第29話 ドールハウスが出来るまで

「お人形遊びをしよう○○」


 母が再婚した。とても優しい新しいパパと、お兄様。お兄様は私といつも遊んでくれた。お人形遊びもおままごとも、忙しいお勉強があってもお兄様はいつも私を優先してくれた。私の十歳の誕生日、お兄様は私のドールハウスを買ってくれた。


「うわぁああ! 凄い!」

「嬉しいかい? ○○?」

「うん、大事にするねお兄様」


 ある時、私は学校から家に帰ると、お兄様は私の制服の匂いをかいでいた。なんだろう? 何をしているんだろう?


「お兄様?」

「あぁ、ごめん○○。洗濯を出したハズなんだけど、なんだか臭うから、ちょっと確認していたんだ。誰か男の子と遊んだかい?」

「昨日は、お楽しみ会でダンスをしたわ!」

「お楽しみ会か・・・・・・それは誰がやろうって言ったの?」

「先生と、クラス委員のめぐさんよ! とーっても楽しかったの」

「そうか、それは良かったね」


 お兄様は嬉しそうに笑い私の頭を撫でた。でも不思議な事が起きたの、めぐさんと先生が次ぎの日には学校を辞めてしまって・・・・・・それをお兄様にお話をしたら私を一晩中慰めてくれたの。初潮がきた時、私は何もわからず困り果てていた。

 それをお兄様は気づいてくれてナプキンの使い方、私に女の子の当然の現象であることを教えてくれた。


「何も怖い事じゃないんだ○○! 恥ずべき事じゃないんだよ? ○○以外にも同じように経験した子がいるんじゃないかな? 聞いてごらん」


 お兄様はそう言った。

 私は翌日嬉々としてお兄様にその話をした。こと子ちゃんも、リリーちゃんももう既に生理が来ていた事を話した。

 すると、いつもどおりなでなでしてくれたお兄様。

 翌日、私が話した友達はみんな学校から姿を消した。あるとき、塾から帰るとお兄様は壁を殴っていた。


「くっそ! くっそ! ○○が、忌々しい女になってしまった! 忌々しい、汚らわしい、女になんてならなくていいのに・・・・・・なんでだよぉ!」


 怖かった。

 お兄様はずぼんを脱いで、私の写真をみながら、ごそごそと何かをしていた。何をしているのか全く分らなかったけど、お兄様は獣のような声を上げていた。


「おっおっおぉおおお。はぁはぁ、んんんっ! ふぅ・・・・・・良かったよ○○」


 その日は私はお兄様に顔を合わせられなかった。こんなに大好きなお兄様なのに・・・・・・それをクラスの友達に話した時。


「○○ちゃんのお兄様、○○ちゃんの事が好きなのよ! だったら簡単よ! ○○ちゃんはお兄様の事好き?」


 あたりまえだった。お兄様は誰よりも優しくて、格好いいの! 大・大・大・大ぁあああい好き!

 クラスの友達に教わった事。お兄様をゆーわくして、お兄様とえっちな事をするの。凄く不安だけど・・・・・・

 みんなは大丈夫だって言ってくれたから私はお兄様の部屋をノックした。


「お兄様、入っていいですか?」

「ああ、どうしたんだい? ○○」


 私は制服のまま、お兄様の部屋に入るとお兄様に尋ねた。


「お兄様は○○の事好きですか?」

「うん、大好きだよ!」

「やった! 私もお兄様の事だぁあいすき!」


 私はそう言ってお兄様に抱きついた。お兄様は私を抱き上げてくれて、そして微笑む。


「ほんとに今日は甘えんぼさんだな。何か嫌な事でもあった?」

「ううん、お兄様・・・・・・あのね?」

「うん」


 私は友達に言われたとおり、服を脱ぎ、ブラジャーも外して、恥ずかしかったけどお兄様に手を差し出して言った。


「○○にえっちな事、してください」


 パン!

 えっ?

 お兄様はすごい形相で、私の頬を叩いた。お母様にも叩かれた事なんてなかったのに・・・・・・お兄様が私を叩いた。


「○○、なんだそれは? そんな汚らわしい事、いつ覚えたんだぁ! まさか・・・・・・もう○○、君は」


 お兄様は私を押し倒し、パンツをずらしてからおまたを指さす。


「ここに男の子に何かされた事はあるのか?」


 怖かった。

 だけど私は首を振った。


「・・・・・・なぁい、お兄様だけぇ・・・・・・お兄様に」

「○○、僕はそんな風な事を言う君は嫌いだ。でも○○は僕を喜ばせたかったんだね? ありがとう。でもこんな事は二度とやめてくれないかい? ○○は可愛い女の子のままでいてほしいいんだ。不気味で、気色悪くて、すぐに股を開いて嘘をつく女にはなってほしくないんだ」


