第15話 動物園と水族館どっちが好き? それとも社会見学?
「多々良、足の具合はどう?」
「心配してくれるん? 嬉しいわぁ~、せやなぁ・・・・・・8分くらいはちゃんと動くでぇ」
多々良は完全な状態じゃない。場合によっては切り捨ても考えないとダメね。そろそろ、私が”お泊まり会”に呼ばれる頃合いだと思うし・・・・・・図書室で本を借りるフリをして多々良と現状の情報交換。とりあえず、何も本を借りないのもアレなので若草物語と書かれた反吐がでるクソみたいな四人姉妹の物語が書かれた内容の本を図書委員の下へ持って行く。
「「あっ!」」
図書委員として貸し出しする場所に座っているのは、つい一週間ほど前に、愛しの薫子様を屋上から突き落とした芳乃、フルネームを黒川芳乃。
「貴女はグースパンプスの方がお似合いじゃないかしら?」
「そうですか? 次回は芳乃先輩のオススメするその本を読ませて頂きますわ」
私を睨み付けながら芳乃は貸し出しカードに判を押す。 私が図書室を出ようとした時、文学少女達が芳乃の元に集まってくる。そう、今では貴女がお姉様なの? 死んでしまった薫子はもう二度と知る事ができないんでしょうね。貴女が芳乃に嫉妬していたように、芳乃もまた薫子に嫉妬していた。
ほんとぉ、気持ち悪い。
「多々良、じゃあまた早ければ今晩に」
「せやね。おばんですぅ~」
何語? 多々良の鈍っている言葉に突っ込んだ事がないから分らないけど、たまに理解できない単語を使うの、どうにかならないかしら。私はお昼休み前の最後の授業の準備をしていると、ゆかり先生が教壇の前に立って手を叩いた。
「良い子のみなさぁ~ん! 今日は、指宿ローラちゃんが入院から戻ってきましたぁ! 拍手!」
いちいち、巨乳を揺らしやがって、犯されたいのか? ゆかり先生。そのローラちゃんより、ゆかり先生としっぽり愉しみたいんだけれど・・・・・・中々機会が訪れない。頬杖をつきながら、ローラちゃんとやらが入ってくるのを待っていると・・・・・・
おいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおい!
「ポニータちゃん・・・・・・っ!」
おっと誰にも聞かれていないな? 周囲の皆の拍手の音で私の独り言が聞かれる事はなかった。ローラちゃんは身長160cmはあるんだろうか? 私より20cm近く大きい。そして、その体つきやフランチェスカ達高等部の生徒に劣らない発育。
私がこの世界で目覚めて最初に決めた目標。このポニータちゃんと一発ヤル事。色んな事がありすぎて、というかフランの身体を弄ぶ事ばかり考えていて忘れてた。
確かに、このメスガキいないなぁ~とか思ってたけど入院してたとはな。私がローラをぼーっと見ているとローラーは私の近くまでやってきた。
「小鳥ちゃぁあ~ん! 会いたかったっよぉお!」
あぁ、このメスガキも私にべた惚れしているタイプだとそう思っていた。私の手を握りながらそのわがままな乳袋をゆらしてローラは甘い声を出しながら私にだけこう呟いた。
「なぁ~んだ。まだ生きてたの?」
は? なんだこのメスガキ、嗚呼そうかそうか、私というかこの小鳥は元々虐められっ子だったか・・・・・・
ローラ、どんなメスガキか知らないけど虐める楽しさを知ったなら。虐められる快感を教えてやらないとダメだよな?
