第6話 中等部の二人
ぶたれるくらいなら、おとなしく股を開いて従った方が安心できる。姉妹同時に犯され、穢され、心が壊れるのが先か? 身体が壊れるのが先か? そうだ。どうせこんな事しかないのだ。これはそういう遊びなのだと思おう。気持ちいい事なのだ。あたりまえの事なのだ。
そうして、
それを見た二人は、少し楽になるとそう思った。これだけ人数がいれば自分達の順番が回ってくる事は少なくなる。嗚呼、嬉しいそう二人は思っていた。
だが、二人を運命は許してはくれなかった。
そこにいたイカれた男達が子供達に行わせた悪魔の所行。
殺しっこ。ビデオカメラの前で、二人一組の子供達がそこら中に落ちている凶器、ドラッグを使って殺し合うのだ。必死に、生き残る為に殺し方が惨ければ惨い程に男達は喜ぶ。そして時にはおいしい食べ物を与えてくれる事もあった。
だから、二人は思う事にした。
これは、正しい事なんだ。そして、楽しい事なんだと・・・・・・どれだけ月日が経ったか分からないが、虐待と殺人に手を染める恐怖を癒やす事はドラッグとセックス以外にはありえなかった。
「朱亞っ・・・・・・欲しいの、ちょうらぁい」
ぴちゃぴちゃと音を鳴らしながらお互いの舌を舐め取るように求める。同じ顔をした雨彤が攻め、朱亞がいつも受ける。その背徳行為もまたカメラに収められる。その映された内容が何処で出回っているのか二人には知るよしもなかったが、ここにいる男達を愉しませている間は自分達は生きていけるとそう信じていた。
二人は二人で生きていく事だけを希望に終わる事のないこの地獄のような日々を生き抜いてきたのだ。
「朱亞・・・・・・ヤダ! やだよぅ!」
目の前には自分と同じ顔をした双子の妹。男達は分かっていたのだ。最高に盛り上がるのは、この共依存の双子が殺し合う姿。もう既にドラッグをキメて、捕まえてきた子供を男の子だろうと女の子だろうと欲望に赴くままに犯し、壊し、そして殺す。そんな中で双子の殺戮ショーが始まった。
「身体を重ねる時は雨彤の方が強気なのに、しかたがないじゃない。こうなる事も予想してたでしょ? なら、雨彤か朱亞か。どちらかが最後まで生き残ればいいじゃない。どうせこの世界に答えなんてないんだから」
そう言ってドラッグの入った注射器を二つ拾い、手に収まる程度のナイフも拾った朱亞。 注射器の一本を自分の首に打つ。
「はぁ~、きもぢいいぃいい」
興奮し、高揚する朱亞。そして一目散に走る。走る。右手にナイフ、左手に注射器。そして雨彤を捕まえるとその首元に朱亞は同じ薬を打った。それを見ていた男達は酒とドラッグで興奮は最高潮に高まる。雨彤はガラス片を拾う。
「ラララララララ」
朱亞と雨彤は歌を歌いながら、お互いを赤に染めながら舞う。命の量を血液で量れる物なら恐らく、この舞踏は終曲に向かっていた。同じドラッグで同じように狂い舞っている二人。
見ている男達はどちらが朱亞でどちらが雨彤かは分からなくなった。賭けの対象として双子というのはあまりにも都合がいい。どちらがどちらかなど、どうでもいいのだ。もはやこの殺戮ショーを賭け事として見ている者がどれ程いるのかは分からないが、直に終わる。お互いの目の光が消えかかるその瞬間、野蛮で芸術なんてものに1ミリの興味もないような男達が息を飲む。瞬きの芸術という物に心奪われていた。
どちらかの、あるいは両方の命が摘み取られた時、しばしの静寂の後に再び男達は興奮に嬌声を上げるのだろう。
朱亞が、雨彤が・・・・・・この芸術に最後の一筆をナイフとガラス片を自らと同じ姿をしたキャンバスに・・・・・・
ダダダダダダダダダダ!
