第17話 一番怖い動物はなぁ~んだ?
世の中には持っている人間と持っていない人間がいる。
持っていない人間は持っている人間に対して常に嫉妬し、そして羨み、搾取されて死んでいく。逆に持っている人間はその羨望の眼差しを受けさらに高い所へ歩みを向ける。
搾取された持っていない連中を栄養に、大きな幹をつけ、美しい花を咲かせる。
少なくともウチは持ってる側の人間やと思ってる。
だって、ウチのバディの雨亜。ライオンだろうとハイエナだろうと、襲いかかる動物をほぼ即殺しこの動物園を行軍しているのだ。
「なぁなぁ、雨亜先輩。ウチ等のこの名札どないなん?」
「ヒト科、ヒト属。人間。間違ってはないだろう。ここは私達も含めて動く物の園。動物園なんだろう。動物である以上、こちらの力を見せつけてやれば余程の事がない限り、深追いはしてこない。全員、固まって歩め!」
雨亜の指示は完璧やった。
一人でも多くの少女を生かそうと考え、雨亜を筆頭に中等部の女子生徒を周囲に配置、真ん中に小等部の生徒。適当に木を見つけるとナイフで槍を作り、それを配る。事実、ピューマ―が襲ってきても全員で突けば一たまりも無かった。
数の力、そして道具を加工して使う人間の強みを使った雨亜の作戦により、このサファリパークなのか、サバンナなのか意味不明な場所からの脱出はそこまで難易度が高くない。
「多々良だったか? 小鳥が心配か?」
「小鳥ちゃんなぁ~、あの子は簡単には死なへんよ。むしろ、水族館より一緒におるさくらっちゅー子の方がウチは気になんねんけどな」
「そうか……この学園、逃げ出せるのなら、お前たちは逃げ出した方がいいかもしれない。こんなイカれた事をする奴等がいるんだ」
アホな……こんなんウチからしたらタダの遠足や。
そんな事より、メスガキと好きなだけヤレるこの学園から逃げるなんてありえへん。
「さすがにそれは聞けへんなぁ~、ウチ、学校好きやねん! この”お泊り会”も含めてなぁ~ウチ。だぁ~い好きやねん! 飽き飽きする普通の日常になんか戻られへんわ」
これはすがに雨亜ぱいせんに嫌悪されたか? さぁ~てと……
「そういう考えの生徒もいるんだな……お前の考えに口出しする気はないが……今回は私の言う事を聞いてもらう。いいな?」
案外、雨亜はドライやな。まぁ、このメスガキ、アホみたいに強いし、ここは利害の一致っちゅーやつ!
「そらぁ~雨亜先輩の言う事は聞くに決まってるやんかぁ~! なぁ~、みんなぁ!」
ウチがそう聞くと、この猛獣達が闊歩する夜の楽園だというのに、少女達はカッコいい雨亜を見て頬を染めて声を合わせる。
「「はーい!」」
草食獣や肉食獣。様々な動物達を観察し、近寄ってくる猛獣は全員で撃退。それを繰り返し6割程進んだところで中等部の一人が提案する。
「ねぇ! お弁当を食べない? ここで体力をつけておいた方がよくない? そうでしょう? 雨亜さん!」
見るからに、私すっごい。みんなの事考えてるでしょう? 雨亜さん、褒めて褒めてぇ! の空気を出す雌豚やな。まぁでも腹減ったしその案も悪くないわな。
「うん、そうだな。そうしようか」
ランチボックスに入っているサンドイッチを食べながら先へ進もうとした時、雨亜が叫んだ。
「このサンドイッチ、食べちゃダメだっ!」
えっ? めっちゃ喰ったけど……なんでなん? 全員ざわざわと一口以上食べたサンドイッチを皆手に持ったまま雨亜の言葉を待つ、
「雨亜先輩、何で食べたらアカンの?」
このラムみたいな味のする肉が入ったサンドイッチ。トマトもレタスも普通や。ウチやから分かるけど、別に毒もなんも入ってへん。
せやったら……あとは考えられるのは……
「それは……」
そこは言えへんのかい! ならウチが言ったろか!
「これ、あのお菓子工場で作られた肉やな……まぁこれがお菓子ちゃうって言うんやったら、まぁ女の子の肉やな。さくらが歓びそうや!」
小等部の生徒達は理解が遅かったが、中等部のメスガキ達は気づいた。自分達が人食をやってしまった事。
げぇーげぇー、嘔吐するメスガキ達を見て、ようやく感のいい小等部のメスガキも泣きだす。普通に黙って喰わせておけば、ちょっと癖があるけど美味いサンドイッチで済んだのに……雨亜ぱいせん。あんまり素直なんも命取りやで!
グルルルルルル!
きた!
