第22話 お待たせ、水着温泉回 ②穢水

ガリリ。

購買部でコーラ味の氷菓を齧るウチ、多々良白雪。


「おい、もう就寝時間だぞ」


 ライトを照らしながらウチにそう言うのは中等部の雨亜。その姿をみて多々良は嬉しそうに微笑む。


「雨亜先輩いけずやなぁ……ウチ待っててんでぇ」

「私をか? なんだ? 勉強で分からないところでもあるのか? それなら姉役の高等部の先輩に」

「ちゃう、ちゃうて! とりあえず雨亜先輩も何か喰いーや! 奢るやん!」

「うむ。なら、ハーゲンダッツのクッキークリームを頼もう」

「めっちゃ高いやついくやん! まぁええけど」


 自販で雨亜が所望するアイスクリームを渡すと雨亜はウチの隣に座り、嬉しそうにアイスを頬張る。ええぇなぁ。犯したい。前と後ろの穴同時に責めたらどんな時でも毅然とふるまう雨亜はどんなえぇ声で泣くんやろか? ウチに懇願するんやろか? それとも、我慢しはるんやろか? やばい。下がウエットになってきたわ。


「で? 私に話とはなんだ?」

「せやせや、ちょっと調べてみてんけどさ。小鳥ちゃん、今日”お泊り会”や」

「は? 退院者は一週間は”お泊り会”の参加はないんじゃないのか?」

「そもそも、そんなルール守りません。という事か、あるいは、ルールが変わったんかちゃうかな? この前の話がほんまやったら、この”お泊り会”卒業制作なんやろ?」


 雨亜は一瞬えらい怖い顔したけど、瞬間穏やかな顔になってこう言った。


「明日になれば分かる事だろう。小鳥が戻ってこなければ”お泊り会”だった。戻ってくれば”お泊り会”だったか聞けばいいじゃないか」


 案外冷静やな。それに小鳥なら生存してくると信じとる。もし、高等部に上がってあんなつまらん物作らなあかんのやったらやっぱり共闘する小鳥ちゃんは大事やな。あと目の前の雨亜。もし殺し合いになったら、十中八九不意打ち以外で殺せる気がせーへん。

 だから、犯そうと思ったら、雨亜先輩の両手・両腕が邪魔やなぁ。でもなかったらなかったでそそらへんし……考えもんやな。


「もし、”お泊り会”ちゃうかったら何してると思う?」

「そうだなぁ、案外温泉に浸かっていたりしてな。色んな種類の物があってな」

「佐賀の地獄めぐりかい!」

「多々良は温泉好きか?」


 そらぁ、ロリと裸の付き合いできて、犯しつくせるんやから、あれが嫌いなもんおらへんやろ。いや、ローマは病気が蔓延したとかで、風呂文化捨てたんやったっけ? 結果、風呂入らなくなった事で清潔さがなくなって伝染病流行んねんけどな。


「ウチ、大好きやで! 小鳥ちゃんが、地獄めぐりしてたらほんま嫉妬やわ」


–––– ––––


 雲梯を渡っていると稀にワニがこちらを見て飛び上がろうとする。水しぶき一つですら危険なそれ、私はカリンを前に進ませ何かあれば助けるという名目の人間の盾として彼女を使う。私のこの身体でも、落ちたかりんを踏み台にもう一度この雲梯に戻ってくるくらいの運動能力は備わっているハズ。それにしても、穂乃花の運動神経は中々のものね。この状況で3段とばしながら軽々と渡りきる。

 そしてダークホース。メアはまたしても何もせずにこの状況を楽しんでいる。サイだなんて武器どうやって仕入れたのか、この”お泊り会”が終われば聞きたいものだけど、今は関わらない事。


「かりん、大丈夫? きつくない?」

「うん、大丈夫。小鳥は?」

「私の事は心配しないで」


 かりんがなんとか端に到着。それに安堵した私には油断があった。かりんの触れた雲梯。汗で湿っていたのだ。


「きゃっ!」


 やってしまった……

 グン!


