第8話

私は解離性同一性障害…。

受け入れ難い現実でした。残酷な現実に私はまず抱いた感情は『恐怖』と『混乱』でした。

「私は今まで殺されると思ってきたけど、多重人格なら人を殺すの⁉︎」

と怖くなりました。「殺人者になるのは嫌だ!」と怖くなりました。

その気持ちを主治医に伝えました。

「私は人を殺すんですか?」と…。

すると主治医は私にこう言ってきました。

「あなたの中に人を殺す事を知っている人格はいますか?」

私は少し考えて答えました。

「私の中にはどうやって人を殺すのか知らない人格しかいません」


そうです。『私達』は殺人を犯す方法を知らないんです。自分を傷付ける方法は知っていますが、殺人を犯す方法など全く知らない。


そもそも今まで誰かを殺そうという発想がありませんでした。今もありません。


じゃあ本や映画などに出てくる多重人格者達は何故殺人を犯すの?

私にはさっぱり分かりませんでした。いくら考えても理解できませんでした。


考えて、考えて、考え過ぎて疲れたので『私達』は

「よし、寝よう!」という結論を出しました。

「一回ゆっくり寝て、頭の中をリセットさせよう」

そう思い『私達』は処方されていた薬を飲んで寝ました。


そう寝たんです。


しかし私が目を覚ました場所は自分の部屋ではなく

大学病院のICUでした。しかも寝てから一週間経っていました。

意味が分かりません。私は寝ただけなのに目を覚ましたら病院のICUで、しかも次の日ではなく一週間も経っている…。


キョトンとしている私の所に泣き腫らした両親が姿を現しました。ますます訳が分かりませんでした。

何故そんなに泣いているのか、憔悴しきっているのか…。


目を覚ました私の第一声が

「ここどこだ⁉︎」でした。

嘘のような本当の話です。私は浦島太郎になった気持ちでした。寝ただけなのに何故こんな所に、こんな大騒ぎになっているのかさっぱり分かりませんでした。


起きた私はまず両親に何があったのか説明を求めましたが両親は泣いて「目を覚まして良かった」と繰り返すばかりで話になりません。


そりゃ寝たなら起きるのが当たり前だと思って不思議がっている私にきちんと説明してくれたのはICUの先生と看護師さん、姉でした。


どうやら私は睡眠薬を過剰摂取し意識不明の重体だったそうです。これ以上目を覚さなければ植物人間になる覚悟をしといて下さいと両親に説明をしたそうです。目を覚ましても脳に後遺症が残る可能性が高いとも…。


姉からの説明ではどうやら私にはそのつもりはなくとも自殺未遂を起こしたと言われました。


私はビックリしましたよ。だって私は寝ただけなんですから。起きたら混乱している頭がスッキリしているだろう、ちょっとは冷静になってるだろうと思って寝たたけなんです。


でも私がした事は『自殺未遂』となりました。

今でも腑に落ちません。だって私は一度だって『死にたい』と思った事がないからです。

現在でも『死にたい』とは思いません。


この時の話は両親の中て余程堪えたのかタブーになっています。


こっそり姉が詳しく話してくれたのですが、なかなかのヘビーな話でした。本当に私は生死の境を彷徨ったらしく危篤状態だったので親族まで呼ばれる程だったそうです。


でも私は本当に死ぬつもりはなく寝ただけなんですよね。今でもそう説明をしても信じてもらえません

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