第32話 卒業式準備

 誰が悪かったんだろう? 配達員の振りをして入ってきた男。

 私はお姉ちゃんだから、しっかりしなきゃいけないと思っていた。


「・・・・・・なんや、この記憶。ウチ知らんで、こんな記憶知らん。ウチは、グリフィスパークを管理する・・・・・・なんやねんこれ」


 一番下の妹は、無理矢理男の性器をねじ込まれ失神する。

 早く医者を呼ばなければと思った私に男は自慰を強要した。逆らう事が出来なかった。私は必死で自慰行為を行う。男は私の自慰行為を見る事を飽きたのか、弟に面白い事をしろと強要。

 弟はできる限り面白いと思う事をやろうとした。

 だが、男は何をしても面白くないと言い弟を殴る。蹴る。そんな弟に、失神している妹を犯せと男は言った。


「はは・・・・・・なんやこの胸クソ悪い記憶は・・・・・・これ、ウチの記憶とちゃうけど・・・・・・ウチはこの事を何でか知ってる・・・・・・」


 妹を犯す事を強要した弟を、私に殺せという男。悪魔めと私は男に逆らった。その瞬間、男は私の左目の光りを奪った。

 そして、男は持っていた鉈のようなもので弟を殺害。左目を潰された事で痛み苦しんでいる私を飽きるまで犯し尽くした。せめて、妹だけは・・・・・・そんな風に考えていた私の前で男は妹をさらに犯し、壊した。


「殺したる・・・・・・なんや、ウチが怒っとるんか? この異常者相手に・・・・・・アホか、ウチも同じような事してきたやんか、人を呪わば穴二つなんて言うけど、殺し犯すっちゅーことは、殺し犯される事を覚悟しとるっちゅーことや。なんやねんこの記憶」


 私が目覚めた時、酷く焦燥した母と父の姿だった。弟と妹の死を伝えられ、そして私は女性としての機能を完全に失っている事を教えられた。

 あのあと、数日にわたり男は私を犯し続け、飽きたらず、異常な程の性欲と支配欲を私にぶつけたのだろう。

 私はあの男に仕返しをしたい。

 出来る事なら私の手で・・・・・・殺して殺して、殺し続けて、死にかけたら一生懸命看病し治療し、何度でも殺してやりたい。

 だから私は・・・・・・


「ちょ! 待ちぃ!」


 私は高いビルの屋上から飛び降りた。

 奴を地獄にたたき落とせるなら、神じゃなくてもいい悪魔でも構わない。奴に復讐を! 全ての弱き者から尊厳を奪い、希望を摘み取る愚者共に死の鉄槌を・・・・・・


「・・・・・・夢か、なんやえらいリアリティのある夢やな」


 その日は何故か寝付きが悪かった。ウチの性奴隷呼んでレイプしても楽しくないやろうし、ただ食堂で何も考えずに定食を胃に収める。


(ウチの元々のこの身体の持ち主は兄弟姉妹はおらへん・・・・・・せやったらあれはホンマに夢なんか? 胸クソ悪い夢やな)


 最近桜の姿をみぃーへん、雨亞もや、小鳥ちゃんとはたまに顔あわす程度やけど存在は確認しとる。

 次の”お泊まり会”で小鳥ちゃんと・・・・・・なんて考えてたウチがアホやった。卒業式という名の中等部に上がる為の集会が体育館で行われたんや・・・・・・このタイミングで、ウチ等は聞きたくもない放送を聞いた。


”ぴーんぽーんぱーんぽーん!”


 まさか、朝の十一時やで? この時間で来るんかい・・・・・・シューっとガスが体育館を包む。逃げ出す時間もなく、集会に参加していた教師は皆ガスマスクをつけて・・・・・・

 ウチは薄れゆく意識の中でまた別の意識を垣間見てた。


 ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。

 許してください。許してください。


「同じように助けを媚びたメスガキとオスガキをお前は犯ってから殺ったんだろ? じゃあもういいじゃないか、次はお前が・・・・・・殺られる番でさ。違うか?」


 怖い。怖い。怖い。怖い。この女は怖い。たかがガキを犯して潰しただけなのに・・・・・・なんでなんでこんな目に遭わなきゃいけないの?


「じゃあさ、話変えようか? はい、前の画面をみてくださぁい。この子は、一人でお留守番中に何者かが家に侵入して、大変な目にあったヒトミちゃん仮名。9才です。見覚えは?」


 ・・・・・・・・・・・・ある。


「この子はママが帰ってくる1時間20分の間に両目を潰され、子宮と黄門に無理矢理異物を何度も挿入され、果ては絶命したそうです。ちなみに、彼女のママはその現実を理解できなくて、自殺しちゃいました。めでたしめでたし、はい。その時の写真がこちら」


 なんだよ。なんでそんな写真持ってるんだよ。


「目を背けちゃダメぇ。しっかりみて。まだあるから。まだまだあるから。この子は塾の帰りに、突然白い車に拉致されて、十数時間にわたる暴行の末、両目をえぐられて解放。実は奇跡的に一命を取り留めて、君の事怨んでるんだよねぇ。彼女と彼女の両親は、全財産を投資して君の絶望を所望している」



