第30話 ドールハウス・終幕
私達が招かれたのは、ダンスパーティー会場。ここは実に不愉快きわまりない場所ね。動く床に、雌ガキの死体を直立させて、踊っているかのように動かしている。この舞台装置、先程までの”お泊まり会”に比べてあまりにもお粗末すぎる。そして、今回のこのダンスパーティーには何もルールがないように思える。
「多々良」
「分っとる。これは、舐めとんな。アホらし」
多々良はそう言って死体に触れる。そして「腐りかけとるやんけ、つかえへんやん」そう一言。アリサを含め、残った雌ガキは7人。今回はあまりにも犠牲が少ない。そして、今回の”お泊まり会”クリア条件が未だに不明という事。
「次の部屋への扉もない。ここが最後の部屋だと思うけど、多々良どうするの?」
「どうするもこうするもないやろ? クリアできひんのやったら、クリア条件ウチ等が作ったらええんちゃう?」
最初のアナウンスはマナーを守る。そして人形の国に行ってらっしゃいという事で終わっていた。今回、お小遣いに関しても、この”お泊まり会”のクリア条件に関しても何も明言されてはいない。
確かに、守るべきマナーはなかった。あの謎のワイヤーは罰則のように見えるけど、実際どうなのかしら? 分らない事だらけね。
ブーブー!
なにやら音が響く。サイレンのような音。
”良い子のみんなぁ~、ダンスパーティー楽しんでいるかなぁ~? みんなにもダンスをしてほしいけど、もうそろそろ今日の”お泊まり会”は終わりなんだよね”
あら、意外な結末だったと私が安堵しているけど、絶対そんな風には終わらないのが、この”お泊まり会”よね?
”うんうん、みんなのその安心した目、だぁーいすき! でもね? どうせだから、ここで大縄飛びをしてみようよ! 千回飛び終わればおしまい。それかぁ~チョコレートフォンデュがなくなったらおしまい”
無茶すぎる要求。結果としてチョコレートフォンデュとやらが何をさしているのか分らないが、上空より落とされる大縄。そして、先ほどまで動く床のルート通りに動いていた死体が床の中に消えると、代わりにワイヤーに繋がれた別の雌ガキが二人現れる。やせ細り、今にも餓死しそうな雌ガキは大縄を回し始める。
そう、大縄を回す装置としてここに呼び出されたのだ。
「タノシイヨ」
「オモシロイヨ イッショニ トボウ」
回る大縄。これは飛ばざる負えないんでしょうね。しかたがないので、私は大縄の中に飛び込んだ。軽々と私が飛んでみせると、多々良は「しゃーないなぁ」と大縄に飛び込む。アリサ、そして他の雌ガキ達も次々にそれらを飛ぶ中で・・・・・・
いるのよね。どんくさい雌ガキが・・・・・・普通の大縄にひっかかるこの雌ガキ。
「きゃああ!」
大げさにすっころび、何が起きるのか・・・・・・天井より機械のアームが雌ガキの首を掴む。
”チョコフォンデュ! 君にきめた!”
「くるし・・・・・・うぐぐぐ」
首を捕まれたまま持ち上げられた。そして天井から透明な巨大な筒状の何かが降りてくると床と結合。その筒の中に雌ガキは入れられようやく解放される。
ドンドンドン!
「出してぇ! 助けてよぉ!」
ガチャ。バン!
多々良が推定50口径の銃を放つが、透明な筒上のそれには傷程度しか入らない。防弾なんだろう。その筒から出られないでいる雌ガキにこれから起きる事。
私達は分ってしまった。
”さぁ、みんな一緒にスリーカウントでチョコレートフォンデュパーティーしようよ!”
天井から湯気を立てるのは、甘くカカオと植物性油の匂い。そう、熱したチョコレートなんだろう。それを、生きた人間に・・・・・・
「ぎゃああああああ! あづいあづいあづいえっぇえええおあおあお!」
全身チョコレートに焼かれる雌ガキ、これがチョコレートフォンデュ。アナウンスのなくなったらおしまいとはこれを私達が食べなければならないのか?
「ははっ・・・・・・ほんまええ趣味しとるわ。これさくらとちゃうやろな?」
それは私も思った。現れたのは、銀色の巨大なバケツ。公園にありそうなゴミ箱なのかもしれない。
ザザアアアア!