騒音が響く、頭に響くような煩い音。朱亞はどうなった? あれ? 雨彤だったっけ? 自分は誰だったんだろうまぁ、どうでもいいや。
「ねぇ? 朱亞か雨彤、なんだろうね?」
すぐに、男達の阿鼻叫喚が大波のように広がる。そしてもう一度、あの騒音。
ダダダダダダダダダダ!
目の前に広がるのは真っ赤な水たまりだった。男達がいなくなり、静かになったそんな場所が再び騒がしくなる。
一人の女の笑い声だった。
「ぎゃははははは! なんだここ、ポルノビデオ撮影所かと思ったら、ガキ使ったコロシアムかよ! おい、一匹生きてんぞ!」
少女が見た者は、突撃銃を持った天使だった。天使は突撃銃と足で先ほどまで大声で叫び興奮していた男達の屍をかき分けて少女の元にやってきた。
「おい、お前声分かるか?」
「うん」
「ラリってるかと思ったけど、結構意識しっかりしてんな? 名前は?」
自分の名前はなんだっただろう? 自分はどっちだったか?
「わかんない、天使様の名前は?」
「私? 私はゆかり」
少女は双子の自分の片割れの首を大事そうに持ちゆかりついていく。命が助かった。ゆかりと一緒に地獄より、人々を救うための仕事をしようとそんな事を思っていた。朱亞なのか雨彤なのか分からない少女は
それでもゆかりと同じ学校で生活ができるなんて夢のようだった。
学校生活がはじまり、雨亞は知る事になる。そこは居心地がかなり良くなったが、やっている事はあの男達に飼われている場所と変わらない。
「・・・・・・なんで?」
”お泊まり会”
誰がこのレクリエーションを考えたのか・・・・・・雨亞を含めて大きな穴の中にいる少女達の数は十五人。全員足に長い鎖がついている。これが何の為にあるのか雨亞だけは気づいていた。
高さは二十メートルほどだろう。周囲の少女達は何が起きたのか分からず助けを求める者。現状が把握できておらず、笑っている者。
「水が来る」
ざぁあああああああと音が鳴り、ゆっくりと水が満たされていく。少女達はここにきて現状を理解。上に向かって泳がなければならない。この鎖上限いっぱいまで泳ぐ事で息が出来るのだろう。水が雨亞の胸くらいの嵩になった時、はじめて一人の少女が叫んだ。
「私、泳げないの! 助けて」
周囲の少女達は体力がまだあるから、金槌だという少女に泳ぎ方を教える。雨亞はこの高さが満タンになるのにかかる時間は12時間ほどだと考えていたが、そんな事はなかった。二時間程で半分。カナヅチだという少女は見よう見まねで足をばたつかせるが、雨亞は叫んだ。
「何もせずに、水に身を任せて!」
その方が浮く。四時間ほどで水は溜まり、鎖が伸びるギリギリのライン。
そこで放送が流れた。
”今日のお泊まり会はプール開きです! 四時間このまま立ち泳ぎをしてもらいまーす! 一人脱落する事に2メートルずつ水嵩が低くなっていくよ!全員泳ぎきるか、十人脱落した時点で生き残った5人が完泳だね! じゃあ頑張ってね!”
