第24話 お待たせ、水着温泉回③鋸解
動く床、この進行方向に身を任せていると、最終的には身体を切断するチェーンソーが待ち構えている。
「チェリッシュ、左行くよ!」
「穂乃花、一度来た方向を戻るわよ」
「え? どうして? このまま進んだ方がよくない?」
ほんと、馬鹿な子ほど可愛いって言うけど、ここからはそれじゃあ死ぬわよ。
私は動く足下に逆らいながら穂乃花に話す。
「この床見てごらんなさい。前の床より少し速いの。そして次の床、ここよりもっと速いわね。何の考えもなしにこのまま進めば、足を滑らすか、床の速度にタイミングをずらされるかで、挽肉にされるわ。生き残るには確実に、床の先がどうなっているかを知って、攻略する必要があるの」
そして、ここで大幅にメスガキ達が死ぬであろう事が容易に想像がつくわ、そうね。
スキップが出来ない子、長縄が飛べない子はここでリタイア。そして私も、確実にクリアするために、床の先がどうなっているか知る必要がある。私と穂乃花が進んだフロアは三つ。なんとか戻ってこれる速度。四つ目は恐らくランニングマシーンくらいの危うさを感じさせてくれる。戻ってきて、私と穂乃花がかなり疲れている事に気づいた。
「ハァハァハァ、わりとしんどいわね」
「そうだなチェリッシュ・・・・・・」
私達はこの動く床がどうなっているかを伝えた。そしてそれを見たメアは嬉しそうにドリンクチャンスに指を指す。
「あれ、飲んだ方が安全じゃない?」
確かに、あれを飲み干してここをクリアならそれの方が・・・・・・いいかもしれない。
メアがここで提案をした。
「小鳥ちゃんと穂乃花ちゃんはお疲れだから、少し先まで他の人でいこうよ! さっきドリンク飲んだ人は疲れていないからよくないかな? かな?」
メアの提案は確かに、もっともに感じられた。他のメスガキ達もそれに賛成し、謎のドリンクを飲んだ三人はゆっくりと動くベルトコンベアの上に乗る。そして進む。メアは恍惚の表情で彼女らが進む姿を見つめる。そして、数分だった頃・・・・・・
「お腹痛いっ!」
「私も、いやっ! いたい! いたい!いたい!」
いやいやぁ! が、ぎゃああああああああああ、いだあぁああああ。ああああああああ! と断末魔に変わるのに要した時間は倍ほどの時間だったかしら。排泄物の嫌な臭いと共に血のにおいが混じる。
そして、帰ってこない三人。さすがのメスガキ達も何が起きたのか分ったんでしょうね。ここには残り十三人のメスガキ達がいる。メアは、手を汚す必要もなく三人を処刑した。「これはもう、あのドリンク飲んだ方がいいよね? いいよねぇ!」
メアが指さすドリンク、それを前回飲んだ事で今回全滅した三人。それに躊躇するメスガキ達。でも、そんな中で二人のメスガキが恐怖に失禁し、ドリンクを飲む事を決めた。 ごくごく。おそるおそる飲んでいたが、二人はそれを凄い勢いで飲み干した。
「おいしい」
「うん! おいしいね!」
おいしい? ジュースだったとでも言いたいの? その様子を見て他のメスガキ達もドリンクに走ったが・・・・・・
”ぶっぶー! そういうズルはよくないなぁ! ズルする子用のドリンクチャンスはこっちだよぉー!”
先ほど、二人のメスガキが飲んだ容器は地面に割れ落ち。一口サイズの容器に入った透明な飲み物。
「こ、これくらいなら!」
四人のメスガキがそれを一気飲みする。そして、嘔吐。する者。鼻血を出す者。突然動かなくなる者。そして、なんとか堪えた者。
私はその容器を拾って臭いを嗅ぐ。アルコールね。それも相当度数の高い何か。全員多分急性アルコール中毒。
”ミカちゃーん、さゆりちゃーん、真理ちゃーん! アウトぉおおおお!”
