第12話 鬼ごっこの終わりと古代の工作を電動ドリルで
確実に邦彦は死にゆくハズ。
されど、うめき声をあげながら立ち上がった。焼け爛れ、肉の焼ける臭い。身体の脂肪がこの怪物を守ったのか、私には科学的な事は分からない。
だけど、今の邦彦であれば確実に殺れる。
「くーにーひーこーくぅーん! その下の汚らわしいフランクフルト、ちょおーーだぁい!」
そう言って多々良はピアノ線をワイヤーのように取り出すと、輪を作って邦彦に向かっていく。
邦彦が多々良を捕まえようとする中。多々良は猫みたいな身のこなしでそれを避け。
多々良はピアノ線を邦彦の異常発達した性器に向けた。
きゅっっと音がしたかと思うと、ブシュッと何かが切れる音。邦彦はちょっと痛いとそう思ったのだろう。そして痛みを感じる象徴に触れ、そして本来あるハズの物がない事に気づいた。
「ふっ・・・・・・ふごぉおおおおお! ううん! あぁああああ!」
怒っているのか、苦しんでいるのか分からないが、多々良が地面に邦彦が探している物をポイと捨てた。
「きったなぁ~、邦彦君。喰いぃや! アンタの身体から切り離して自分で咥えられるようにしたったで」
多々良の言っている意味を邦彦が理解しているのかは分からないが、邦彦は自分の大事な身体の一部を眺め、眺め・・・・・・眺め。
慟哭。
「あ゛あ゛ぁあああああああ! ぬぁああああああ!」
両手を振り回し、多々良に襲いかかる。それは捕食する為じゃない。恐らくは怒り、殺意、憎悪。
そう言った動物的な単純な感情に違いない。が・・・・・・私はそんな邦彦を見てため息をついた。
「自分の性器を切り取られたくらいで、そんなに怒るの? 少しだけがっかりしたわ」
私は鑢を構えると確実に邦彦の頭を貫く為タイミングを計る。私の言葉を聞いて多々良は再びピアノ線を邦彦に向ける。
「せやね。殺してええのは殺される覚悟がある奴だけやで? どうせやから、邦彦君の精子工場も切り取ったろか? いっちょ前にでっかい玉ぶらさげよって、きしょく悪くてたまらんわ。せやせや、一度聞こうと思っててん。殺される瞬間、小鳥ちゃんはどんな感じやった?」
本当にくだらない事を聞く。そんな事、聞くまでもないでしょうに・・・・・・
「もっと女の子を抱きたかった以外考えた事ないわ」
「あっはっは、せやな! ウチもや、だから・・・・・・邦彦君。往生際悪いわ」
邦彦は本能の赴くままに少女達を捕食してきたのだろう。彼がどんな家庭環境にあり、何故ここまでの暴食を繰り返せたのかは知らないが・・・・・・今、邦彦は私と多々良、多分多々良の方に激しい恐怖を抱いている。
「・・・・・・うぅうう・・・・・・ううぅううああああ!」
「うるさいっ! 黙りや。もうアンタの鬼のターンは終わりやねん。耳か? 鼻か? そぎ落として、目くりぬいて、邦彦君にありとあらゆる。恐怖と痛みっちゅー喜びを与えたるからな」
動物は捕食しようとして襲いかかる。そして恐怖しても襲いかかる。が、その恐怖が頂点に達した時・・・・・・逃亡する。
「あぁああああ!」
「終わりやな」
始めて会った時とは比べものにならない鈍足の邦彦に私は鑢を向けて焼けただれた背中に突き刺した。私の力では中々奥まで差し込めない。だけど、致命傷を与える事が問題じゃない。
「ああああぁあああ! ああぁああああ!」
痛い。それは邦彦の恐怖を煽る。そんな邦彦の行動と反応を見て下品に笑うのは多々良。多々良はイジメという事に関して事異常なまでの執着性を見せる。
「どれみふぁ、そらしどぉ~」
多々良は歌う。それは中々に綺麗で透き通った声だった。歌う多々良に邦彦をぴたりと止まって何事かと反応を待つ。歌いながら多々良は邦彦の前までやってくると、手の中のピアノ線を見せ。それで邦彦の耳をそぎ落とした。
「どはどーなつのど! レはレイプのレェ~」
