第9話 ヨモギの葉っぱと、果汁100%ジュース

 目が覚めると、封筒の中に入っている札束を見ながら私はこの前のお小遣いで購入した剣道という精神修行を兼ねたスポーツで使う道具。竹刀という物でフランチェスカの穴という穴を弄んだ。

 突き立て、かき回す度に良い声で鳴くフランチェスカ、本当にいい物を買ったわ。本来どうやって使うのかは知らないけれど、素晴らしいアダルトアイテムである事だけはよく分かった。


「フラン、さっきから一人で何回も絶頂しているところ悪いけれど、お腹がすいたわ。少し散歩をしてくるから、私が帰るまでに部屋を綺麗にして料理を用意しておきなさい」


 ふぁい。なんて声を上げるお馬鹿な駄犬を部屋に残して、私は一人でお買い物。

 この学園で唯一お買い物ができる購買部に向かった。

 凶器を覗く大抵の物が手に入る。あれから私は煙草が吸いたくて仕方が無かった。

 ケーキやジュース、反吐が出そうなファンシーな絵本や詩集、それにDVDアニメ。そんな物ではなく、私が今回手に入れようと思っていた物。ライターオイルはさすがに売ってはいながいが、代わりにベンジンがある事に気づいた。

 女子高生の理科の実験にでも使うのだろうか? とりあえずそれを購入。できればタングステン製のナイフが買えればいんだけれど、当然そんな物は売っていないので、私は金属を削る大きな鑢を二つ購入。

 今日はフランの為の大人の玩具を買いに来たわけじゃない。


 あの調理実習が終わる頃、多々良が私の耳元で言った。護身用の道具くらいは持っておくんやでと・・・・・・多々良が言うなら冗談じゃないんだろう。

 多々良は何か私の知らないところにまで近づいているようだ。

 この学校で手に入る包丁やナイフなんて物は図工や調理実習で使う子供騙しな物が多い。実際人の骨に達する前に折れてしまうようなチャチな出来だ。

 だけど、鑢は違う。そもそも金属を削る為にある鑢、まず折れない事を念頭に作られている。私は、鑢で鑢を削り、磨く。並の刃物よりも凶悪な凶器になる事はあまりにも有名ではあるか?

 ファンシーなリコーダーケース。それを私はポチる事にした。

 鑢を隠し持っておく為のケース。いわば鞘ね。

 そんな私の思考を遮る耳障りな声。


「あぁ、小鳥ちゃんやーん!」


 本当に煩い。

 どさくさに紛れて、私の身体を触る多々良。最近、この多々良に胸を揉みしだかれる程度はどうでもよくなりつつある自分がいる。多々良はヤバい鼻息と、興奮した呼吸をしながら私に語りかける。


「小鳥ちゃあん、何こうたぁ~ん」

「・・・・・・んっ、いいかげん触るのを・・・・・・あん・・・やん、やめなさぁい」


 熱い息を吐きながら私は自分が購入した物を見せると私の首筋に甘噛みしながら多々良は語る。


「案外普通やん、ウチはこれやで」


 ピアノ線、小麦粉、アルミホイル。成る程、多々良は私に合わせてきたのか、とりあえず今のところは多々良は協力する気らしい。私の服を胸が見えるまでまくり立てると、幼い下着に手を伸ばす。

 それを私はゆっくりと止めた。


「これ以降は、有料よ多々良」

「ええよ。払うわぁ、だから小鳥ちゃんの処女頂戴やぁ~」

「冗談はいいから、なんでこんな物を用意する必要があるの?」


 私の質問に多々良は私から離れると、ポケットからまさかの煙草の箱を取り出した。そしてマッチで火をつけるとそれを咥える多々良。

 ごくりと私は喉を鳴らした。


「小鳥ちゃんも吸いたいかぁ~、あぁ~うまいなぁ~!」


 こいつ、どうやって煙草を手に入れたのかしら。

 吸いたい。この身体で煙草を吸う快感なんて知らないが、前世の記憶とでも言うべきか? 肺に送りニコチンが血中、脳に回るのは実にたまらない。

 私は辛味の後のコーヒー、シャワーの後のビール。そして揚げ物の後の煙草は性感を除けば世界最大の喜びだと思っている。


「い、、一本頂戴」

「ええよぉ、代わりに小鳥ちゃんのおイチゴ吸わせてぇなぁ」


 ゲスの極みめ。

 私は上着を脱ぎ、ブラを取ると胸を多々良に晒した。それに多々良はしゃぶりつく、じゅぽちゅぱ、と卑猥な音を立てながら、私を感じさせる。そして多々良の手が私のスカートの方に伸びるのを私は許さない。