「チェリッシュ、大丈夫か?」

「あ、ありがと」


 私を救ってくれたのは、誰にでも優しい穂乃花。マジやばかったなと穂乃花は八重歯を見せて笑う。私はこのなんの損得勘定もない厚意が受け入れられず……

 むにゅ。


「ひゃっ! 何すんのさチェリッシュ」

「ごめんなさい。穂乃花さんの胸が可愛かったからつい」


 両手で自分の胸を隠すように穂乃花は恥ずかしがる。ギャルなのに処女なのね。今度、少しだけからかってあげましょう。またしても穂乃花は大声を出して躊躇する少女達に激を入れる。それに続こうとする少女達を止める一言。


「ねぇ、みんなぁ! 危ないよぅ! ワニさんに噛みつかれたら死んじゃうし、あの下の汚い汚水。ちょっと触れるだけで、手足が腐っていくんだよ? 危ないよぅ・・・・・・危ないねぇ」


 穂乃花を邪魔するのはメア。成る程、メア。あの子は猛毒ね。あの子は人の不幸が好きなタイプなんでしょう。そして多分、メアの一番の標的は・・・・・・


「ぐぬぬぬ! あいつ何言ってんだ! おい! お前等っ! そんな物飲むんじゃねーぞぉー!」


 怒る穂乃花。そしてそんな穂乃花を面白そうに見るメア。これはまた厄介なメスガキね。一度、死ぬか多々良あたりに身体中の穴という穴を犯されてオムツ無しじゃないと生きていけない身体にでもされないと治らないでしょうね。


「どうする? みんなあのドリンクチャンスする?」


 メアというメスガキは、ドリンクチャンスを失敗した姿を見せている。だから、あんなものに挑戦する他のメスガキ共はいない事を分って言っているんだ。先ほど、穂乃花の言う通りにした事で、メスガキの友人以外全員生存。

 あんな物を見せられたら皆雲梯に挑戦するでしょうね。

 で・・・・・・何か仕込んでるんでしょう?


「みんな頑張れぇ!」


 何もしらずに馬鹿な穂乃花は大きな声で応援。

 ほら、ほらぁ! メアが何かするわよ。手に隠してるけど、そんなど素人の隠し方で私にばれないと思った? 爪楊枝を飛ばす、ガキ向けの玩具に縫い針さして飛ばすなんて考えたわね。確かに中々悪くない凶器ね。


「痛っ!」


 ドボン!

 落としたぁ! そして、多分もう一人くらい、やるんでしょ? バシュン。あぁ、いいわね。メスガキが落ちるのに合わせて飛ばしたのね。でも丸聞こえよ。

 嗤ってる。馬鹿みたいに、自分がここを支配しているとでも思うくらいに、私はそうね。少し怯えている表情でもしておこうかしら?


「おい! 大丈夫か? ワニ! 気をつけろ・・・・・・おい!」


 ワニは餌を与えられていないんでしょうね。すぐに落ちたメスガキを襲う。


「いやぁ、あばばばあうぐぅぁああ」


 汚水が胃を満たされ、嘔吐とパニックの状態で息ながら捕食されるんですもの、助けを求める暇もないでしょうね。

 かりんは顔を隠し見ないようにする。穂乃花は青い顔をして、責任を感じているんでしょう。そしてメアは、嬉しそう。ほんと馬鹿な子ね。


「やっぱりダメだよっ! あのドリンク飲む!」


 これはブラフ、メアはドリンクの元に我先に走る振りをして、他の少女達を誘導する。そして、恐怖で馬鹿なメスガキ達は得体の知れないドリンクを飲む。三人、飲み干したわね。そしてメアは飲まない。


”ドリンクちゃーんす! 成功、三人はその場で待っててね! 他のみんなははやくはやくぅ! 雲梯、進んじゃいなよぉ”


 きゃははは! ドリンククリアしちゃったから、メア。かなり不機嫌じゃない。


「怖いよぉ」


 わざとらしくメアは雲梯をクリアしていく。私とかりん、穂乃花、そして穂乃花に続いた二人の5人。ドリンクを飲み干した3人。


「お願い、助けてぇ!」


 あら、一人は生きてた。でも肩を噛みつかれ、汚水をたっぷりつかった貴女の身体は生きながらに死んでるわよ。


「助けないと!」

「やめなさい穂乃花。もう手遅れよ」

「だって、生きてる。まだ、引き上げれば」


 パン!

