第16話 珍しい魚のお勉強

 バスが目的地に到着すると運転手に起こされ、バスの出口はそのまま……水族館につながっていた。

 入口を入るやいなや、入口は巨大なコンクリートの壁で塞がれる。ここから外には出られない事を確信した上で私達は通路を歩く。色とりどりの魚たちが泳ぐそこは確かに綺麗で、拍子抜けだった。


「わぁ……」


 少女達は先程までの恐怖がなくなったかのように水族館を堪能する。

 そして信じられない看板を見る。


”出口はこっち、バスを用意しています”


 すぐに出口があると言う。半信半疑で私達はその扉を開けた。


「えっ!」


 そこは大きなプールのような生簀だった。水は濁っていて中が分からない。人食いサメでも入れているのかしら?

 そして、遠くに出口らしき場所と……出口と繋がった通路にバスの姿が……


「本当にあそこが出口なんだ……でもこれ絶対何かあるわね」


 さくらのバディの中等部の女子がそう言うので、さくらは半笑で頷く。誰しも見えている所に出口があるのならと、この生簀を泳いで渡ればいいんじゃないかとそう考える。


「ちょっと、いいかな?」


 中等部の短髪の女子が提案をした。彼女は水泳部なんだという。


「距離にして100メートル。何もなければ1分、いいえ私なら50秒で泳ぎ切れる。私が泳ぎ切ってあそこで待ってるから、ロープか何かを使ってボートのようなもので全員を引いてあげる! どうかな?」


 どうかな? と言われてもロープもないし、そんなボートのような物がうまくあるとも言いがたい。

 が、さくらだけは違った。

 パチパチパチパチ!


「凄い! 是非にお願いするぜ! みんなもこの先輩に拍手」


 さくらは見たいのだろう。

 この少女がどんな風に死んでいくのかを……だが、私もある程度のリスクヘッジの為にここでの犠牲は賛成だった。

 この生簀がブラフという可能性もあるし……私はさくらに乗った。

 パチパチパチパチ。さくらは私を同類を見るように喜ぶ。それに倣って他女子達も拍手をする物だから調子にのったこの少女は準備運動をはじめ、そのまま服を脱いで鞄に入れると生簀の中に飛び込んだ。

 ブシュン!


「痛っ!」


 対物センサーにひっかかって何かが飛び出した。そしてそれは水泳部だという先輩に突き刺さる。


「先輩!」

「大丈夫、大丈夫! なんかトゲみたいなのが刺さっただけ、よーしいくぞ」


 皆全員、そのトゲから出る血に引き寄せられて巨大なサメがと想像していた。

 が……事態は私や他少女が想像しているよりも遥かに残酷な生き物がこの生簀の中には飼われていた。


「痛い痛い痛い痛い! 何これ! 傷口から中に入ってくる……いやぁあああああ!」


 泳ぎが達者なハズの先輩が溺れるように助けを求め、そして痛がり、血が広がりぷかぷかと浮く。されど小刻みに動く先輩の身体。今なお何かに捕食されているのだろう。


「カンディル」


 カロンだったか、私の隣でそう呟いた。何を言っているのかと思ったが、念のために私はカロンに聞いた。


「カロン先輩それはなんです?」


 カロンの発言には誰も反応しなかったのに、私がそう言うだけでカロンは注目される。それに少しだけ戸惑いながらカロンの説明を待っているので小さな声でどもりながらカロンは語る。


「くっ……あまぞん、つう、通販サイトじゃない……方の大きな川に……いる殺人魚、尿道や……小さな傷口が……あれば大群で生き物を……中から食い殺す……海にいる。クッキーカッターシャークみたいな……魚」


 そうらしい。

 全然知らないけど、アマゾンなんてピラニアとかが一番ヤバいとい思っていたけど、上には上がいるのね。そしてさくらがいまにもオナニーをしそうなくらに興奮している。

 生きながらに内部から捕食されるのだ。それは死に方としては実にクソッタレな死に方だろう。

 ここにきてこのカロンの株が大きく上がる。なんせその生態を知っている唯一の人物なのだ。


「カロンさん、どうすればいいのかしら?」


 そう聞くのは、さくらのバディ。名前を鈴原エミリ。こんな場所じゃなければどうやって私の女にしてやろうかと考えるところだけど、今はそれより、この状況の攻略手段。それはカロンにかかっている。


「非常に……獰猛。泳いで渡るのは、普通に無理……ボート……とかがいる」


 そういう事なのだ。今だ水泳部の先輩の死体を喰い散らかしているカンディル。そこまで大きな魚ではないが、この生簀には信じられない数のそれらがいるのだろう。


「まずは敵を知らねぇとな……」


 さくらが生簀の前に立つと手をかかげる。すると赤外線のセンサーが反応し、さくらの手を貫いた。滴る血に反応して、カンディルが集まってくる。


「うっはー! きめぇ! で? どんな姿してんだよカンジュウロウ君はよぉ! でっかい精子みてぇじゃんよぉ!」


 ビチャ!

 さくらが素早く水をすくい、少女達が待機しているところに何匹かのカンディルを見せた。不気味な姿をしたカンディがびちびちと刎ねる。それに少女達は悲鳴をあげて逃げ惑う。そんな様子を気にもせずに、さくらはたださくらを見つめるカロンにこう言った。


「なんだよ先輩?」

「貴女、正解。カンディルの事。日本ではカンジュウロウと呼んでいる」

「お、おぅ」


 この状況で水生生物授業を展開するカロン。それに、あのさくらの目が点になる。ウケるぅううう!