「そこは、許した覚えがないわ。はやく、煙草をよこしなさい」

「もう、しゃーないなぁ~、もう少ししゃぶりまわしたかってんけど、ええわ吸い」


 夢にまでみた、喫煙。一体どれだけぶりだ・・・・・・多々良の吸う煙草の火から私は火を貰いそれを吸った。

 ・・・・・・は?


「ぶほっ! なんだこれ! まぁっずう! 何すってんのよ多々良!」

「これぇ? ヨモギ煙草に決まってるやん。ウチ、未成年やでぇ! ニコチン入った煙草吸えるわけないやん! 合法的に購買部の商品にもあんねん。まぁ、普通に考えたらありえへんけどな」


 全く、胸を好き放題犯されて手に入れた物がこのクソまずいハーブシガーとは・・・・・・


unkind泣けるぜ


 それでもないよりはマシかと私も購買部でハーブシガーとマッチを購入できる限界まで購入する事にした。それから、このまずいハーブ煙草を多々良と屋上でしばらく吸ってぼーっとした一時を過ごしていた。


「小鳥ちゃん、酒飲むか?」

「・・・・・・は?」

「そんな怪しまんといてって・・・・・・これはマジもんの酒やから、ほれ」


 それは果汁100パーセントのジュース。これを見て、私はその手があったかと多々良の頭の回転の速さにやや感動した。


「昔、こんなの作って飲んだ事があるわ。イースト菌に砂糖ね」

「そやそや、2,3日で果実酒のできあがりや。ほな、小鳥ちゃんとウチの友情を誓って」


 そう言う多々良と乾杯し、多々良が口につけた瞬間に私は私の持つ自家製ワインを多々良に私、多々良が飲んでいる物を奪って飲んだ。


「貴女の事なんで、睡眠薬くらいいれてそうだから」

「そんなんせーへんって!」


 二人で自家製ワインを飲みながら、クソまずいヨモギシガーを吸って無駄な時間を潰す。


「多々良、この学園について貴女はどこまで知ってるの?」

「ん? 小鳥ちゃんが思う程にはウチはなんも知らへんよ。せやけど、何人か抱いたった中等部の学生等の話を聞くと、”お泊まり会”の開催頻度は小等部より少ないな。で、この前首ちょんぱされたあの女子高生の言葉」


 あともう少しで卒業できるというものだった。確かにあれには私も気になっていた。この全寮制の女学園。夏休みだろうと、年始年末だろうと自宅に帰れるようなフラグは立たないらしい、そりゃそうだろう。ここはある意味、子供を捨てる山のようだ。


「卒業するとどうなると思う?」

「そんなん分からへんよ。ウチのルームメイトのお姉様も全然口割らへんし、むしろルームメイトペットにしとる小鳥ちゃんが全然知らへんっちゅー時点でなんかあるやろ、女子高生組には」


 確かに、フランは絶対に”お泊まり会”の事やその他学園で行われている異常な出来事に関して全く語らない。それにしても・・・・・・


「多々良、このお酒少しもらっていってもいいかしら?」

「何するん? 晩酌?」

「いいえ、私の駄犬にお尻から直接アルコールを吸わせて、犯す為よ」

「小鳥ちゃん、天才やん! ウチもそれしよ。肝臓通らずに大腸の粘膜からアルコール吸うとすぐ酔っ払うもんなぁ、べろべろになったロリ、好き放題できるんなんて、ええ事聞いたわぁ」