 私は穂乃花の頬を叩く。何が起きたのか分らないという顔をする穂乃花、そして面白そうにその様子を見るメア。


「あの汚水に触れたら貴女や私達も大変な事になるわよ。ここにいる全員殺したいの?」

「でも・・・・・・」


 しかたないわね。

 ちゅ。


「チェリッシュ?」


 ちゅっちゅ・・・・・・ちゅぱくちゅちゅぱ。

 穂乃花の口内を犯す、かりんが嫉妬の目で穂乃花を睨み付け、メアは何が起きたのか不思議そうに眺めている。

 さて、この穂乃花はしばらく、弄んでおけばいいとして、残り七人。メアが何もしなければ・・・・・・


「きゃっ! やだぁ」


 何かしたわね。メアの表情。昔、見た事があるわね。蟻地獄にわざわざ蟻を入れてウズバカゲロウの幼虫に襲われる様子を見ているガキ共がいたわ。

 そんな目で汚水に落ちていく少女を見るメア。ワニに引きずり込まれる際は、玩具でももらった子供のように喜んで・・・・・・ほんと、どうしょうもない子ね。

 もがくメスガキ、でも二匹のワニに噛みつかれ、すぐに汚水を赤く染めた。メアがワニに捕食される少女をゆっくり眺めている間にその他少女達は雲梯をクリアし、ドリンクを飲み干した三人は天上から現れたゴンドラで私達の元に運ばれる。

全員で十六人。私はある物を汚水に向けて投げ入れ、そしてそれを昆虫採集のアレで・・・・・・ふふっ。メアに本当の捕食者の遊び方を教えてあげようかしら?

 ここで放送が流れた。


”ぴーんぽーんぱーんぽーん! 二つ目の地獄のクリアおめでとう! 普段のお小遣いの二倍になったよ! そーしーてぇー! 次の地獄をクリアしたら三倍だからね! 声出していこう! 頑張っていこう! それでは、第三の地獄はバラして遊ぼう! 鋸解地獄だよーん!”


 鋸解地獄がなんなのか私には全く分らないけれど、13日の金曜日に現れる怪人が逃げ出すレベルね。

 錆びたチェーンソーがそこら中で回っている。そして、足下はジャパニーズ・ベルトコンベア寿司みたいになってるじゃない。ここは本気で危ないわね。かりんも穂乃花も黙って見つめている。一人だけ、どうやってここで遊ぼうかと思っている子、メア。ちょっと背中を押せばすぐに人を殺せるでしょうこの環境。それでも勇気を出して穂乃花は言う。


「一人ずつゆっくりいこう!」


 それが正攻法でしょうね。ただし何が待ち受けているか分らないから一人目は決死隊になるけれど。皆、穂乃花の意見に従おうとした時、メアは言った。


「あれあれ? さっき穂乃花ちゃんがはやし立てたから二人、三人。さっき死んじゃったんだよ? それでも穂乃花ちゃんの言うこと聞くのかな? 穂乃花ちゃんさ、何があるか分らないんだから、そんなこと言うなら、最初に進んでみてくれる? 出来るよね? みんなリーダーになりたい穂乃花ちゃんなら」


 ここで穂乃花を潰しに来たのね。とりあえず私は他少女達に同化するように不安そうな顔をする。穂乃花みたいな馬鹿正直な子は・・・・・・


「分った、行ってみるよ」


 馬鹿・・・・・・ほんと、馬鹿ね。


「私も行くわ。二人で行った方がもしもの時に助け合えるでしょう?」


 もちろん、誰もみていないところで、穂乃花を犠牲にして命をつなげるならそうする為のフラグ。そして、友達思いの私を他のメスガキ達と、メアの想像を超えた対応で揺るがす為よ。そろそろ、本職の捕食者の立ち回りを見せてあげようかしら?

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