 私はお兄様と神に誓った。そしてお兄様にこの事を教えてくれた友達の話をした。翌日、クラスメイトの殆どのお友達がいなくなった。


「お兄様、この前買ってもらったお洋服をみて」


 フリルのついた服。お兄様はこういうお人形さんみたな服が好き。ぬいぐるみを持っている私の事が好き。


「可愛いよ○○・・・・・・うん、でも少しここが気になるなぁ」


 お兄様は私の大きくなってきた胸をさわり不快そうな顔をする。


「お兄様、また大きくなってしまいました」

「背も、身体もこんなに大きくなって・・・・・・かわいそうに・・・・・・かわいそうな○○」


 お兄様は私が女になる事を一緒に嘆いてくれる。泣いてくれる。そんなある日、私は課外学習でご一緒した友達をお兄様に紹介した。


「お兄様、こちら聖リーパー女学院の通われている。フランチェスカさんです」


 写真に写るフランチェスカさんを見て、お兄様は目の色を変えた。今まで私の事だけを考えていたお兄様が、フランチェスカさんの名前を呟きながら自慰行為を繰り返す。

 フランチェスカさんの姿は、お兄様が嫌悪するハズの”女”のハズなのに・・・・・・

 私はフランチェスカさんからお兄様を取り戻す為にその日の晩、お兄様に二度と行わないようにと言われた、伽にもう一度お兄様を誘った。


「お兄様、抱いてください」


 また叩かれるのだろうか? また、罵声を浴びせられるのだろうか? そう思っていたらお兄様は私を受け入れてくれた。

 それは甘美で、永遠のような時間に思えた。


「お兄様ぁ、お兄様ぁああ!」


 私とお兄様は毎晩、いや時間さえあれば身体を重ねた。お兄様は私を優しく、女として愛してくれた。

 私はもう何もいらない。そう思ったのに・・・・・・


「あぁ、いく! いくよ! フランチェスカぁああ」


 嗚呼、そうか。

 私はフランチェスカさんの代わりだったんだ。もう、この女として成熟した私の事はとうに興味が無かったのだ。

 雌という身体を持った私の役目はお兄様の性欲処理の道具程度にしか役には立たなかった。

 ・・・・・・怒

 ・・・・・・憎悪

 ・・・・・・・・・・・・嫉妬?

 この感情はなんだろう。どういう風に言葉にすればいいんだろう? 私は何でも知っているお兄様に聞いていた。


「お兄様、いなくなってしまったお友達は何処にいるのかしら?」

「あぁ、あの子達か・・・・・・見せてあげようか?」


 お兄様に連れていってもらったのは・・・・・・何処かの倉庫。そこはドールハウスのような扉だった。


「開いてごらん○○」

「はい」


 そこは控えめに言って地獄絵図だった。ひからびた死体の山。かつて男の子だったであろう虐待の限りを尽くした死骸。そして・・・・・・ホルマリン漬けになっているかつての友人達。


「先生、ここにいたんですね」


 不正を嫌い、愛を説いてくれた優しい先生。みんなの為に泣き笑ってくれた先生。歯を全て抜かれ、頭には大きな釘が何本も打たれ・・・・・・さぞかし苦しかっただろう。


「お兄様、これはなんでしょうか?」

「ん? ドールハウスだよ。素敵だろう?」


 凄い。

 これがお兄様なんだ。私はお兄様のこの作品を見せられ、私は気がつけばお兄様を、先生の頭に突き刺した時に使ったカナヅチで叩いた。そして警察に通報・・・・・・警察に取り調べを受けている最中。

 一人の女性が取り調べ室にやってきた。


「こんにちは。聖リーパー女学院の教諭をしています。ゆかりと申します」


 あの有名な聖リーパー女学院の先生がなんの用だろう? そう思っていたら、ゆかり先生はぴーと可愛くホイッスルを吹いた。


「選手入場!」


 頭に何かワイヤーのつながったお兄様が取り調べ室にやってきた。


「○○、アイシテルヨ ダイスキ ズットイッショニイタイヨ」


 お兄様がお人形のようにそこにいた。


「○○さん、このお兄様を差し上げるから、我が校に編入して学校を盛り上げてくれませんか?」


 私は歓喜した。フランチェスカさんのいる学校で、お兄様を自由にして、そしてドールハウスを作れるのだ。そう、お兄様に悪い虫がつかないように、ゆかり先生にもらったワイヤーで汚い雌ガキ達を辱めながら。

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