その中にいたのは、巨大なクマネズミ。ドブネズミと言った方がいいかしら? そして巨大なコカローチに・・・・・・アリ。それも大群。黒い絨毯のようなアリ。それらが熱したチョコレートをぶっかけられ瀕死の雌ガキをゆっくりと、捕食をはじめる。チョコレートフォンデュがなくなるまで・・・・・・
「またこのパターンね」
「またて、何か覚えあるんか?」
「水族館で人喰いのエイリアンみたいな魚に補食される雌ガキを沢山見たわ」
「生きたままて、ほんまに嫌な死に方やな。でも、このチョコレートフォンデュの方がやばいんちゃうか?」
多々良の言う意味が私には分らない。確かに不快感は最高かもしれないが・・・・・・あのカンディルとかいう魚に捕食されるもこの害虫たちに捕食されて死ぬも同じでしょ。
「いだぁあああああ! やらぁああああ、いだ、いだだあ、おがああさぁあ」
虫の息だったハズの熱したチョコレートによる全身火傷に、害虫達に捕食される痛み。でもいきなりなに?
「あのアリの毒やろ? アナフィラキシーショックや。本来ショック死するような痛みと苦しみのハズやねんけど、死にかけ取ったあの雌ガキにとって、不幸にも気つけになってもーてんねん。辛いでぇ、人間って案外簡単に死なへん。地獄や」
私はファンシーなリコーダー入れから鑢を取り出そうとして多々良に止められた。
「小鳥ちゃん、この雌ガキ死んだら終わりやん。とりあえず今回はこれでええやろ?」
確かに、この雌ガキを救ったところで、もう長くはない。それに害虫が漏れ出すのも気が引ける。私は・・・・・・何故この雌ガキを助けようとしたのかしら?
「らしくなかったわ多々良」
「まぁ、分らんでもないけどな。ロリがまた一人死んでまうのは心苦しいわぁ」
突然、BGMが流れる。それはスコットランドの名曲。
ホタルの光り。
”ほーたるぅのぉ、ひぃかあぁりぃ、まぁどぉ、のぉゆきぃ♪”
不快な放送で不快な放送主が歌う。それに合わせるかのように、捕食されている雌ガキは悲鳴をあげる。私と多々良はその光景を眺め、他の雌ガキ達は目を背ける。
歌が終わる頃に、雌ガキの悲鳴はとまり。動かなくなる。おそらく事切れたのだろう。次に天井より現れたのはなんらかの液体が入った立方体の容器。それは透明な筒に注ぎ込まれ・・・・・・天井より火が落とされた。
ボゥ。
ボォオオオォオオオォオx!
透明な筒の中が炎に包まれる。チョコレートは溶け、害虫達は皆焼き殺され、香ばしい匂いがあたりをつつむ。
「わりとうまそうな匂いやな」
「なら、食べにいけば? 美味しいかも知れないわよ」
「さくらや、雨亞なら喰うたかもな。ほれみてみ、あのチョコレートフォンデュにされた雌ガキの肌。ぶくぶく膨れて、身体守っとるわ。あれから炭素化するん。辛くて痛くて苦しいんやよな」
「多々良、経験したみたいなそぶりね?」
「まぁ、な」
多々良は焼死したのね。一体何をやらかしたのやら・・・・・・雌ガキがこんがりと焼けていく様子を見ていると、周囲が煙たくなる。
またハロタンだろうか? 私達の意識が保たれなくなる。終わったのだ。この異様に長く、不自然な”お泊まり会”が・・・・・・ん? 何?
これは私の錯覚かもしれない。多々良が、ガスマスクをしていた。
ガスマスクを用意できたの? それとも・・・・・・あぁ、もうダメだ。
目が覚めると、パンケーキが焼けるにおい。そこは私とフランチェスカの部屋だった。
「小鳥ちゃん、コラ! お寝坊さんですね」
「フラン、今は何時かしら?」
「今は朝の9時ですよ。日曜日だからって、こんな時間まで寝ていたら一日がもったいないです」
そう言って、フランはコトンと彼女が作ったドールハウスに人形を置く。そこには直立する動物のドール達。彼らは何かを見ている。
「!」
アクリルの筒上に入ったリスの人形を見ている他の動物の姿をした人形。狸の人形は何故か片方の目がない。
「フラン、貴女。どこまで知っているの?」
「どうしたの小鳥ちゃん? 私が何を知っているというのかしら?」
「いいえ、なんでもないわ。それより、服を脱いでこっちにいらっしゃい」
私の指示に従い、フランチェスカは下着のみの姿で私の横に座ると目をハートにさせてご褒美を待っていた。
フランの唇を奪い、フランの敏感なところにふれながら、私は考えをリセットする為に激しくフランを抱いた。
もしかすると、私だけが・・・・・・何かを知らないのかもしれない。だとすれば、次のお泊まり会あたりで私の命運は尽きる。死ねるわけがない。まだまだ、抱き足りない。犯して、犯してそして、このくそったれなゲームを起こしている興行主にファックをくれてやるまで私の心臓が止まったとしても、一矢報いてみせる。
「フラン、股を開きなさい。愛してあげるわ」
「はぁい、ことりしゃまぁ」
いきていきていきていきていきていきていきていきていきていきていきて、生き残ってやる。
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