第11話 班分けと班長のお仕事は大変

「怪物の慟哭が聞こえるわね」


 食べ終えたのだろう。一人の少女、一人の人間を……震え上る他少女達と対照的に私はファンシーなリコーダー入れを取り出す。それを見た多々良は首を横に振る。


「それじゃあの怪物は殺れへんで、痛覚チェックもしてみたけど、殆どないわ、食欲と性欲で脳内アドレナリンでまくりなんやろな……あれがウチ等の行き着く先か?」


 多々良はあの怪物を間近で見てきたんのだ。

 それ故に正しいのだろう。悲鳴を上げる少女達にゾクゾクしながら多々良は語る。


「あれはほんまに猛獣仕留める気でいかなあかんわ」

「ここには猟銃どころか、何もないわよ」

「あれ出来とる?」

「アルミニウム粉末?」

「そやそや」


 テルミット爆弾を作るつもりなんだろうけど、この程度の火力であんな猛獣みたいな人間を殺せるわけがない。


「小鳥ちゃんのその表情。めちゃめちゃ、不満気やん! でもこれ見たら小鳥ちゃんも笑顔になるんちゃう? 小鳥ちゃんの大好きなホットケーキの材料。じゃーん! !」


 そう言って多々良は小麦粉の大きな袋を取り出した。あぁ、そういう事か……部屋ごと吹き飛ばすつもり。私達小等部の年齢で購入できる最強の爆薬をあの短時間で用意したわけね。

 本当にぬかりがない。


「でもどうやって?」

「この先には教室が四つ、一番広い多目的教室。そこに小麦粉をばらまいて、そこにも餌を配置する。でそのテルミット爆弾投げさせて、ドンや!」


 当然のごとく数人の少女達を犠牲にする気なのだ。もちろん、多々良の眼鏡に叶わなかった子等を犠牲にする。


「多々良、あの元気だけが取り柄みたいな子がこっち見てるわよ。何か言ってあげないとあーいうのはややこしい」


 仕切りたがりのタイプの少女は、今何もできず、私と多々良がしばらく二人で話しているのが気に入らないのだろう。それに多々良はぞくぞくした表情で言う。


「あの子も、ほんま美味しそうや。あとで手懐けたろ」


 多々良の眼鏡に叶った少女。多々良は十九人のグループを四つに分けた。私がリーダーとなるチーム。

 私を含めて4人、ここに一番可愛い少女を集めてきたのは私への当てつけかしら?

 多分、誰一人傷物にするなという無言の主張だろう。

 そして多々良のチーム。5人。可もなく不可もなくという子を恐らく集めた。

 死んでも構わないが、出来る事なら助けたい。元気が取り柄の少女のチーム、恐らく準助けたい少女達。3人。そして雛をリーダーとした一番広い多目的教室配置のチーム。多々良は多目的教室には、仕掛けをしているから、逃げやすい為、7人配置にしたとそう言う。そして雛にあのテルミット爆弾を渡す。


「奴が入ってきて、教室の真ん中くらいまできたらこれ点火して投げてな。他のチームにもウチが用意した道具つかってもらうから」


 私には私が用意したあの鑢を、多々良はピアノ線。そして元気だけが取り柄な少女には一見何かに使えそうな果物ナイフ。

 これはブラフだ。雛達を爆死させる為の……


「雛ちゃん、絶対に焦らず真ん中まで来たらそれを投げるんやで。その後にみんなで助けにいくからな」


 怖がる雛を多々良は抱きしめて、他女子生徒の前でキスをした。それも濃厚な。

 突然の百合に少女達は顔を赤らめる。


「なっ、何やってるのよ貴女達!」


 元気が取り柄の少女はそう言って多々良と雛の交わりを強制的に止める。もう少し見ていたい。もう少し多々良とキスをしていたいという雛は空気を読んでという表情をするが、多々良だけは違った。


「柚希ちゃん、ごめんな? ウチ等、もう会えなくなるかもしれへんから、調子乗ったわ……ウチも怖いねん」


 そう言って娼婦の目をする多々良。それに柚希と言うのか、あの元気だけが取り柄の少女は表情をそらすとこう言う。


「わ、私が皆守ってあげるわ」


 ほんと、馬鹿ね。

 そろそろ、このお気楽な子達に私が喝を入れてあげないとダメね。


「皆和んでるところ悪いけど、もう近くまで来てるわよ。だから、持ち場について」


 私達は手を合わせて、こう言った。


「「「「必ず! 全員でまた帰ろう!」」」」


 こんな子供騙しの事を言うだけで皆の気持ちが一つになるなんて、本当にメスガキは愚かで愛おしいわね。

 私と多々良は心にもない事を言い合って、持ち場についた。

 私と一緒に小さな教室に隠れている少女達三人。多々良は、お人形のような幼い子、少女趣味の子が好きなんだろう。

 でもこういう子達を育てるのも悪くはないかもしれないわね。


「みんな怖いと思うけど、安心して、あなた達だけは私が守ってあげるから」


 私の言葉を聞いて、少女達は恐る恐る私に尋ねる。


「どうして小鳥ちゃん達は私達を守ってくれるの?」


 そんなの、身体の関係になりたいからに決まってるじゃない。玩具にして、私の所有物にして、好きな時にイカせて好きなの時に自分の性欲を発散する為。そんな風に言えば、この少女達はどう思うだろう?

