは思うんだが……」
「ね、ね。紅玉以外に紅い瞳の人いないの?」
「この辺には俺以外にはいないな。昔はよく
「ええ!ひどい!」
「でも、みんな紅玉が喧嘩してぶつかってたわよねぇ。今は皇帝陛下だから、悪口なんて言ったら打ち首だけどぉ。あははは!」
ケラケラと楽しそうに物騒なことを言う
小さな頃の紅玉もきっと眉間にシワを寄せて喧嘩をしていたのだろう
幼少でありながら、政治に関する知識、人を惹き付ける美貌を持ち合わせていた
幼き紅玉を操り、権力を得たかった周りの大人たちは自分たちとは違う紅玉の瞳をだしに攻撃することしかできなかったであろう
無論、彼には全く通用しない
運命を受け入れているからだ
皇族に生まれ、静かにしていても目立つ
才を隠し、平凡に過ごそうとしたこともあったが自分の性分がそれを許さない
大人達が何人も集まり頭をひねり、考えたものが失策であるとすぐわかってしまう
紅玉は民を思えばこそ、その策は無謀だと口を出す
面白くないはずだ、自分と親子以上に離れた若造から失策を暴かれ、良案を生み出す――
大人達は紅の瞳を魔物の瞳と陰で罵り、ここぞとばかりに力もろくに制御できぬと孤独へ追いやる
その度にこの瞳を、魔力を、おとなしくしていられない自分の性分を恨むのだ
ただ一人、曇嵐だけがそばにいてくれた
「紅玉のやってることは間違いないよ。」
その一言に救われ、自分を受け入れられた
紅玉が十六で先帝が亡くなり、皇帝陛下となった
権力を持ち、自由に発言することが容易になったおかげで次第に紅玉へ味方するものも多く出始めた
今では賢帝と呼ばれ、歯向かってくる者もいない
紅の瞳は、四神の化身として崇められ、あの時孤独へ追いやった老人たちは手の平を返すように自分を朱雀様と呼び敬う
「皮肉なものだな。かつての魔物の瞳から、四神の化身に変わるのだから。」
「……ほんと、やになっちゃうわ。でもあんたは間違ってないからね!」
「ふふ…。そうだな」
いつもの勝ち誇った笑いではなく、友人だけに見せる優しい瞳の表情を浮かべる
パチパチと焚き火が燃える中、紅い瞳がより一層輝きをまして魅せる
明凜は初めて男性を美しいと思った
いつもツンツンしている紅玉は、自分を守るためのバリア
ホントは優しくて友達思いで、自国の民を愛する真っ直ぐな人なんだろうと……
「ん?明凜、どうした。火の粉でも当たったか?」
明凜の視線に気づいた
「な、なんでもない!火の粉きてないよっ。大丈夫!」
パッと後ろに振り向き頬に手を当てる
熱い……火のそばにいたからなのか、それとも――?
静かな林の中、枝が燃え落ちる音だけが響いていく…
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