第14話 第四日目3・ある意味強い一年達
「俺、親のやらかしがアニメ由来のキラキラネームで良かったよ」
なんとか午前中の補習が終わり、ランチを取っている時に慈恩がぼやいた。食堂を見渡すとあの二人以外にも何人かいないような気がする。単に食欲なくて来てないだけかもしれないが、竹井先生はまあ、奔放さは現役であり、なおかつ近海漁業していたようだ。
「少なくとも親世代でこの名前はほとんどいないはずだし、架空だとわかるし」
「竹井先生の相手って幅広い年代でたくさんいたよね? 細かく見てないけどうちの生徒は……いない、よね?」
春輝が何気なく口にしたが、拓真に止められた。
「よせ、進級して何人か男子がいなかったら洒落にならん。この食堂の人数も確認したくない。BLといい、ここはなんつーものを晒すんだろ」
「成績に問題ないけど、そんな理由で退学って……」
「俺、オカンと同じくらいの
慈恩がまた空気を読まない発言をする。
「しかし、女優さん並の顔と出るとこ出て、引っ込むところ引っ込んでたら?」
何故かいつも拓真は慈恩のこういう話に食いついていく。むっつりスケベというやつか。
「年齢を知らなかったら引っかかるかもなあ。でも、竹井先生は年齢なりのルックスだし、体型は……見かけからして普通だろうし。同年代はともかく他の年代はなんで引っかかるのだろ?」
「なるほど、慈恩が引っかかりやすそうなのはわかった」
「いや、熟女は対象外だって!」
「わからんぞ、今はアンチエイジングが進んでるから。相手にはバカ正直に年齢は言わないし」
「あ、僕聞いたことある。干支を聞けばいいって。サバ読んでたら答えられないから」
「春輝、それだと外国人には使えないぞ。ロシアや中国にも美女多いからな。いや、ロシアに限らず西洋人は年上に見えるから大人と思ったら未成年なんてザラだし、俺たちもあとちょっとで捕まる側になるぞ」
「うーん、難しいね。僕はナンパする気は無いけど止めた方が良さそう」
「春輝は真面目だからナンパやアプリの出会いとか使わないだろ?」
「使わないよ。アプリはなんだか怖いし、声かけする勇気あったら今頃彼女いるって」
「お? 誰か好きな奴いるの?」
「いや、特にいないけど」
勇斗も加勢し、盛り上がっているところに二木がトレーを持って彼らの隣に座った。
「お疲れ様。放送や裏垢見ただけでもげんなりしたのにその場に居合わせたから、かなりのダメージ喰らってると思ったけど、その様子なら大丈夫そうね。
現在進行形もいるようだし、黒歴史だけでは済まない気がするけど、それは彼らの問題だから深く考えないでおきましょ」
「二木先輩は生き残りましたね」
春輝は話題を変えた。
「まあね、私は女性だから対象外だったろうし。スマートウォッチも外れなかったし。まだ油断できないから細かく言えないけど。明日は合同でテストかもね」
「一応、明日のテストは成り立つのでしょうか?」
「デスゲーム方式の時点でまともな補習を期待しちゃだめよ。それでも授業や勉強はしなきゃいけないけど」
春輝が不安を口にしたが、二木にまでたしなめられた。とにかく勉強はしなくてはならない。
「やはり放課後に図書室行こうかな」
「いつでも歓迎よ。あそこはいろんな意味で穴場だから」
二木は意味ありげな笑いを浮かべながら答えた。
現在の(社会的)生存者数 生徒五名、教師三名。
お気づきかもしれないが生徒が一人減っているのは、『何故か』リタイアを申し出たためである。
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