第四章ーー持っているものーー

「おい、まだか!?もうだいぶ部屋の前でまたされているんだが」


 イライラした様子の紅玉

部屋の前で腕組みをしながら扉に寄りかかっている


「待ってちょーだい!もうすぐだから!全く気が短いんだからっ」


曇嵐うんらんさん、こ、これは?」


「なーに?だって身の回りの世話を任されたんだから、これくらいはしないと私のプライドが許さないわ」


「う、うん?まあいいんだけどさあ、私にはこれ華やかすぎるって言うか……」


「あんた、自分の魅力もっているものに気づいてないのねぇ」


「え!持ってるもの?もしかしてそれって力のこと?!」


ピョンピョン跳ねながら嬉しそうに曇嵐に問いかける


「はー……こりゃ紅玉も大変だわね。」


 ポリポリと顔を掻いては呆れ顔である


「よし!完成❤️紅玉入っていいわよ~う!」


 キィ……と木の扉の軋む音がして、紅玉が部屋に入ってきた


「じゃーーん❤️どおよ!私の傑作!」


明凜をずい!っと紅玉の前に立たせる


「なーにが傑作だ。どれだけ待たせれば……」


 ふと明凜と目が合い、言葉を詰まらせてしまった


薄手の衣は千草色に染められたもの、胸の部分に蓮の花柄が刺繍されている

 スカートは右足太もも部分からスリットが入っている

歩く度、明凜の白い脚がのぞく


 所々にポイントとして赤い紐やタッセルがつけられており明凜の動きに合わせてゆらゆらと揺れていた


 明凜の大きな瞳はまっすぐと紅玉に向けられている。

 

化粧をしているのだろう。初めて出会った頃より大人っぽくなっている。目尻の赤いアイライン、薄紅の唇が色気を倍増させていた――


 何も言わない紅玉に対して、痺れを切らしたかのように曇嵐が口を開いた

「もぉー、何か言ったらどうなの~?」

 

「……まぁまぁだな」


「それだけ??私結構頑張ったんだけどぉ!」


「曇嵐さんっ、もぉいいですからっ。やっぱり私にはこんな大人っぽい格好似合わないです!ね?違うやつにっ」


 恥ずかしくてその場で服を脱ごうとする

 白い肩が露になる


「ばか!明凜!それ脱いだらっ!」


 バサッ!


 ーー―曇嵐が動くよりも早く、明凜の頭からすっぽりと深紅の金刺繍の施された羽織がかけられた


 ――紅玉の羽織だ


「普段はそれを被ってろ……

 他の連中には勿体ない」


 紅玉は耳まで真っ赤にしながら明凜に背を向けている

羽織を頭から被っている明凜からは見えないが、曇嵐からはバッチリ見えている


「ふふふ……♥️」


 薄気味悪い曇嵐の笑い声のみ部屋に響き渡った

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