真っ黒な猛獣が近寄ってくる。涎を垂らし、焦点があってない。
胸を何度か叩くとそれは咆哮した。
「みんな! 隊列を崩すな! 槍を……」
もう無理やろ。ライオンより、凶暴で、そして賢しい巨大な猿。
マウンテンゴリラ。なんらかの薬物で興奮しているそれが突っ込んでくるんや。さっきまでの統率がとれてた状態でも厳しいのに、戦意喪失、ゲロ吐いて、泣きわめいたガキ共がすぐに立ち直れるわけはない。
まぁ、これまでやな。
マウンテンゴリラが振り回す腕、その破壊力や1トン近いやろう。それが直撃した小等部のメスガキは頭が陥没、大量の鼻血と共に絶命。そんな状況で悲鳴を上げる少女達、立ちつくし何も理解できない。
「お前たち! 逃げろぉ!」
雨亜ぱいせん、マジか……! イカれ狂ったマウンテンゴリラ相手に一人で立ち向かっとる!
これでほぼ間違いなく雨亜ぱいせんは死亡する。
このアホゴリラのおかで一人、小等部のメスガキが死亡。中等部の一人は大怪我や……、多分もう助からん。さっきから何度も血吐いとるし、内臓が破裂しとるやろ。あと二人負傷。ぶつかられた衝撃で頭が切れたメスガキと、足が折れとるメスガキ。全員死んだらお小遣いがぱーになる。しゃーないなぁ!
「みんな! 雨亜先輩が時間稼いでくれとるやろぉ! 怪我した子助けて、逃げるでぇ!」
ウチに発破かけられた中等部の女子二人が大怪我の中等部のメスガキを運ぼうとするからウチは言った。
「先輩ら、よう考え! その先輩はどう考えてももうアカンやろ? それより、頭怪我してる子の止血、そして槍として渡された棒を添え木に足折れてる子を」
自分のバディが殺されて泣いてる中等部のメスガキ。ウチの性癖をくすぐるベビーフェイスやん。
「先輩」
「ごめん、ごめんねぇ……私……」
ちゅ! そしてすかさず身体に触れる。強張る身体、ええなぁ~、スタンダードなテンプレの処女やぁ~! それもこんな野外で……せやせや、アウトドアで飯食うと美味いのは、身の危険を感じるかららしいねん。
きっと野外セックスが最高の気分になるのも、同じように……みられるかもしれへん、襲われるかもしれへん。そんな背徳感の中でメスとメスがえっろい匂い漂わせるんや。
あぁ~、最後までヤリたいけど……ここはウチの命を助ける方が先やな!
「先輩、少しは落ち着いたか?」
「……うん、貴女は?」
「ウチか? 多々良白雪。先輩は?」
「詩織。栗宮詩織……白雪ちゃん」
よっしゃああ! 肉奴隷げっとぉおお!
「ウチが……妹になったる。だから、あの子の分まで生きよ?」
「……うん」
とりあえず二人の……いや雨亜ぱいせんを含めて三人の死者が出たところで、ゴールまであと3割や。あと一人まで犠牲は出せる。最悪、手におえん猛獣が来た時は足折れたメスガキを
餌にするしかあらへん……せやけど、そんな勿体ない事ウチはギリギリまでせーへんで……ここにおるメスガキ全員ウチが喰いたいしなぁ。鞄の中にあるんは、釘撃機。アルミホイルで作ったテルミット爆弾二つ。そして……エタノールと水鉄砲にアルコールランプで自作した火炎放射器。
ぜぇんぶ。子供騙しやけど、火みたらビビる獣にはそれなりに有用やろう。ウチは食べかけのサンドイッチを食べる。まさに体力勝負やさかいな!
「白雪ちゃん、それ……」
「人間の肉がなんや? 喰って生きられるか、喰わんで死ぬかや! 空腹で倒れましたぁ! 獣に喰われましたぁ~やと本末転倒やろ?」
ウチはオヤツもサンドイッチも全て平らげる。きっと全部少女の身体の部位が使われている喰い物。ウチのその様子を見て他の少女等も栄養補給を始めた。
これはほんまに、餓鬼道? 修羅道? それとも人間道? ちゃうなぁ! 少女が少女の肉使って作られた食い物たべてるんや!
これは究極の百合道やんか!
そんな究極の百合道を進むウチ等の前に現れた巨大な象。世界最大の陸上猛獣。アフリカゾウ。当然、薬物でイカれ狂っとる。
さて、なんとか出来るか? ウチは勘違いしとった。いや、薄々感じ取った。こんなイカれた象とか、”お泊り会”にしてはぬる過ぎへん?
ズバーーーン!
一瞬何が起きたんか分からんかった。アフリカゾウの眉間を貫通するフルサイズ弾。ライフル銃や!
そして……
バン!
ウチの横で真っ赤な血が舞った。中等部の一人の頭が弾かれた。狙撃手は多分一人。続いて頭を怪我した少女の胸に大きな穴が空く。
「あかん! 皆散会や! 固まっとったら全滅やでぇ!」
ここは動物園や……そう、ハンターが狩りをしてもええ動く物を射殺する園。肉食獣に草食獣、そして雑食の人間まで狩れる。
おもろいやないか……
ウチから、ロリを奪った代償。高こぉつくでえ! 昔、どこぞの国のキチガイがこう言うたな! 世界一危険な獣はなにか?
それは……
「銃を持った人間や!」
ウチは釘撃機を鞄から取り出して、狙撃手を探す。男やったら、ナニと精子工場食わせたる。
女やったら、下半身の穴にこの釘ブチ込んでイカせたる。
「狩ってええんは、狩られる覚悟がある奴だけやぁ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます