第159話 おつきみだんご


 おつきみのときには、おだんごをかざる。

 それで、なんかよくわかんないけど、つきをみたりして、おだんごをたべる。

 いちばんさいしょにおだんごをたべるのは、たぶん、めにはみえないなにかだ。

 それで、あたしがにばんめに、おだんごをたべる。


 てっぺんのやつだけ、きいろい。

 だからあたしは、いちばんさいしょにそれをとって、たべる。

 のこりはぜんぶ、まっしろ。

 それをみんなで、わけわけする。


 ……っていうのが、きょねんまでのおつきみだった。

 たぶん。

 なんでたぶんかっていうと、しょうじき、あんまりおぼえてないから。

 きいろいのがいっこで、それをあたしがもぐもぐたべてることくらいしか、ちゃんとおぼえてないから。


 ことしのおつきみはっていうと、なんとまさかの、ぜんぶまっしろのおだんごだった。

 ママに、


「きいろいのは?」


 って、きいたら、


「かいにいくのがおそかったみたいでさ、うってなかったんだ」


 って、いって、ママはしょぼーん、ってした。

 あたしも、しょぼーん、ってなった。

 だって、あたし、けっこうたのしみにしてたんだもん。

 ひとつしかない、きいろいおだんご。

 まんまるのおつきさまみたいな、おだんご。


「きょうはおつきみだけど、くもばっかりだね」

「うん。くもりだね」


 ママとしょんぼりしながら、あたしはおもった。

 きょうのおつきみだんごは、きょうのそらみたい! って。


「ママ。きょうは、あたしよりさきに、たべていいよ」

「……え?」

「きいろいのないから」

「そう?」

「うん」

「ああ、でも」

「ん?」

「じつは……」


 ママは、えへへってしながら、


「きいろいのないって、ぷう! ってなって、ママ、リンがようちえんにいっているあいだに、ひとりでみたらしだんご、やけぐいしちゃったんだよね」


 ぷう!

 なにそれ!

 あたしも、みたらしだんご、たべたかった!!


 あたしは、ぷうぷうしながら、ママよりさきに、おつきみだんごをたべた。

 そんなあたしを、ママは、まんまるのおつきさまみたいなかおをして、みてた。



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