「だめだよね?」
「は? 何言ってんの」
ローラはそう言うと自分の席に座り、周囲の女子達にとてもいい顔をして対応をしていた。ローラとそういえば一緒に写っていたのは・・・・・・遠くからローラを睨み付けているロリ。奈々だったかしら? 私と奈々とローラ。その関係性が全く見えてこないけど・・・・・・まぁ、どうでもいいわ。私は私の性欲を排泄できればそれでいいし、ローラは私の欲求を満たせるに足る少女なのだから。ローラは休憩時間も食事時間も私に絡んでくる事は無かった。
以前の私がどんなだったか知るよしもないが、今の私がクラスはおろか、学年はおろか小等部の垣根を越えて人気の美少女なのだ。警戒しているのだろう? 今まで雑草を踏み潰すようにいじめまわしていた私が、別人のように振る舞っている事を・・・・・・分るぞローラ。はやく犯してぇ。
私はあえてローラの前で、アリサと仲良くし、多々良に抱きついてみたり、学園みんなの王子様である雨亞にやたらと話しかけて甘えてみたり・・・・・・統率者が既に変わっている事を肌で感じ取ってもらう。
そんなローラがとても嬉しそうに嗤ったのは・・・・・・
「はい、今日はこのクラスからも”お泊まり会”の参加者が決まりましたぁ!」
ゆかり先生はそう幼い表情で言う。そしてこう付け足した。
「黒川ローラさんは病み上がりですから今回の”お泊まり会”は見送りです。残念ですね? ではこのクラスからは、小鳥・チェリッシュ・イレブンさん! そして・・・・・・」
ローラは人気者である私が”お泊まり会”に行き、ここから消える事を喜んだのだろう。ローラの知っている私がどんな少女だったのか、想像にたる人物像だけれど・・・・・・いいわ。今回の”お泊まり会”で生き残った後に貰えるお小遣いでオムツを買ってあげる。それがないと垂れ流しになるくらい、滅茶苦茶に愛してあげるわ。
「ローラちゃん、待っててね?」
「死ねよ・・・・・・混ざり物。バーカ!」
私の耳元でそう呟き、クラスメイトと共に教室を出て行くローラ。混ざり物、混ざり物? ハーフという事ならローラもそうだろう? そうじゃない? なんの事やら知らないけど・・・・・・そろそろ意識が保てない。ほんと、”お泊まり会”ってなんなんでしょうね。このガス、本当に気持ちいい。今度は何をさせられるのか・・・・・・
私はそんな事を考えていたら、私をゆるす誰か・・・・・・もう、この微睡の中から自分で起きるのが気持ちいいのに・・・・・・私が目を覚ますとそこは・・・・・・
「何ここ?」
「どうやら映画館のようだな」
「雨亞先輩」
私の隣には学園の王子様、私からすればコカローチ食いのえんがちょが座っていた。総勢一クラス程だろうか? 二十人弱の少女達。それは小等部と中等部で構成されているようだ。そして・・・・・・
「多々良もいるわね」
多々良は耳ざとく私の声を聞いたのか手を上げて意思表示をみせる。今回は映画館で何? ホラー映画でも見せてくれるのかしら? そんな皆の期待と不安の中で上映が開始された。
それは、そこで見ている少女達は悲鳴を上げる。
それは私達と同じくらいの少女達が物のように腹をかっさかれ、臓物を取り出される。腕に繋がれたチューブからはどう考えてもありえない量の血液が抜かれている。また別の少女は背中に雑に突き刺さったチューブより髄液が・・・・・・
恐らく、どこかにリアルに存在している臓器工場なんだろう。これはさくらが見たら喜びそうな光景だ
「おいおい! 何だよ! ご褒美じゃねぇか!」
さくらもいた。
全く興味のない多々良は欠伸をしてつまらない映画を見るように見つめ、私の隣にいる雨亞は静かな怒りをため込んでいる。
そして画面は変わる。
笑顔の仮面をつけた人物がボイスチェンジャーで声を変え私達に話しかけてくるのだ。よくできた教育映画だこと。
『よい子の聖リーパー学園のみんなぁ~、今日はみんなの卒業式前に社会見学に行く、お菓子工場から中継しているよ! 美味しそうなお菓子だね? ここは角膜を外しているところだね? 綺麗だね! 凄いねぇ! じゃあ別のフロアを見てみようね!』
もう既に嘔吐している生徒達。こんなの私からすれば言葉通り養豚場と変わらない。むしろ、臓器工場を作るために次々に端金をもらって子供を産みまくるスラムの雌豚たちと大して変わらない。
