第12話 第四日目・1 ギスギスとして参りました
春輝は何とか起き、食堂へ向かった。ただでさえ寂しい食堂が更に寂しくなっている。三年の二木、二年が一人、一年は四人。教師たちは脱落者数が少なくても、これまでの黒歴史の破壊力で相当メンタルがやられているはずだ。
「朝からお通夜だな」
「二年は一人か」
「Gはなりふり構わず来る、出来れば今夜も勉強会しよう」
「おう」
「私も加わってもいい? ずっと一人だからしんどくて。教えてあげられるし、復習にもなるし」
二木が唐突に申し出てきた。一瞬、四人は顔を見合わせた。
「えっと、俺達は寮の部屋でしているので女子は入れないと思います」
春輝が申し訳無さそうに断る。実際そのとおりだし、秘密会議していることを打ち明けてしまっていいものか、誰をどう信じていいのか判らなくなっているのも事実だ。かと言って、裏切り者が一年の中にいるのかもしれないが。
「お、俺も加わりたいけど」
唯一の二年の生き残り、影山がおずおずと申し出た。
「お前はダメだ。春輝を襲撃した一人だからな、信用ならない」
春輝が答える前に拓真がバサッと斬った。舌打ちをしながら影山が離れた席に着いた態度からして断って正解のようだ。
「って訳で交渉は決裂。二木さんには申し訳ないけど」
「勉強会を図書室に変えることはできないの? あそこなら消灯の三十分前まで使えるし、資料もあるし」
二木が食い下がれる。確かに通常の勉強会なら図書室にしてもいいし、補習組であるが先輩から教わるのもメリットはある。しかし、本当は秘密会議だから、明かせない。
それに図書室は広い分、盗聴器や監視カメラが多いだろう。
「うーん、なんか隠しているわね。ま、誰も信用できないのは生徒も先生も同じ。今まで事故のような失格が多かったけど、後半になったし、時計の奪い合いも始まりそう」
教師たちへ視線を向けると一部が目を逸らした。専守防衛する先生だけではなさそうだ。
「じゃ、こうしよう。今は明かせないけどある仮説を検証する。それの一部が君たちにもわかるようにする。そしたら勉強会を図書室に変更してくれるかな」
「二木さん、何かやるのですか?」
二木の提案に春輝が尋ねる。
「うーん、まだ具体的な方法は詰めてないけど、時計が外れてもすぐにアナウンスが流れない状況にする。問題は犠牲者を自分にすると伝える術がないし、君たちを狙うと仲間にしてもらえないし、誰をどうするかなんだよね」
「危険な橋を渡ると公言して大丈夫なんですか? 僕たちがあなたの時計を外すかもしれませんよ?」
「Gの正体に迫りた……いけない、接触図ろうとしたら失格なのよね。まあ、いろいろと考えてみたいのよ。ま、どっちにしても今日の授業を生き残れたら今夜は図書室で自習するわ。気が向いたら来てね」
そう言い終えると二木はトレイを下げてスマートウォッチを入念にチェックして装着し、部屋に戻っていった。
「春輝、信頼できると思うか?」
拓真が話しかけてきた。いきなりの提案に皆が戸惑っているのはわかる。しかし、推理ばかりして何も進展していないのはもどかしく思ったし、ゲームのせいで肝心の補習にも身が入らない。
「今日の授業次第だね。彼女の言うとおり失格のアナウンスが遅れる状況になるのかどうか」
「方法に悩んでたから成功するのか微妙だけど」
さすがにそれ以上は口に出せずに黙々と朝食を取るしか無かった。
現在の(社会的)生存者数 生徒六名、教師五名。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます