第25話 お待たせ、水着温泉回④血の池

 第四の地獄へとやってきたわいいけど……これは?

 赤々としている液体、多分大量の血液でしょうね。落ちても死ぬ事はない高さ、そして先ほどのようにワニ等はいない。されど、これはまた面白い事をしているわね。


「あああああ! あぁああ!」


 ザバザバと血液の池の中で行水している虚ろな瞳の少女達、いいえ、少女のような何か、飢餓状態で下腹にガスが溜まっていて、一心不乱にこの血液を飲み、そしてこの血液の持ち主だったであろう。肉体に歯を入れては喰らい尽くす。これはまさに、地獄絵図といえるわね。


「どうやって、ここを渡るのかしら?」


 私の疑問に答えるように、放送が流れた。


”ぱんぱかぱーん! 第四の地獄、血の池地獄にようこそ! 良い子のみんな!今回はこの血の池地獄に入って渡っていけばゴールだよ! この血の池地獄は特に体に害はないけど、血の池地獄には良い子のみんなのお友達が沢山いるんだ! お友達は腹ペコさんだからたまに甘噛みしてくるから気を付けてね……そして、今回もドリンクちゃーんす! 今回のドリンクチャンスは蜂蜜レモンだよ。ただ、赤い蜂蜜レモンなんだ! この蜂蜜レモン、飲みやすいし、今までと違って辛くないよ! 飲んだ方がいいよ”


 そう言って放送は切れる。全員分の赤い蜂蜜レモンがビーカーに入って並び、それを飲むかどうかここにいるメスガキ達は考えていた。

 一人のメスガキは、ドリンクチャンスがどれもろくでもない事を知っている為躊躇するが、二人の少女。先ほど、当たりだったのか美味しいジュースを飲んでクリアした二人は当たり前のように頷いてそれを飲んだ。


「あまーい! 美味しい!」


 それに飛び込むように他の少女達も飲む。飲まなかったのは私とかりんと穂乃花にメア。

 さて、落ちたら死亡しないというのは今までと違うけれど、血の池地獄に浸かって共食いをしている畜生共はこっちを先程からじっと見つめている。


「かりん、貴女も飲みなさい」

「小鳥は?」

「私は、この池を渡るわ」

「なら、私も行くよ。だって小鳥の親友だから」


 馬鹿な子。穂乃花も飲むつもりはないらしい、そして……ど変態のメアは私に罵られる事を今か今かと待ち構えている。


「メア、殿を務めなさい。あそこにいるのはインプ。もう人間じゃないわ。うまくできたらあとで、虐めてあげる」


 ぞくぞくぞくと震えると、メアはサイを両手にもって血の池地獄に飛び込んだ。


「メア、いっきまーす!」


 どぼーんと落ちるや否や、血の池地獄の中にいる亡者達があつまってくる。100メートルプール程の血の池地獄に亡者どもの数はおおよそ100人。血液という水中下でどれだけ殺せるか、見せてもらうわ。


「穂乃花、かりん、私達も行くわよ!」


 二人と手を繋いで三人でプールに落ちる。その時、蜂蜜レモンを飲んだメスガキ達の私達を憐れむ目。

 得体の知れない液体を飲んで、よくまぁそんな顔が出来るわね。


「えぇーい!」


 ザク、ぶしゅーー!

 嫌な臭いがあたりを包む。何かが腐ったかのような臭い。メアはガスの溜まった亡者の腹を切り裂いたのだ。切り裂かれた亡者は身体全体で苦しむが、メアはそんな事きにしないという風に頭を突き刺してトドメを刺した。


「養豚場じゃん」


 そんなメアの余裕は一瞬で砕かれる。


「「「「おぉおおおお! うあぁあああ!」」」」


 一斉に、メアめがけて亡者達が向かってくる。血の池の中で、同じ人間をただの空腹を満たす為の餌として・・・・・・


「何・・・・・・やばっ・・・・・・小鳥ちゃん」


 馬鹿ね、貴女はそこでその養豚のブタと戯れてなさい。この雌ブタがっ。

 さすがのメアもあれだけの亡者に囲まれれば2,30分少々で死に至るでしょう。それまでに100メートル。このベタつく血の海の抵抗を考えても十分ね。


「チェリッシュ、メアが・・・・・・・」

「あの子はもう無理よ。行きましょ穂乃花」


 これは必要な犠牲。分るでしょ? あぁ・・・・・・そう、貴女はそういう子よね。救える者は救おうとする。そんな事をすれば、自分の命が失われるというのに・・・・・・無償の愛。アガペーを体現するなんて、ほんと馬鹿な子。


「かりん、一人で進めるかしら? ・・・・・・・何? 私の顔になにかついてる」

「ううん、私も行くよ。小鳥、退院してから少し変わったと思ったけど、その正義感は変わらないよね」


 正義感、違うわよ。穂乃花は成長すれば本当にいい女になるわ。みすみすセックスフレンドを失うわけにはいかないのよ。

 かりんはどんな女の子に成長するのかしら、そう。私が食べるの。だから、こんな得たいのしれないメスガキのなれの果てにはくれてやれないわよね。


 ズボッ!


 後ろから亡者に私は鑢を突き立てる。肺にまで達したそれに、ひゅーひゅーと音を立てて絶命する。あの鬼ごっこで交戦した邦彦に比べればあまりにもひ弱。されど・・・・・・数がやばいわね。

 空腹を満たす為に、痛覚を感じてもひるむことなく迫り来る亡者達。


「死ね死ね! 来るなぁ! もうなんなのよぉ!」


 メアの釵も油で切れ味が悪くなっている。一撃で殺せなくなれば地獄の餓鬼達は一気に貴女を捕食しにくるわよ。


「メアこっちだ! はやく!」

「穂乃花、よしなさい。やっぱりもう無理よ」


 十五匹の亡者に囲まれたメア。どうすれば穂乃花を説得できるのかとそう思った時、私の横で懐かしい臭いを感じた。

 本来、音がして臭いがしたんでしょうね。

 パン! とチープな音。されど、一発で簡単に命を奪う音と、硝煙の香り。

 銃。まさかねと思っていたけど・・・・・・かりんはポシェットの中にロングマガジンとベルギーの名銃。ファイブセブンを構え、それを震える手で撃った。


「メアちゃん! はやく逃げて」


 バン! パン!

 反動で腕が上がるかりん、よくそんな状態で一発当てたわね。あと90人弱の亡者達。されど、銃があるなら話は別ね。


「かりん、それ貸しなさい」

「えっ? 小鳥・・・・・・これはお姉様から」

「いいから、全員で生き残るには私がそれを使うしかないわ。私を信じなさい」

「・・・・・・うん、はい」


 重い。こんなに重かったのね。命を奪う重さにしては軽すぎて、そして今の私には少々扱いが辛いわね。

 バンバンバンバンバンバンバン!


「メア! 引きなさい、生きたければ」

「小鳥ちゃ!」

「黙りなさい雌ブタ」


 やばい、もう腕がダメになりそう。昔は好んで拳銃を使ったものだったけど、ほんと拗らせた恥ずべき自分ね。


「メア、数を減らすから、撃ち漏らしたブタを捌きなさい」


 ハートか頭を次々に撃ち、亡者達の数を減らす。面白いくらいに死んでくれる。この亡者達は私達と争うつもりはないのだ。目の前で共食いする者が死ねば簡単に餌が手に入る。それら巻餌に群がる亡者達を私とメアが殺処分していけばいい。


 あぁ・・・・・・面白い。懐かしい・・・・・・チッ、弾切れ。


「かりん、マガジンの換えは?」

「ううん、持ってきてない」


 ったく、これだからメスガキは・・・・・・残り三十弱かしら。まぁ、あとは私の太くて堅い鑢とメアの釵でなんとかなるでしょう。


”ここでスーパーちゃーんす! ”


 は? このタイミングで放送。


”ドリンクチャンスの皆は、ボーナスタイムだよ! これから沢山の石を配るから、それをつかって血の池にいるお友達にぶつけたらお小遣いアップ! お腹の大きなお友達を殺せたらお小遣い2倍。そうじゃないお友達を殺せたら、10倍だよ! 嬉しいね! 何を買おうかな?”


 何それ、面白すぎでしょ? トラックで持ってきたかのような丸くて堅い石が大量に天上から流れるように上で見ているメスガキ達の手元に運ばれる。


「あんなの投げてくるわけないじゃん!」


 穂乃花の言葉とは裏腹に・・・・・・

 ゴン!


「あたっ・・・・・・」



 穂乃花は自分の頭から流れる血を見て、ようやく状況を理解した。


「やめてよ! なんで?」

「穂乃花ちゃんはほんと馬鹿・・・・・・お小遣いが増えるなら誰だって投げるでしょ? だから、あれを避けながら、亡者達を殺しながらメア達はこの血の池を渡りきらなきゃ・・・・・・じゃないと、あの子達。殺せないぢゃん」


 メア、ほんとうに鼻につく子だけど、こればかりは同感ね。残りあと僅か、中には亡者に石を投げる子もいるから、比較的私達がこの血の池地獄をクリアするのは難しくはなかった。


「ほんと、くさっ・・・・・・なんなの? 気持ち悪い」


 メアは油と刃こぼれで切れ味が悪くなった釵で目の前の亡者達を殺しながら尚進む。そして血の池地獄の終わり。

 私がまずこの血の池から上がり、手を伸ばす。


「かりん」

「うん!」


 穂乃果とメアも続く。血の池地獄から上がって私達が進んでいたそこが中々に趣味の悪い場所である事に驚いた。


「何これ・・・・・・き、気持ち悪っ」


 かりんはとんでもない場所に浸かってそこを進んでいた事を知る。そこは人間の廃棄施設。私達に狩りきられなかった十数人の亡者達は血の池の中から人間の身体の一部を見つけるとそれを捕食する。身体の一部分だったり、臓器の一部分だったり、骨そのものだったり、きっとこの血の池に廃棄される人間の身体は、臓器移植などにも使えず組織バンクにも適さなかった。人間の残りカス、そしてそれを処分する。腹の大きな人間の出来損ない。染色体の異常な個体なのかは分らないけど、あのお菓子工場の廃棄物と、お菓子工場の出来損ないがここにいるんでしょう。

 何が血の池地獄よ。

 本当の地獄はここにこれら残りカスを運んでくるところでしょう?


「小鳥ちゃ、しゃ、しゃわー」


 メアが指さすので、私は今だげーげぇと嘔吐するかりんの背中をさすり、シャワールームへと連れて行く。

 シャワールームにはご丁寧に高級なボディソープとシャンプーにコンディショナーが用意されていた。水着を脱いで、あられもない姿で私達はシャワーを浴びる。これは多々良なら鼻血ものでしょうね。


「小鳥ちゃ、洗って、洗ってあげます」

「あら、悪いわね。メア、貴女のその貧相な身体を使って洗いなさい」

「はいぃいい!」


 メアは私の身体を自らの身体で泡立て、まぐわうように淫らに動く。そんな状態でメアは恍惚の表情でこう聞いた。


「あの子達どうします?」


 私達に石をほうった子達の事ね。そんな物・・・・・・


「全員、強制ロストバージンね。当然貴女もよ」


 あまりの嬉しさにウレションするメアは興奮しながらこう言った。


「小鳥ちゃのせいで、生理はじまるかと思ったよぉ」

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