第27話 ドールハウス・その①

 あれから私は夜な夜なフランを愛でる度に武器カタログについて徹底的に問いただすもその事に関してフランは何も答えなかった。かりんの銃にメアのサイ。あんな本物を前にしたら、さすがに私も状況によっては死を迎える事になるでしょうね。

 それはまずい。まずすぎる。かりんやメア程度なら問題ないのよ。

 多々良やさくら。そして、雨亜。この辺の連中とのパワーバランスの開きが一番……


「まぁ、最悪メアかかりんを殺して奪えばいーか」


 しゃこしゃこと私は歯磨きをしながら、いまだに繰り返し与えた絶頂でびくびく痙攣しているフランに話しかける。


「今日、小等部と中等部のメスガキ達がフラン。貴女の事を聞きに来たわよ。ほんとおっかしいの! 学園のお姫様、あるいは王子様そのどちらをも兼ねているのが貴女なんですって、あの子達が尊い物として拝んでいるのが、下の穴からお漏らしを繰り返すこんな駄犬だなんて思うと少しあの子達に悪い気すらしてくるわね」


 切なそうな目で私を見るフラン。でもしてあげない。ご褒美ば与えすぎる物じゃないの、必要な時に躾そして主人の気分がいい時に与える物。


「確か冷蔵庫に葡萄があったわよね? 用意なさい」

「はうぅん、にゃうんあーあぁん!」

「はやくなさい。


 脳でイカせる事を覚えさせたフラン。もうそれはパブロフの犬という実験の素晴らしさを物語るかのようにあの状態からフランは正常な意識に切り替え。てきぱきと掃除をはじめる。そしてショートグラスに葡萄を盛るとフランは曰く、お姫様の笑顔で私に言った。


「はい、小鳥ちゃんあーん」


 カリリ。

 葡萄という瑞々しい果実に歯を入れる瞬間。それは女の子を抱いている時と同じくらいの幸福感と征服感を感じる。


「ねぇ、フラン。貴女の卒業制作って何かしら?」

「まだ小鳥ちゃんには難しいかもしれないけど、服飾関係、建築関係よ」


 フランは確かに、小動物が人間になったような不自然に直立した人形を集めていた。そしてそのドールハウスや小物、服等を自作する手先のよさを私は見た事がある。


「フラン、貴女と離れるのは、少し寂しいものね」

「次は、同い年の子とシスターになって、その次は小鳥ちゃんがお姉様よ。だから頑張って」


 馬鹿ね。

 あれだけ辱められて恰好がつくわけないじゃない。


「そうね。駄犬の言葉だけど、覚えておくわ」


 私達はその日一晩中愛し合った。空腹を感じれば何か食べ、お互いの体液で乱れ、汚れる事もお構いなしに……

 私にとってフランとは最高のダッチワイフだった。それがなくなる事が少し惜しい。そう思えたのかもしれない。

 そして、それから数日後。久しぶりにやってきた”お泊まり会”私と、多々良とアリサ。知り合いはこのくらいね。あとは知らない子。”お泊まり会”で一緒になった子達と総勢十人ほど。少ないわね。

 そして、ここは何処かしら? 大きな扉がある。そこでいつもの放送が流れた。


”良い子のみんなー! 今日は、喜んで! みんなはお人形さんの国に遊びにきちゃったよ! 可愛いお人形さんの国で楽しい一時を過ごしてね! でも、お人形さんの国は、レディーとしてのマナーが成ってない子にはおしおきがあるから、しっかりマナーを守るんだよ! じゃあ人形の国に! いってらっしゃあい!”


 ぎぃいい!

 開かれた扉。そこは巨大なドールハウスだった。そして頭と身体にワイヤーが繋がれ涙を流しているのに、無理矢理笑顔を作らされている少女が私達の前にやってきた。


「たすけ・・・・・・イラッシャイマセ。ココハシアワセノイエダヨ。オヒルハオニワデ ティーパーティー ヨルハダンスパティー マイニチ タノシイ ぐぇえええ」


 鼻血を流し、眼球が凄い速度で動く。一体何が起きているのかは分らないけど、頭の中をあのワイヤーのような物で犯されている事だけは私でも分る。

 メスガキ達は阿鼻叫喚。


「小鳥ちゃん、私怖い」

「大丈夫よアリサ、貴女は私が守ってあげる」


 12才でもう雌の臭いをプンプンさせるアリサ、そうよ。この子をこんな所で失ってなるものですか、あと四年。いいえ、あと三年あればちょうど食べ頃の果実になる。


「小鳥ちゃん、何かまた来たで」


 私がアリサの敏感なところに触れながら心を落ち着かせていると、多々良が水を差す。されど多々良の言葉に耳を傾けないわけにはいかない。

 なにせ、ここは”お泊まり会”なのだから。

 フレアスカートのメスガキ・・・・・・そして臭う。排泄物の臭い。コルセットを巻いて、レディの格好をしたメスガキだけれど・・・・・・”お泊まり会”参加の私達全てが今の状況を瞬時に察知した。

 目の前のメスガキは、糞尿を漏らしている。それを大量に。メスガキの目は既にに死んでいて、無理矢理言わせているような台詞を語る。


「コンニチハ ニンゲンノミナサン ワタシ ミンナト ナカヨクナリタイナ! ティーパーティーニシマショウ」


 このメスガキもまた、頭にケーブルが突き刺さっている。先ほどのメスガキと違い既に意識はぶっ飛んでいる。この方がまだ幸せかもしれないわね。


「サァ スワツテ スワッテ」


 広いテーブルに私達を座らせる脱糞メスガキ。自由を奪われ、無理矢理キャラクターを演じさせられる。リアルなドールハウス。最高ね。こんなバービー人形があれば・・・・・・


「こんなリカちゃん人形あったら、ウチ全財産はたいて買うわ」

「は? バービーでしょ?」

「何言ってんねん! バービー人形なんてウチの国では全然売れへんかってん! あんな人形より伝家の宝刀。リカちゃん人形やろ」

「馬鹿言ってるんじゃないわよ? バービーはリカちゃんなんて芋女とは違ってステイツの女の魅力がつまってるのよ」

「それこそ寝言やろ? バービー人形は元々日本で作られとったんや! 全然売れへんかったけどな」


 私と多々良がそう言い合う姿を他の少女達は見つめ、そしてここの支配人であろう脱糞メスガキはこう言った。


「コウチャト スコーンヨ」


 確かに紅茶とスコーンが用意されている。それを飲めと喰えと目の前のメスガキは言う。吐き気を催す不快な臭いをまき散らしながら、ここはあらゆるルールが通用しない。されど、クリアは出来るようになっている。

 意味不明な”お泊まり会”


「みんな、頂きましょう」


 私の言葉を聞き、多々良が座る。そしてアリサ。私も椅子にかけると次々に皆それに倣った。不快な臭いをまき散らしながらカップに紅茶を入れてまわるメスガキ。食欲なんて一ミリもわかない中で私達のお茶会は始まった。


「悪くないお茶。M&Mあたりかしら?」


 スコーンも腕のいいシェフが仕上げたような質のいいものだったけれど・・・・・・それらを全て台無しにするこの汚物の臭い。

 そして動きがあった。


「むし・・・・・・虫が入ってるぅう!」


 見るからに吐き気を催す何かの幼虫がうじゃうじゃと入った紅茶。外れ・・・・・・もしかすると当たりかもしれない。

 嘔吐くメスガキ。

 そして、あたりまえの嘔吐。


「オチャカイヲ ケガシタ ワルイコ」


 胃の中の物を全てぶちまけたメスガキに汚物の臭いをまき散らすメスガキはずんずんと近づき、そしてグンとメスガキの頭に何かを打ち付けた。


「痛っ・・・・・・あ、あ・・・・・・オチャカイノツヅキヲハジメマショ」


 もう、ほんとなにこの状況。吐瀉物の臭いをまき散らすメスガキと排泄物の臭いをまき散らすメスガキ、悪臭を放つ二人。そう思いきや。

 ドサ!

 最初の人形として動いていたメスガキが倒れ、失禁。頭に突き刺さっていたワイヤーのような物もぼすりと抜ける。ゆっくり赤い血で床を塗らし、しばらくの痙攣の後に息を引き取った。


「なるほどな。マナー違反は人形の国の住人にされるってことか、キモっ! まぁええわ。次いこや」

「待って!」


 多々良が面倒そうに、声をかけるメスガキに振り向く。それは嘔吐し、今頭に何かが突き刺さっているメスガキ。まだしっかりと意識がある。


「助けて・・・・・・ケテ ソノトビラヲ アケテ ツギノパーティーヘ 違う! 助けて、私も サァ ティーパーティーをシマショ」


 スキップをしながら、メスガキはロンドン橋を歌い。次の部屋にゆく私達にテーマパークのキャストのように手を振り見送った。

 声とテンションだけは高かったが、その表情は苦悶のそれ、自らの終わりを悟ったメスガキ。そして、それを救う事ができないと知った私達。


「なぁ、小鳥ちゃん。今回の”お泊まり会”大分やばない?」

「貴女でもそう思うのね。多々良」

「そらそうやろ。あのワイヤーみたいなんなん、おかしいやろ、あんな物作れる技術あるんやったら・・・・・・」


 そうね。この世界のテクノロジーをどう考えても越えてるわ。それとも、学園という収容施設の外の情報操作をしていたとしても・・・・・・こんなワイヤーはありえない。恐らく、私や多々良、さくらに、雨亞。調子にのっている私達に少し”お泊まり会”の本気というべきか、深淵を見せてくれたのかしら?


「多々良はこの状況どう思うの?」

「・・・・・・ウチ? 多分、小鳥ちゃんと同じ事考えてるんちゃう?」


 私と同じ事?

 多々良ならありえそうね。なら私は聞いてみる事にした。


「せーので言い合う?」

「えぇな! ほな、せーの!」


 私と多々良は扉を開け、次の部屋に入る瞬間。言い合った。


「「あのワイヤー手に入れて、性奴隷に強制絶頂繰り返したい」」


 私と多々良は、笑い合う。そして手を握って一緒にジャンプして次ぎの部屋へ入室。

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