第六章―――不穏と始まり―――
「ただいま」
天気のいい昼下がり
大きな屋敷に響き渡る
紅玉の低くて心地よい声
「おかえり!」
明凜が紅玉めがけてかけてきた
「お昼ごはん出来てるよ。私も手伝ったんだけど、ここのごはん美味しいね!」
「もう先に食べたのか?」
「つまみ食いよ」
料理を運びながら曇嵐が告げ口した
「あ!曇嵐さん!あれは味見っていうんだよ!」
「そーぉ?あたしには作ってる時間より食べてる時間の方が長く見えたけど」
「ひどー!ここの調味料変わったの多いから味見してたの!」
「はいはい。味見、ね。さ、用意できたわ。」
昼食とは思えない豪華な料理が並んだ
「おいしそー!いただきまーす!」
手をパチンと合わせ、口に料理を運んだ
「……だいぶ馴染んだようだな」
「ええ、とても。この子は物怖じしない、強い子ね」
「それは良かった。これから戦いになる。逃げ腰では勝てるものも勝てないからな」
二人の会話を実は静かに聞いていた
ここにいる限り戦いは免れない
自分を守るためにも、帰るためにも力をつけないといけない
でも、実際力を得るにはなにをしたらいいんだろう?
「ねぇ、この国の国王は戦争しないの?
西黄国はたくさんしてるんでしょ?私が現れたらやっぱり領土を広げるのかな?」
「…………」
紅玉は箸を置いた
「……領土は広げるつもりだ。無駄な殺しはしたくないがな。」
「無血開城なんて、なかなかできないわよねぇ。」
「ただ、俺が太刀打ちできないほどの力を持っているとしたら、話しは変わるかもな。」
腕組みしながら、不適な笑みをを浮かべる
「俺……?紅玉ってこの国の政治に関わってるの?」
「あ、あぁ。明凜にはまだ伝えていなかったな。
一応、この国を取りまとめる仕事をしている。」
「すごいね!だから戦いにも関わるんだね!」
あっけらかんと答える明凜に、やれやれと呆れ顔をする雲嵐
「……明凜、一応こちらにいらっしゃるのは
「一応ってなんだ。」
紅玉は少しふてくされている
「皇帝陛下って……あの、えっと、えーと……
王様ーーー?!!」
思い切り紅玉の顔を指を指してしまった
まさか、意地悪で、変態なことばかりしてくる紅玉がこの国で一番偉い皇帝陛下だなんて
そんなことある?!
そんなすごい人の花嫁って呼ばれるの?
私大丈夫?やっていける?
グルグルと目の前に難題がかけめぐる
そんな矢先――
バタン!!
「おくつろぎのところ大変失礼致します!
皇帝陛下!!北方、
家臣が入ってきた
翡翠色の髪を肩で切り揃え、赤土色の額あてをつけている
息を切らし、跪きながら必死に訴える
「なに?!北周へ攻め入っただと?!」
「はっ!正確には北部最北端、北周統括区域の
「北周は我が国の協定国家だぞ……そこに踏み入れるということは、こちらへの宣戦布告というわけか。」
「紅玉、ついにあれを貰い受けに行くときが来たみたいね。」
真剣な表情を雲嵐は浮かべた
「早馬を用意しろ。それと、今から隠密で動く。その間の指揮は
「は!!」
足早に家臣は去っていく
まだ年は16だが、信頼できる
紅玉が国を離れても十分公務を全うしてくれるだろう
「ねぇ、これからどうするの?」
明凜は不安げな瞳でみつめる
「これから戦いの鍵になるものをいただきに行こうと思う。一筋縄ではいかないだろうが、西黄国と相対するにはこれが得策だと考えている。」
「それは……?」
「今は説明している暇はないな。明凜は、どうする?」
「私は……」
悩む必要はない。
紅玉が私を守ると言ってくれたんだ、その言葉を信じる。花嫁としての役割がこの世界にあるのなら、今はそれを全うしよう――
明凜は紅玉の紅い瞳を真っ直ぐにみつめる
「行くよ。紅玉についていく。」
キラキラと光る明凜の瞳に吸い寄せられるかのように紅玉は席を立ち、そばに寄った
明凜の手を取り、手の甲に口づけをした
「いい返事だ。いいか?俺から絶対に離れるな。」
毎回紅玉のこのような行動にドキドキしてしまうが、必死に隠した
こうして私たちは東の国、
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