歌いながら右、そして左。自分の耳が落とされた事。痛みではなく恐怖。捕食されているという事。扉の奥に逃げようとする邦彦を私は追いかけ、足首と太ももに深く鑢を差し込む。それを何度も何度も神経をずたずたに切り裂けるように。邦彦の歩行能力を奪うと多々良は呻く邦彦を放置して多目的室にある工具類の中から電動ドリルを見つける。
「あったあったぁ~! ええのがあったわ! 一番でかいドリルやな。邦彦くぅん。すぐに新しい刺激を与えたるから、ちょっと頭に穴開けさせてぇな?」
私は多々良がこの電動ドリルを用いてこの怪物を殺害するものだとばかりに思っていた。そう、私は多々良の深層心理に持つ、いいえ。元々の異常なまでのサディズムのポテンシャルを見誤っていた。
ギュィイイイイン! と音を立てて邦彦の頭にドリルを向ける多々良。
「うぁああああああ、いあああああ」
「うっさいなぁ、静かに黙って言うことききぃな!」
そう言ってもう片方の手にも持つ電動ドリル。こちらは大きなマイナスドライバーの先が取り付けてあった。それを邦彦の口の中に放り込む。
「あはははは! 口ん中ぐっちゃぐちゃやなぁ! でもまだやで、邦彦君の頭に穴あけたら、おもろい事起きるかもしれへんからぁ」
私は、あまりにも多々良の異常性癖に魅了されていて、気づくのが遅くなったが、多々良は邦彦の頭に穴をあけているのは殺す為じゃない・・・・・・
古代はインカ帝国から中国、エジプトと行われてきた手術。私のステイツでも精神病患者に行われた事が何度もあったと聞く。
そして・・・・・・私がジュリアと呼ばれた戦士だった頃、同じ兵士が捕虜にしたテロリストを使って同じ実験という名の遊びを行っていた事を思い出した。
穿頭術。トレパーネーションとか言うれっきとした手術を今行っている。
なんの為に? まぁ、頭のいかれた多々良の考えている性癖については私は知り得ないが・・・・・・多々良が開けた頭蓋骨部分に向けてこの鑢を叩き込めばそれで終わり。
気が済むまでおやり、七人、いいえ八人もこの化物に食べさせたわけだから、徹底的に処刑でもしたいのでしょう。
「小鳥ちゃん、上手くいけばおもろいもんが見れるでぇ!」
と、多々良は巨漢の男の頭に電動ドリルを向けているというシュールなポーズでそう言っているのだけれど・・・・・・本当に奇跡が起きてしまった。
「あぁあああああ・・・・・・痛っ・・・・・・なんだ? 口の中もぉ、痛い痛い痛いっ・・・・・・なんなんだよぉ痛っ」
痛みにのたうち回る邦彦、いいえ。そんな事よりあの獣のような邦彦が喋った。トレパーネーションは薬物ドラッグと似たような効果を物理的に与えるという事を聞いた事がるけれど、どう考えても死にかけている邦彦の意識が覚醒した。
それはなんと言うか・・・・・・
「最高の極刑ね」
「やろやろ? どうせその火傷や。あと30分足らずでおっちぬねんから、ウチに本来なら愛でられるハズやったロリ達への祈りの時間や」
しかし、クール病? プリオン病? そんな物が結構進んでいた邦彦が意識を回復するまでに至るなんて、トレパーネーションって一体何?まぁやりたいとも思わないけれど、私がとどめを刺す必要もないのかしら?
そんな時、邦彦が苦しんでいる目の前の扉が開かれる。
「なっ・・・・・・」
多々良もそれは想定外だったらしい。私は予想の一つとして考えていたけれど・・・・・・本当にメスガキは言うことを聞かない。柚希と言ったか? あの仕切りたがりで、元気だけが取り柄の少女は何の役にも立ちはしない果物ナイフを構えて震えながらこう言った。
「た・・・・・・助けにきたよ」
ほんとに、誰が? 誰を助けるというの? 貴女が今できる事は、痛みに苦しむ怪物のサンドバックになる事くらいなのに。
「いてぇ・・・・・・お前だけでもぉ」
ほら、徹底的な恐怖を多々良が与えても、人間はより弱い生き物を見つけるとそれに向けて攻撃的な本能を見せる。それに下唇を噛み、多々良は柚希を助けた。
「何してんねん。このアホガキがぁ! おどれが来ても足でまといなんや! なんで分からへんねん。ボケぇ!」
ゴキっ!