 なになになになにぃ・・・・・・



「君はよほど目玉を抜く事が好きなようだ。だから目を閉じないように、器具をつけさせてもらうね?」



 甘い香り・・・・・・



「顔全体、目玉に甘い、甘いハチミツを塗ったから、あとはお腹をすかせたネズミさんに任せようかなぁ~、ネズミさん達の夢の国へようこそ」



 変な夢を見たわ。ネズミ、ネズミ。そうねぇ、フロリダの方の夢の国には行った事がないけれど、戦場でドブネズミを食べた飢えをしのいだ時から私は夢の国が苦手になったわよね。



「ここは何処かしら?」



 護身用の鑢は肌身離さず持っていて良かった。今回のこの午前中から”お泊まり会”に連れ出されたのは初めてで、正直私も困惑を隠せない。



「参加人数も、ルールも不明」



”わたしたちは、いま。学び舎をそつぎょうします”



 唐突の流れる謎の放送。されど、ヒントがここにしかないから、私はそれに耳を傾ける。放送の内容はこうだった。



”わっぺんを四つ揃えて、卒業式会場へ、私は今向かいます! 向かいます!”



 ワッペン。私の服に取り付けられている花びらの形をしたワッペンは四分の一。これを花の形になるように集めればいいというわけね。ようするに・・・・・・



”いままで、楽しいこと、悲しいこと、私達はこの仲間とわかちあってきました! でも、私達は今卒業します! これから、私達は中等部のお姉さんになります。なんでも一人で行わなければなりません”



 要するに、犯し、殺し、奪えという事ね。分りやすい。この”お泊まり会”は私からすれば完全なるボーナスステージ。多々良とさくらが参加しているかどうかにもよるけれど・・・・・・馬鹿なメスガキ達を集めて一気に総取りでもいいし、いや。アリサ他私の性奴隷になりえるメスガキ達との合流が先か・・・・・・



「まぁ、進んでみるしかないわね」



 ここは何処かの施設? 何かのプラント? よくは分らないけど、臓物と血のにおいがする。私は警戒しながらその場に行くと呆れた。



「もう、さくらったら・・・・・・」



 三人のメスガキを解体して、組み替え人形みたいにしばらく遊んだ様子が見て取れた。それらでしばらく一人で死姦でもしていたんでしょうね。

 当然ワッペンはない。さくらは次のステージに行ける権利を獲得している。少し厄介な事になったわね。

 さくらとしてはもう完全にフィーバータイムでしかない。自分以外のワッペンを全て破棄でもしようものなら、私と多々良をここで脱落させる事ができる。



「まぁ、死体とセックスにしか興味のないさくらにそこまで頭が回るとは思えないのだけれど、とりあえず急がないと行けないわね」



 私は見つけた扉を開くと・・・・・・そこは、信じられないくらい長い廊下が続く。学校らしいところである事を認識した。



「自動販売機じゃない」



 喉も渇いているので何か飲み物を・・・・・・小銭入れがないから私はドリンクが落ちてくる所に鑢を入れて無理矢理こじ開けた。

 ガラン。



「コークにミネラルウォーター。とりあえずコークを」



 半分程飲んでから私はコークの缶を捨てるとそのまま探索する。一体どれほどつづいているのか? 何処かのマンモス校である事は分った。階段の位置も確認。されど生徒達を確認できない。最悪のケースは、先ほど解体と暴行をされたメスガキ達とさくらだけというパターンね。

 推定五階建てと思われるこの学園らしき建造物。私は下の階に降りた時に気配を感じた。これはさくらのような殺し方じゃない・・・・・・

 もっと幼稚で素人じみた、浮気や怨恨でも手口だ。ゆっくりと私はその現場へと向かう。未だに息づかいが、長くて深い。死ぬ前の呼吸だ。

 そんなものが聞こえる。

 私はワッペンをハイエナできないかとそう思ってその現場に入った。そこに飛び込んできたのは・・・・・・自称私の親友。

 かりんの魂が消えようとしている姿だった。



「かりん」



 かりんは身体がうまく動かないのか、目線だけうごかすと私を見て安堵したような表情を向ける。



「・・・・・・あぁ、小鳥だぁ」



 真っ赤に染まるかりんの腹部に私はハンカチを添えた。なんの意味もないけれど・・・・・・



「何があったの? それ、使わなかったの?」



 かりんの手元にはオートマチック拳銃。未使用のまま転がっていた。



「奈々が・・・・・・」



 あぁ、嫉妬か・・・・・・ワッペンは取られてない。馬鹿な子ね奈々。私がワッペンを見ているとかりんは辛そうにワッペンを取って私に差し出した。



「はい、あげる」

「かりん貴女・・・・・・」

「わかるよ。もう私、多分死んじゃうんでしょ?」



 そんな事はないと言ってあげれる程、私はお気楽な人間ではない。この身体でこれだけの血を流して意識を保っているかりんをたたえたいくらいよ。私はワッペンを受け取ると、静かにかりんの言葉を待った。



「ねぇ、小鳥。死ぬのが怖い」

「・・・・・・私も遠くない未来同じところにいくわ」

「小鳥、お願い。最期に強く抱きしめて……お願い」

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