コミカルに楽しそうにそう放送が流れ、マシーンアームは強制的にほぼ動けない三人をベルトコンベアの上に乗せる。鼻血を出したメスガキだけがなんとか助かろうともがくが・・・・・・腕だけが最後に見えたかと思うと
「ぎょぉっ!」
という悲鳴と共に帰らぬ人になった。メアは手を叩いて喜ぶ。残り九人。これで私の計算。が合わなくなった。残りの地獄はあと二つ。しかたがない。
「私がもう一度行くわ。だからみんなここで待ってて」
私のその発言について来るという者は誰もいない。と・・・・・・そう思われていた。たった一人手を上げた人物。
「はーい! メアも一緒に行くね! もしもの事があれば助け合えるでしょ?」
私を潰しに来たわね。いいわ来なさい。遊んであげる。
「じゃあ、メアちゃん。いこっか?」
「うん! いこういこう!」
殆ど動かない一つ目のベルトコンベアを抜けて、動く歩道くらいの速度のベルトコンベアに乗り換える。
「ねぇ、小鳥ちゃん、小鳥ちゃんってどうしてそんなに可愛いの?」
「生まれつき、凡人とは違う人生を歩む為の運命を持ってるからかしら?」
私のこの発言を聞いてメアは目が点になる。
「えぇ~、小鳥ちゃんの言っている意味。わかんなぁ~い!」
私は逆に一つ分った事があるわ。メアは私や多々良のような、以前があったわけでなさそうだという事。
生まれ持ってのサディストだという事ね。それにしても穂乃花と同等かそれ以上に運動神経がいい。身のこなしが並のメスガキじゃない。
「メアちゃん。一つ聞いていいかしら?」
「なぁに? 小鳥ちゃん」
「貴女のその」
「この釵ちゃん、どうやって手に入れたかぁ~? 知りたい?」
「えぇ。自作にしてはクオリティが高すぎるしどう考えてもそれ既製品だから」
ベルトコンベアの上でメアは釵を私に見せると、それで襲いかからん勢いで刃を見せつけてからこう言った。
「お姉さまからのプレゼントだよぉ」
「お姉さまからの?」
このメアのルームメイトの姉役の事だろう。は? なんで? 意味分からない。私が疑問符を頭に並べているとメアは私を馬鹿にするように笑う。
「知らないのぉ~! 小鳥ちゃん、知らないんだぁ~! お姉さま達高等部の生徒は卒業制作カタログから武器が買えるのよ」
聞いた事がない。なら、なぜフランは黙ってるの? いや、むしろもっと武器を持っているメスガキがいてもおかしくない。
「それで?」
「えぇ~、この後は内緒」
あぁ、このメスガキウゼェエエエ! 殺してぇえええ! ダメ、冷静に……まだ、このメアからは聞く事がある。
「そう、ならいいわ。私、無駄な話し合いと時間程嫌いな物はないの、先行きましょ」
未知の領域4つめのベルトコンベア。ややきつめのベルトコンベアといったところかしらこれは長時間はかなり辛い?
「もう一つ行くわよ」
「…………」
「メアちゃん? まぁいいわ」
あはははは! 怒ってる、怒ってやんのぉ! 所詮はガキか、お姉さまとやらが武器を購入できるという情報はおいおい調べればいいしとりあえず5つ目……
ビュン! ガギギギギギッ!
「なっ……やる気? いや、違う」
「危ないよ小鳥ちゃあん!」
5つ目の動く床、これはやばい速度。マラソンランナーばりの速度で動く中、宙ぶらりのチェーンソーが振り子みたいに襲ってくる。
「助かったわメアちゃん。メアちゃん?」
「とーせんぼ」
殺しにきた……メアは目の色を変えるとサイで私に突きを打つ。それを避ける。そして振り子のチェーンソーも……
「あはははは! ざーんねーん!」
グサっ……
じんわりと赤い血で染まる私の足。ただのメスガキならこの傷みでのた打ち回り死亡するのかもしれない。でも私は……
「ねぇ、メアちゃん。下の穴に男の拳を入れられてそのままかき回された事ってある? それとか、二つの薬物を混ぜたドラッグカクテルが抜けた時の地獄を感じた事はある?」
痛み? そんな物で私が怯むと思ったの? いいかげん、頭にきた。殺したい、そういえば私、ガキは嫌いなんだった。いつでもどこでも泣きわめいて、助けを媚びて、あの頃の私を見ているようで、噛みつぶしたくなる。
「小鳥ちゃん、何言ってるのかな? ねぇ……足痛くないのぉ~」
「メア。何処からチェーンソーに削られたい?」
「冗談! 冗談だよ! はやく戻って手当しよっ!」
出たよクソガキの冗談。イジメもイタズラも取り返しがつかなくなってもその魔法の言葉だけで許されると本気で思ってるんだ。
「冗談?」
「そう冗談」
「喋るな……死にたくなければメアは私の言う事だけ聞けばいい。分かった?」
ジョワ……失禁しやがった。クソメスガキがっ! 二度とまともにトイレいけないように子宮とケツ穴潰してやろうか?
「……はい、殺さないで」
「いけ」
「えっ? 最後まで行って帰ってこい。そしてルートを全員に指示しろ。もし、クリアして戻ってこなければ後で私が殺す」
「でも」
「はやくいけぇええいい!」
「ひっ! いきます! いきますからぁ!」
私が横を通り過ぎる瞬間、ベルトコンベアを死にもの狂いで走るメアの姿。時折金属音がするのでなんとかサイを使ってメアは進んでいるのだろう。
方や私は戻る。
「小鳥ちゃん! 足」
「大丈夫、メアちゃんが今調べてくれているから。みんなよく聞いて、メアちゃんの言う通り進んでも失敗すれば死んじゃう。覚悟を決めてね」
二十分後。メアは戻ってきた。刃こぼれしたサイと、チェーンソーの刃に刻まれた身体に鞭うって、メアの指示通りに進んでいく。
が、残念ながら運動神経のないメスガキは4人命を落とした。私、かりん、穂乃花、メア、そしてもう一人の少女が四つ目の地獄に挑戦する。私はメアの耳元で呟く。
「死にたくなければ、このまま、
あれ? は?
ジョワジョワジョワ、さらにメアは失禁し、そしてその表情は喜んでいる。
「はい! 小鳥ちゃん」
あー、そういう事。
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