いい音だった。邦彦が多々良の足を掴み、それを軽々と折って見せた。多々良は激痛のハズなのに、声一つ上げずに折られた足を捕まれ持ち上げられる。
「よぐもぉ、お前だけは、絶対にころじでぇ・・・・・・」
私は助走をつけると、邦彦に向かって走った。狙うは多々良が開けた邦彦の額の穴。死になさい。化物。
私が走り込んでくるのを知るや邦彦は頭を下げた。
ガスっ!
「じゃらを、するんぁああああ」
邪魔をするなとでも言いたいのか? また言葉の滑舌が悪くなってきている邦彦。彼が意識を取り戻したのは、蝋燭の消える前の火だったのかしら? それにしてもしくじった。
鑢をあの化物の額の穴にぶちこんで、ピストン運動でもかましてやれば言葉通りの意味で天国までイカせてやれたのかもしれないけど、邦彦が頭を動かした事で頭蓋で止まり、邦彦を殺しきれなかった。
邦彦は多々良を地面に思いっきり叩きつけて殺すつもりだろう。
「いったいなぁ・・・・・・ウチの可愛くて細くて、エロい足になにさらしてくれるんじゃワレわぁ!」
多々良は足の激痛を抱えながら、振り子のように身体を動かすと開いている方の足で、邦彦の頭に刺さっている鑢を思いっきり蹴り込んだ。
「死にさらせやぁ!」
指の第二関節くらいまで邦彦の頭に突き刺さった鑢。邦彦は多々良を掴む手を緩める。いや・・・・・・もう邦彦はここにはいない。脳に直接鑢を打ち込まれその瞬間に絶命した邦彦。私は邦彦の頭に刺さった鑢を回収すると多々良の元へ行き。私の上着を多々良の口に含ませる。
「強く噛みなさい。足を元の方向に戻すから。痛いわよ? せーのっ!」
私は全身の体重をかけて、変な方向に曲がっている多々良の足を元の方向に戻す。
ゴキっと嫌な音。
「んんんんんっんん!」
あの多々良が涙目で悲鳴を上げるのだ。これは痛い。あとはその上着を解体して、私のこの鑢を添え木に多々良の足を固定した。
「お、おおきに。小鳥ちゃん」
「あまり、遊ばない事ね。死ぬところだったわよ」
「ほんまやな・・・・・・」
疲れたような顔でそう言う多々良の元に、泣き顔の柚希がやってくる。ごめんなさいごめんなさいと、謝罪を繰り返す。
ごめんで済めば私達異常性犯罪者が生きやすい世界がやってくるでしょうね。
「柚希ちゃん、こっちきて顔こっちに向けて」
どうせキスでもするんでしょう。本当に万年発情期の多々良。
ぱしーーん!
多々良は柚希の頬を叩いた。それも結構全力で・・・・・・さすがに今回の件は怒りの方が先に来たのか?
「柚希ちゃんが死んだらどうするつもりだったの?」
「・・・・・・ごめんなさい」
再び謝る柚希を抱き寄せると多々良は柚希の胸に顔を埋め、そして甘い少女の声でこう言った。
「ウチ、歩かれへんねんから、柚希ちゃんがウチの世話してやぁ!」
私と目が合う柚希の狂気の表情を柚希に見せてやりたいものだけど・・・・・・この柚希は笑顔でこう言った。
「任せて!」
こうして、私達の鬼ごっこは終わりを告げた。実は、多目的室にいた少女の内何人かには意識があった。だが、私と多々良は彼女達を他の少女達に知られる前に皆処刑する事にしたのだ。多目的室にいた少女達は嵌められただなんて噂が私に立てば、ややこしくなるから。まぁ、そんな事より早くシャワーを浴びて寝たい。
あと、フランの身体が恋しくもなってきたし。
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