次に仮面の人物が来た所・・・・・・そこは目と生命維持に不要な臓器を失った少女達が雑に寝かされ生命維持装置に繋がれている風景。ここで死ぬまで血液と髄液を抜かれるのだろう。そしてもちろん、残った骨と皮は・・・・・・・
『ここにある豚の残りカスは組織バンクに使われるから、何一つとして無駄にならない。凄い事だね! ここでみんなに会える事を楽しみにしているよ! じゃあ今回の”お泊まり会”の本題にいこうね! 小等部のみんなは中等部のお姉さんを見習って欲しいの! もうえーんえーん! って泣くだけじゃなくて自分で解決する力を持って欲しいな! ここには小等部のみんな10人、中等部のみんな10人。計二十人がいます! 小等部の生徒と中等部の生徒は抽選でバディを作って遠足に行ってもらいます! 動物園と水族館! 楽しみだねぇ! 嬉しいねぇ! 陸の動物も海のお魚も可愛いもんね! みんなの椅子のカップホルダーに番号と海か陸かが書かれているから見てね! 陸のバディーは左の出口から、海のバディは右の出口からバスに乗っていってらっしゃい!』
私は・・・・・・海。できればバディは隣の雨亞がいいのだけれど・・・・・・コカローチを平気で食べるえんがちょだけど、生存能力にかけてはこれ程までに心強い相棒もいないわ。
「雨亞先輩はどっちですか?」
「ん・・・・・・動物園。水族館が良かった」
そんな可愛い顔で惜しそうに言われても・・・・・・それに”お泊まり会”で行く動物園や水族館がまともな場所のわけがないじゃない。どうせサファリパークに放り出されるか、海の真ん中に放置されるとか、そんな狂った事しかこの”お泊まり会”を考える連中はできないんだから・・・・・・
同じ数字のバディ達が集まっていく。
あっ・・・・・・多々良、雨亞とバディじゃない。なんて強運なの・・・・・・かたや水族館組には・・・・・・
「小鳥ちゃんじゃねぇか・・・・・・! 今回、何人死ぬんだろうな?」
最悪。
死体愛好者のさくらと同じ。さくらのバディは、巻髪のお嬢様系の女の子。雨亞を覗けば一番私がそそる少女じゃない。なんなの・・・・・・それに対して私のバディ・・・・・・
「えっと、小鳥です。先輩は?」
「カロン」
ボサボサの髪に、あんまり栄養とっていないような体つき、これじゃあすぐ死ぬでしょ。全くさくらとかいう未知数の獣と一緒に行動しなければならないんだから、弾よけくらいにはなるんでしょうね?
私達が全員右側と左側にバディと共に集まると最後の放送が流れた。
『みんなぁ~、今回はお小遣い。連帯責任制だよ! 五組ずつで遠足を愉しんでもらうけど、何かイレギュラーでリタイアする人がでたら一人リタイアする事に20%お小遣い減。五人リタイアでお小遣い0円になるから、協力して愉しんでね! だって・・・・・・遠足は、帰るまでが遠足だからね! 300円分のおやつとお弁当と・・・・・・特別にカルピスの入った水筒を持って、いってらっしゃい!』
カルピスって何?
「マジで! カルピス飲めるのかよっ! 最高じゃん!」
さくらが一人でそう騒ぐので、私はさくらに聞いてみた。
「カルピスって何?」
「小鳥ちゃん、知らねぇのかよ! 白くてドロドロした原液で飲んでると喉の奥で固まる白濁の液体じゃん」
何それ・・・・・・それってアレじゃないの? あの男のアレから出てくる・・・・・・えっ? 罰ゲーム?
渡されるリュックサック。中身は本当に食べ物と水筒しかない。私や、多々良、それにさくら他、”お泊まり会”に慣れている生徒達は自らが用意した道具をリュックサックの中に入れて出口を出た。
「空港のシャトルバスみたいね」
ここが何処かを絶対に知らせようとしない仕掛け、バスの席に座ると、運転手はガスマスクをしている。ここでもハロタンのようなガスが車内を包み、私達の意識は消えていく。絶海の孤島でもなんでもいいけど、いい加減。脱出する方法でも考えようかしら・・・・・・いや、私からすればこの学園は楽園だった。少々頭の狂った”お泊まり会”がある程度の・・・・・・そうして私達は水族館という遠足の代名詞に向かうのだった。
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