 そもそも理解できないか?

 だから私はこう言うの。

 三人の少女達を抱きしめながら……


「こうやって出会えた事が奇跡なんだよ? なら私はみんなと一緒に卒業したい。それが運命だと私は思う。だから貴女達を守るわ」


 キュンと胸の鼓動が高鳴ったに違いない。私はこんな幼い少女達に興味はないが、この年齢から私の為の肉奴隷を作るのも悪くはないわね。だって私の駄犬フランもその内卒業しちゃうんだから。

 私は一人の少女にキスをすると押し倒し、服をめくり優しく身体に触れていく。


「小鳥ちゃ……やっ……」

「小鳥ちゃん、こんな時に何やってるの!」

「貴女達もいらっしゃい。一緒に気持ち良くなりましょう。怖い気持ちを塗り替えるのよ。優しくしてあげるから、この子を見てごらんなさい。蕩けそうな顔をしてるでしょ?」


 私の手でイカされている少女はめぐというらしい。

 めぐが、幼いながらも雌の鳴き声で鳴くものだから、その気持ちいい顔を見て、他二人の少女達もゆっくりと私の近くに寄ってくる。親にも見せた事がないような場所を私に晒し、性知識なんて殆どない彼女等は固まりながら私に気持ち良くされる事に身を委ねる。

 いやらしい音を立てて私は少女達と交わる。この光景を見たら多々良は発狂するか、それとも大喜びで参加をしてくるか……三人と私は汗と、女の子の香りで乱れ、汚れる。


 ガシャン!


 きゃああああああ! 助けてぇ! 怖い! 怖いよぅ! ママ、ママぁあああ! パパ助けて、いだぁい! いやあああああ!


 始まった。


 猛獣が暴れ始めた。その悲鳴を聞いて私と交わっていた少女達の意識が現実に戻ろうとする。それに私は魔法の一声。


「大丈夫。私に身を委ねて」


 ちゅぱちゅぱと、三人で私の舌を競うように求める。私の手は少女達の体液でべとべとに濡れ、そして遠くでは阿鼻叫喚の悲鳴。それをバックミュージックに私はさらに少女達に快感を与える。

 誰かに、いいえ。私に触れられる歓びと快楽に大げさな脊髄反射を何度も繰り返す。

 ビクン、ビクンと……お漏らしをしたかのように絶頂を迎え、それでも尚私が優しく攻め立てる。

 気持ちいい。

 彼女等の脳細胞はいくらか、この快感で死んだのか、生まれて初めての快楽を前に思考を完全に失っているだろう。

 さて、そろそろだろう。

 2、3人あの怪物に捕食されたところでしょうね。

 もう我慢できずに……雛は起爆させるでしょう。ここなら大丈夫だと思うけど……


「みんな耳を塞いで」


 私の声を聴いて、殆ど全裸の少女達は言われるがままに耳を塞ぐ。そして、音よりも前に地震のような横揺れ。そしてすぐに音が伝わってきた。

 ドカンとか、バァアアアアン! なんて音じゃない。それは何か大きな猛獣の叫び声のようにヴォワンン! といった音だった。

 ガラスと言うガラスがその瞬間に耐震強度を超え雨のように降り注ぐ、さすがにこれで生きてる生物はいないでしょう。私にイカされていた少女達は絶頂の快感よりも今の破壊音に意識が完全に覚醒する。


「今の音って……」

「大丈夫。私が見てくるから、三人ともここにいて」


 人間が焼けた匂いがする。

 この身体でこの臭いをかぐのは初めてなのに、なんとも懐かしいそれに私はファンシーなリコーダー入れを握る力を強める。

 服を破いて口に巻きつける。


 ダダダダダダ!

 この軽い足音は多分。


「多々良」

「いくで小鳥ちゃん。こん中はウチも小鳥ちゃんも慣れっこの地獄や。で、多分。邦彦君はまだ生きとる」


 そんな馬鹿な……そんな事ありえるの? どう考えてもこの多目的室の中は瞬間的に電子レンジのような状況になったハズ。いくらあの化物が痛覚に疎くても……開いた扉の中は・・・・・・


「ううぅぅぅうううぅあ゛あ゛あ゛ぁぁああああ! うごぉおおおおお!」


 あははぁ、本当に地獄だわ。少女達の焼死体を全身に火傷を負いながらしゃぶっている怪物邦彦。そしてそれは私達を見て……

 いいえ、もう視力も殆どないでしょう。

 そんな状況で、私達処女の・・・・・・初潮を迎えたばかりの味と匂いに反応したんでしょう。


「小鳥ちゃん、きばりや。この化物に引導を渡すで」

「ええぇ、いつでもいいわよ」

「あとで、ウチが自作した玩具で、♀×♀セックスしよかぁ?」

「馬鹿なの?」


 私の反応に対して、多々良はピアノ線を取り出すと、私の唇を勝手に奪ってから走り出した。

 それに続く私。

 これは鬼ごっこなのだ。ようやく私も理解した。相手を狩った方が鬼。そんな鬼になりきるごっこ遊びなのである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る