四時間、雨亞からすれば対した時間ではないが、ここにいる少女達からすればそれは絶望にも近い時間である。
水温は冷たい。否応無しに奪われる体温。そして泳ぎ続けなければいけないこの状況。水の中とはいえ、鎖も重い。
「あぷ、あぷ・・・・・・もうダメェ・・・・・・たずけれ」
助けてやりたくとも誰も助けられる程近づく事ができない。協力できないような距離で雨亞達は繋がれているのだ。頑張ってとただ叫ぶ少女達。ただ立ち泳ぎをしている少女達の体力は5分もたない。それに雨亞は叫ぶ。
「体力を使わないで浮く事を考えて!」
四時間浮いていないといけない。そんな事をただの子供が出来るわけがない。カナヅチだという少女が最初に動かなくなり、ぷかぷかと浮く。そして、水が2メートル分排出される。鎖の距離がやや楽になった。十四人の少女達は恐怖と絶望の渦中だが、叫ぶ事は無駄に体力を奪う事を知って、涙を流しながらでも静かにただ浮いている事を考えていた。
「あと何分、あと何分なのぉ?」
そしてまた一人の少女に限界がやってくる。雨亞の読みでは、あと三時間三十分。これを少女に伝える事はあまりにも酷だった。既に彼女の中の体内時計では二時間以上経っていると感じていたのかもしれない。
「答えて・・・・・・お願い、あとどのくらい」
「あと、1時間です。頑張ってください!」
一人の少女の声が響く。
雨亞はその少女を探す、明らかにこの中で安定した姿勢を守っている少女。その少女を見て頷く。まだ冷静さを保っている少女達はあと1時間ではない事を知っているが、全員で生存する為のそのかけ声に再度希望を胸に抱く。
が、そんな希望と体力は天秤にはかけられない。一人の少女が睡魔と水温で体温を奪われ溺死する。水嵩は再び下がるもまだ16メートルはある。身体の自由戻っただけで殆ど変わらない。
「頑張って! 寝ないで! あと少しですよ!」
雨亞の体内時計ではようやく1時間半が終わったところ、立て続けに声を出し続けている少女も随分辛そうだった。先ほどあと何分であるかと聞く少女もまた浮いている。そして下がる水嵩。2時間を過ぎたあたりから、少女達の脳裏にはあと5,6人死んでくれればこの水攻めから解放される。そんな風に思い始めた頃。
「あぁああああ! 足が、助けてください!」
痙ったのだろう。誰一人として助けようとするものはいない。口減らしができると安堵している少女達。
雨亞は6メートル程の自由では助けられない。それ故に叫んだ。
「痛みに集中して! そして痛みがひくまで我慢。じゃなきゃ死ぬよ。死なないで!」
あとは少女次第。周囲から死を望まれている事を知っている少女だが、雨亞に生きる事を叫ばれ、痛みに耐え、そして足の痙りが引く・・・・・・そして再び体制を立て直す。
3時間経過。再び二人の体力が尽きた。残り10メートル。安堵できる程の高さ。あとは気力との勝負。あるいは気力がつきて5人が力尽きることを待つかのどちらか、そこからの一時間は皆青い顔をして幽鬼のような表情で耐えきった。ゆっくりと水嵩が落ちていく。皆、声にこそ出さなかったが安堵した表情を見せる。そして同時にすぐ雨亞は皆に激励を送っていた少女の元に走った。
「あなた、ありがと・・・・・・えっ?」
雨亞は少女を抱きしめる。それは好意からくるものじゃない。
「近くにいる子とくっついて体温の低下を防ぐのよ! このまま死ぬのは嫌でしょ!」
身体がぶるぶると震える。筋肉が身体を温めようとしている証拠。そして体温低下で死ぬ時の兆候。雨亞に抱きつかれ、少女は顔を赤らめてからこう言った。
「名前は?」
「雨亞と」
「私は、リリコです。雨亞さんに声をかけてもらわなければ私は今頃・・・・・・」
周囲で動かない少女達の水死体を見て言葉を詰まらせる。そんなリリコの身体を強く抱きしめる雨亞。雨亞は自分を助けてくれたゆかりが働くこの学校で行われている事。逸れすなわち悪。ゆかりに天誅を与える為、今はまだ死ねない。
「雨亞さん・・・・・・」
リリコの服を脱がし、雨亞は自分も服を脱いでお互いお体温を重ねた。
(・・・・・・殺してやる。ゆかり)
怒りの炎を心に宿す雨亞と、その雨亞に身体を許したと思い。恋いをした少女リリコ。中等部の二人は初のお泊まり会を生存するに至った。
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