第154話 たのしいひ


「こらー! おーきーてー!」


 ママが、なんか、いってる。

 あたしは、きかなかったことにして、タオルケットをあたままでかぶった。


「こらー! きょうからようちえんだってば!」


 ぷう!

 うるさいうるさいうるさーいっ!

 きょうからようちえんだってことくらい、ちゃんとわかってるよ!

 わかって……


「はっ! ようちえん!」

「あっ! おきた! ほら、はやくごはんたべて! じゅんび、じゅんび!」


 ママが、あたしをせかす。

 だけど、あたしはあせらない。


 きょうまでおやすみだったんだ。

 きょうだって、やすんだっていいはずだ。


「こらー! にどねしないで!」


 ぷう!

 うるさいうるさいうるさーいっ!

 あたしはまだまだねむたいの!


 おきなかったら、ママがタオルケットをはぎとった!

 

「ぷう!」

「おやすみあけ、いくのめんどうくさいきもちはよくわかる! でも、いきなさい!」

「ぷう!」

「もしもおもしろくなかったら、かえりにガチャガチャしてかえろう。そうしたら、きょうはぜったい、たのしいひになるでしょ?」


 ……ん?

 それって、ようちえんにいかないで、ガチャガチャしにいけばいいだけなんじゃ……?


「ほらほら、おきておきて! いーくーよーっ!」


 ママがあたしのことをおこすし、せなかをどんどんおすから、あたしはしかたなくごはんをたべにいって、しかたなくじゅんびして、しかたなくようちえんにいった。


「あ、リンちゃん!」


 ひさしぶりにあえた、おともだち!


「おはよー!」


 かつどうをはじめたら、なんだかとっても、たのしかった!

 かえりみち、ママにるんるん、おはなししちゃうくらい、たのしかった。



 * * *



「ふぅ。やっとおうちについた」


 ママがやれやれってかおをして、いった。

 あれ、なんかおかしいぞ? なにかがあたまのこのへんに、ひっかかってる。


「あっ!」

「なにっ?」

「ガチャガチャしてない!」

「……え、たのしんできたんだから、ガチャガチャしなくていいでしょ」


 ぷう!

 そんなことない!

 たのしいがひとつ、へっちゃったじゃん!

 ぷうぷうぷーうっ!



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