 そう喜んで私に二パック分、果実酒をくれるので、酔った勢いか、私は多々良の唇に自分の唇を重ねた。


「あふっ、なんやぁ~、小鳥ちゃんもエロい気なったぁん?」


 ぴちゃぴちゃと音を立てながら舌を絡ませ合う。口の中でシェイクするように愉しむと私は多々良から離れた。


「ワインのお礼よ」

「えぇ、生殺しやぁ~ん。保健室で最後までしよやぁ」

「しないわよ。私の可愛い駄犬が部屋で待ってるの」


 私は多々良の容姿や、多々良が成長したあとの身体にも全く興味はない。だが、ほんの少しだけ、同じような時代を生きた相手と酌み交わした杯に懐かしさを感じていたのかもしれない。


「そう、こういうのに浸ったら、あとは死ぬだけ」


 それを多々良も分かっているだろう。私達は仲間ではない。ただ生存確率を上げる為の同盟なのだ。だから、自分が生き残る為なら相手を犠牲にする事も厭わない。

 もし、多々良を仲間だと思ってしまったら、私は多々良に犯され、殺されるだろう。

 本当に酒は怖い。


”みんなぁ~、お休み中は沢山楽しい事ができましたかぁ~?”


 さて、二連休明けの放課後、私は狙ったかのように”お泊まり会”にかり出される事になる。この機械音声にも随分慣れてきた。今日はどんな遊びをするのかしら? 今回、広いホールに集められた少女達は20人程いるだろうか?


”今日のお泊まり会は、みーんな大好き。鬼ごっこだよぉ! 制限時間は8時間。逃げ切るか、鬼が相手を殺せば勝ち、楽しいね! それに今日はすっごぉーいゲストを呼んだからみんな仲良くしてあげてね! レッツウォッチングタイム!”


 ホールに備え付けられた巨大なモニターが降りてくるとその画面は表示された。少し太りすぎた男が何かをむしゃむしゃ、ボキボキと、ぬちゃぬちゃと食べている。

 それが何か男がカメラに振り向いた時、それを見た少女達は阿鼻叫喚の嵐だった。もう既に事切れている全裸の少女を足から捕食しているのだ。これが、趣味の悪いホラー映画ならまだ良かったのかもしれないが、遠くで泣き喚いている裸で鎖に繋がれた少女。男はポイと捕食している少女を捨てると、その泣き喚いている少女の元へ行き、おもむろにその顔を殴った。


「ごめんなさいごめんなさい! お願い助けてお願い。ママ、ママぁあああ助けてぇええ!」 


 そんな助けを求める声を無視して男は何度も少女の顔を殴る。虐待、暴力、そんな物じゃない。それを見ていた私と多々良だけは何をしているのか分かってしまった。

 この男は魚や鶏を絞めるように、少女を食べる為に締めているのだ。ぐったりとしている少女の匂いを男は嗅ぐと、少女の柔らかそうで小さい肩にかぶりついた。その激痛で少女の最後の意識がしっかりする。


「いだぁああああああ・・・・・・あぅ・・・マ・・・・・・まぁ」


 ゴン。

 と鈍い音と共に、少女の瞳から光りが失われる。その映像を見て胃の中の物を戻す少女達。ただただ鳴く少女。悲鳴を上げる少女。そして、私と多々良だけは、これから起きうる事に警戒し、表情が硬くなっていく。


”はい! みんなの今日のお友達。大槻邦彦君。なんと、半年でみんなと同い年くらいの女の子ばかり三十人も食べちゃったとぉーっても食いしん坊な28歳の男の子。死刑が決まったんだけど、せっかくなので、今日は学園に遊び来きてもらいました! よい子のみんな。仲間外れにせず、仲良くしてあげてね!”


 そして、モニターが切り替わる。檻のような場所から解き放たれる邦彦。そしてそれはこのホールに向かってやってきているようだった。

 逃げ惑う少女達。それに焦るのは多々良。


「あんたら、しっかりしぃ! パニックになったらあの化け物に喰われてまうでぇ!」


 多々良の声を聞く者は殆どおらず、これだけの人数の少女が失われるかもしれないという事に多々良は焦るが、小鳥は多々良の肩に触れてこう言った。


「今回は、私達が生き残る事を考えましょう。あれは、私達並の、ろくでなしよ」

「あんなん、ウチ等と次元がちゃう、怪物やろ・・・・・・」


 過去最悪の鬼ごっこが、今開始された。

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