第158話 とりっくおあとりーと


 あつい。

 ハロウィンのおかしが、おみせにならんでる。

 ってことは、たぶん、あきだ。

 でも、なつみたいにあつい。


 ママは「ざんしょきびしいなぁ」なんていって、アイスをかじってる。

「きょうはんになって」っていわれて、さしだされたアイスを、あたしもかじってる。


「ねぇ、ハロウィンのおかし、あったじゃん」

「ああ、スーパーに?」

「うん。あれ、ほしい」

「ええ……」


 ママが、とけたアイスみたいに、でろーん、ってなった。


「しってる? あれ、11がつになると、やすくなるんだよ?」

「ママ、しってる? あれ、11がつになるころには、ほとんどうりきれちゃってるんだよ?」


 ママが、もうジュースになったアイスみたいに、どろーん、ってなった。


「それもそうだね。じゃあ、こんど、かってあげる」

「やったぁ!」

「かえりにかいもの、いくきになったらね」


 ぷう!

 あたしはしってる。ママはいつも、あたしがようちえんにいるあいだに、おかいものしてる。

 ようちえんにいるあいだに、なにかすることがあって、どうしてもいけなかったときだけ、ようちえんのかえりにスーパーによるんだ。

 ママは、あたしといっしょのときにしか、ハロウィンのおかしをかうきがない。

 そして! ママは! あたしとおかいものにいくきがない!


「ねぇ、あきって、おばけなの? だから、ハロウィンなの?」

「へ? きゅうに、なんのはなし?」

「あき、ぜんぜんきてくれない。それで、おばけのイベントはある。ってことは、あきはおばけ? おばけだから、おばけのイベントをしていたら、あきがきてくれるってこと?」


 ママのめが、てんになった。

 あたしがいったこと、ぜんぜんわかりません、ってかおをしてる。


「え、ちがうとおもう。よくわかってないけど。ああいうのって、だいたい、しゅうかくさい、みたいなかんじじゃない?」

「なにそれ」

「かぼちゃとれてよかったね、みたいな」

「ほんとう?」

「てきとう」


 ぷう!


「ああ、でも、かそうするのは、なんでだろう……」

「じゃあ、しらべるために、おかしをかいにいこう」

「どうしてそうなるのよ」

「とりっくおあとりーと!」

「はいはい。もう。あついし、めんどうくさいけど、いくかぁ。そういえば、おしょうゆほしいし」

「やったぁ! いこう、いこう!」


 あたしたちは、いえをでた。

 おかしをかって、にっこり。

 だけどけっきょく、ハロウィンのことはわかってない。

 あとでパパに、きこうかな。




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