第153話 またピンク? それとも?


 そろそろ、なつやすみがおわる。

 だから、あたしはさいきん、ようちえんのもちものをかくにんした。

 そうしたら、ママがいった。


「うわばき、きつくなってるじゃん!」


 ママは〝とんでもないことがおきた!〟みたいにいうけど、そんなにきついかな。

 あたしはピンとこなかったけど、あたらしいやつをかってくれるっていうから、ママにくっついておみせにいった。


「なにいろがいい?」


 ぷう!

 なんできくの?

 ピンクにきまってるじゃん!


「ピ……えっ!?」


 あたしはとっても、びっくりした!

 そこにはピンクだけじゃなくて、うすむらさきとか、きいろとか、たくさんのいろがあったから!


「いまどきはいいなぁ。ママがちいさいころなんて、あおかあかしかなかったよ? それに、おんなのこも、あおをはいてっていわれてたな。ちゅうがくせいになったら、がくねんカラーっていうのがあってね、それでようやく、あかいうわばきをはけるようになったの。そのとき、おとこのこがいやそうにしてたんだよね。やっとこれまでのあたしたちのきもちがわかったかぁー! って、こころのなかでおもったなぁ」


 ママがぐちぐち、なにかをいってる。

 ママがなつかしいはなしをしているときは、あたしはじゃましない。それに、きいてない。


 ええ、どれにしようかな。

 やっぱりピンク? それとも?


「きんきらもいいなぁ」

「え、ゴールド? いっちゃう?」

「でも、ピンクでいいや」

「ズコーッ!」


 ママがおおげさに、ひざをかくっとして、わらった。


「ま、そんなもんだよね。じゃあ、ひとつおおきいサイズのピンクを、かってかえろうか」

「うん。うわばきかったら、おやつかってかえろう」

「もう。ちゃっかりしてるんだから。じゃあ、ママのおやつもかっちゃおーっと」


 あたらしいうわばきをぎゅっとしながら、おやつをえらんだ。

 おやつもいっしょにぎゅっとしながら、おうちにかえる。


 いままでのうわばきさん、ありがとう。

 あたらしいうわばきさん、これからよろしくね。


 あたしはうわばきをちらちらみながら、チョコをパキパキ、わってたべた。

 あたしのゆびと、くちのまわりは、どろどろチョコで、ちゃいろになった。



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