第5話

『いい子』になった私に両親は安心したようでしたが、姉だけは違いました。

ずっと「この娘は危ない。死んでしまう」と両親に言い続けたそうです。

しかし両親は姉の言葉を信じませんでした。


私は一年の休学後、復学しました。

病院には勤めず一人暮らしをしながら学校だけ通いました。

しかしそれでも学校にいる以外での私の身体の変調は変わりませんでした。

むしろ酷くなるばかり。学校も休みがちになりました。学校の先生達は私を気にかけてくださいましたが、私は学校生活を送る上で怪しまれないように学校内だけの特別な『私』を作り上げていたのです。


そんな中また一人暮らしをやめてまた病院の寮に入り病院に勤める事になりました。


最初は良かったんです。病院の看護師さん達や先輩達とも上手くやっていました。

やっているつもりだったんです。しかし身体的、精神的限界は以前より簡単に超えてしまいました。


また奇行が始まったのです。しかも学校や病院内で

明らかにおかしな行動、言動が突然始まりました。


しかし私には分かりません。私からするといつも通りにしているつもりです。『いい子』のままなのです。だっておかしな行動、言動をしている記憶が無いから。


私は学校の担任、病院の看護師長から呼び出され

「一度心療内科に行きなさい。病院は探しておくから」と言われました。


私は何故そんな事を言われるのか全く意味が分かりませんでした。だっで私は『いい子』なのに。


私が残したノートには、何ページにわたって不満や愚痴、何が悪かったのか、どうしたら『いい子』になれるのかなど書かれています。


私は周りの人達が望んでいるような『いい子』にまたなったじゃないか!

これ以上何を望むんだ⁉︎


私のどこがおかしい?


教えてくれたら直すから、心療内科なんかに行けなど言わないで‼︎


どんなに訴えても私は勤めている病院の先生の紹介状を持って寮から近い心療内科クリニックに連れて行かれました。


そこで心理テストやカウンセリングなど様々な診察をうけましたが、私は反発心から診察中一言も喋りませんでした。ただ黙って言われたテストやカウンセリングを受け、心療内科の先生とは全く口を聞きませんでした。


そこで私は「鬱状態」「PTSD」「心身症」「統合失調症」「パニック障害」と診断され通院する事が決まりました。


と言っても私には記憶が無く、通った三ヶ月間何をしたのか、クリニックの名前や行き方など関係する全てを覚えていません。

ノートにも何にも書かれていないのです。ただ数ページ真っ黒に塗り潰されているだけ。


結局クリニックの先生は「自分には手におえない」

という事で私の通院は打ち切りになりました。


そして私の奇行に勤めている病院も白旗を上げ、学校に「この娘はいずれ死んでしまう」と報告し退職させる旨を伝えました。


慌てたのが学校側です。先生方が会議を開き両親に

私の奇行の事、勤めていた病院で言われた事、クリニックでの事、改めて専門の病院に診てもらうよう

など復学してからの事を全て両親に電話で伝えました。


そして私はまた実家に戻されるべく退学する事になりました。


学校側は休学を進めたらしいのですが、両親は一刻も早く自分達の元に戻したくて私の知らない間に退学届を出し、私を迎えに来ました。


楽しかった学校。勝手に決められた退学。しかし私はあれほど自分の居場所だと思っていた学校に何の感情も持たなくなっていたのです。


そして言われるまま迎えに来た母と実家に帰りました。










































































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