第2話 理解が及ばない事
重たい瞼を開けて目覚めた時、目の前には先生の顔があった。最後に見られなかったから嬉しいなぁ。……え、先生の顔が?待って、私生きてるの!?それとも、先生も一緒にあの世に来たの?
あまりにも驚きすぎて眠っていたベッドから落ちた。ちゃんと痛みを感じる。私は生きている。死んだわけではないことは分かったが、なぜ生きているのか理解が及ばない。先生の手で殺されたはずなのに…
そうして床に座り込んだまま混乱していると、いつもの優しい声が聞こえた。
「おはよう、マイア姫」
先生は笑って私の名前を呼んでくれた。かつてのように。ああ、いつもの先生だ。あの優しい笑顔が大好きだった。最後の怖い顔しか見えなかったから、嬉しくて涙が出た。
「…おはようございます!先生」
先生はすっとベッドから降りて、泣いてる私の頬にそっと手をあてた。温かい。
「マイア様、本当にごめんなさい」
先生はそういうと私をぎゅっと抱きしめて、泣いているようだった。私も涙が溢れて止まらなくなり、抱き合いながら二人してしばらく泣いていた。そうして、落ち着いた頃に先生お手製の朝ご飯を食べ、ゆっくりした後に事の顛末を聞いた。
○
この叛逆が成功したのは私と結婚予定であった隣国の皇子のおかげだったという。惜しみなく支援をしてくれたために、成し遂げられたそうだ。父である王の国政があまりにも酷いという話や、国民たちが苦しんでいることは実際に見て知っていたが、まさか隣国の王子が介入してくるとは思わなかった。
「マイア姫は私に任せてくださいと王子に伝えていたので、無事に貴方を連れてくることができました。ああ、でも、あの国では私と姫は死んだことになっております。そしてここは隣国であり、人里から離れた森の中です」
「ちょ、ちょっと待ってください!なぜ先生は死んだことになっているのですか?あの国で英雄になれたのではないですか?」
「私が求めることは英雄ではなく、平穏な生活だと言ってきたではないですか。死んだことにした方が色々と都合がいいのですよ」
「そう…なんですね」
先生は私を見ながら優しく微笑んだ。ドキッとしてしまうのはもう仕方のないことだと、ぎゅっと拳を握り締めた。
「マイア姫、どこか痛いのですか?…いや、私の不手際で傷を作ってしまいましたよね」
「え?」
そういうと私の髪を触り、反乱軍の一人に捕まれた辺りを触りました。先生がすぐに止めてくれたので、正直そこまで気にならないくらいでしたが、先生は自身が痛いのかなと思うくらいに顔を歪めた。
「先生、私は痛くありませんよ。ね?」
「しかし…それに汚い手が触れているのが気に入りません」
「え?」
どういうことだろうと思っていると、先生は私の髪に浄化魔法と再生魔法をかけた。
「ほら、これで綺麗になりました。もう誰にも触れてほしくないですね」
「先生…?」
「ああ、いえ、気にしないでください」
先生はしばらく私の髪を愛おしそうに撫でていた。
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