  案外こういうタイプの弱いのかしら? ただ、笑ったところでこの攻略が出来ない。そんな状況を仕切ったのはえみりだった。


「とりあえず、出口は分かったんでしょ! なら、この生簀をクリアしないとダメでしょ? それに、時間制限もありそうだしね。エミリ、こんな所で死ねないし」


 エミリが指さした先にはタイムリミットを意味するデジタルな数値がカウントを表示していた。


「いくわよさくらちゃん」

「あぁ、せーんぱい」


 さくらが黙って従っている。エミリ達は生簀とは別の扉の先に進んでいく。エミリの抜かりの無いところは、自分ではない者を先に行かせる事。とりあえず私達もと思ってカロンの手を私が繋ぐとカロンはすぐに私の手を離した。


「カロン先輩、手繋がれるの嫌なんですか?」


 この学年一の美少女である私と手を触れるのが嫌とか病気か? だが、カロンは斜め上の事を私に言った。


「わた、私を素手で触ると……手が荒れるか……やめた方が、いい」


 は?

 何いって……カロンの身体は黄疸のような物が出ている。何この子? 本当に大丈夫なの?


「先輩、その身体……」

「大丈夫、慣れてる……から、自ら、こんな身体に……した」


 あー、認識を切り替え。このカロンも私やさくら、多々良、それに雨亜とは違った。気狂いの一人の可能性がある。


 このカロンとセックスがしたいかと聞かれると全くそんな事はないのだけれど、変な知識といい。

 使えるものは使おう。


「死なないでくださいね。カロン先輩」


 私の乙女の笑顔。これで落ちない雌ガキはいないのだけれど……くっそ、カロンは落ちない。されど、少し笑った。


「いい子……ですね? 小鳥さん」


 なんだかさくらとは違うけど、変な気分になるわね。このカロンと話していたら。


「きゃあああああ!」


 先を進んだ連中から叫び声が聞こえる。走って飛び出してきたのはさくら、そしてエミリ。私とカロン、そしてもう一組のバディのいるところにくるとエミリは顔面蒼白。さくらは満面の笑顔。


「何があったの?」

「はやく! 閉めなさい! その鉄格子のシャッターを下ろして!」


 エミリがそう言って下ろす鉄格子。扉をガンガンと叩く今だ生きている少女達。だがすぐに、ぐしゃっとこ気味のいい音と共に騒ぎ声が消えた。


「多分、薬で頭のイカれたゾウアザラシが大暴れしてやがる。 もう何も探しにいけねぇわな。俺達を見るやいなや襲いかかってきた。そりゃあもうブチって潰された奴が綺麗で、綺麗でよぉ! これ、なぁーんだ?」


 さくらが見せたのは少女の小さな耳。どうしてそんな物を持っているのかと思ったらご丁寧に説明するさくら。


「何してるのよさくら・・・・・・」

「いやぁ、あのゾウアザラシ、私が死んだ女の子をレイプする暇も与えてくれなくてさぁ! しかたないから、目の前で転がってた子の耳だけ持って帰って来た。はぁ~やっべぇ! すっげぇいいにおい」


 少女から切り取った耳の臭いをかいで、そしてさくらはそれを口に含む。

 ちゅぱちゅぱちゅぱ、ぐちゅぐちゅぐちゅ、そしてさくらはうっとりとした顔をして口内から少女の耳を取り出す。


「んまぁああい!」


 それに嫌悪するのはエミリ。そしてドン引きするバディの少女達。私と、カロンだけが何も感じないようにそんなさくらを見つめていた。


「この時点でお小遣いはもうあと二十パーセントしかないじゃない! 最悪っ! エミリやる気なくなってきたんだけどぉ! カロンさんと斉藤さん、何か考えなさいよぉ! エミリは高等部に行くのぉ! 死なないのぉ!」


 はぁ……ダダをこね始めた。ややこしいメスガキだなおい。それに斉藤と呼ばれたメスガキはなんとかエミリを落ち着かせようとあやすが一向にエミリの癇癪は収まらない。そんなエミリの前にさくらが立つ。


「何よぉ! アンタ凄い気持ち悪いんだけどぉ」

「そうか? エミリ先輩はすっげぇ可愛いよな?」

「……あたりまじゃない! エミリは、アンタ達とは違うの! 選ばれた生徒なのっ! 高等部のフェリシア先輩や、フランチェスカ先輩みたいになるんだから!」


 フランチェスカ? 私の性玩具じゃないか! 嗚呼、私の性玩具みたいになりたいという事か? そんな冗談を考えて私が嗤っていると、さくらがやりやがった。


 ブシュ!


「えっ?」

「もっと綺麗にしてやんよぉ! エミリせーんぱぁい!」


 出刃包丁で首を切り、立て続けにさくらはエミリの腹部に出刃包丁を差し込み回した。膵臓、脾臓、腎臓。あらゆる臓器をズタズタに切り裂き、エミリは声にならない悲鳴を上げる。そしてさくらは性的興奮でスカートを濡らし、痛がるエミリの髪の毛をひっぱって、カンディルのいる生簀へと向かう。


「俺さぁ……あの魚に体内犯されて殺されていく姿を見てさぁ……芸術を見たんだぁ! エミリ先輩もたのんまぁす!」


 エミリは助かるハズもない大怪我なのに、あの死に方だけはしたくないと泣き叫ぶ、


「じゃっ! おねしゃす! えみりパイセン」


 ドボーンと音がしたとおもったら、生簀の中にいる大量のカンディルが集まってくる。まだ生きたままのエミリの身体の中を食い破りながら入っていく様子をみて、さくらは絶頂を迎えた。


「あっ……あっ。あふぃん。イクぅぅうう!」


 それをぼーっと見つめるカロンをみて、私はお小遣いが完全に無くなった事にやや閉口した。動物園組はうまくやってるかしら?

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