サヨナラは突然にやってくる。
この恋はいつか終わる…。恋が愛に変わることはない。
私はわかっていた。
どんなに頑張っても、頑張らなければ続かない恋はすでに終わりに向かって進んでいるのだ。そしてサヨナラは突然にやってくる。
今、隣には佑二が気持ちよさそうに眠っている。私が頑張り続けているのは、そう…彼のため。
私は佑二の寝顔が好きだ。鼻筋が通っていて凛とした顔立ちをしている。閉じられた目はまつ毛が長く、とても整った顔立ちをしている。
私と佑二の出会いも突然だった。満開の夜桜の下で出会い、その日に付き合うことを決めたのだ。一目惚れ。本当にそんなことが自分に起きるなんて、思いもよらなかった。
だから今だけ楽しければそれでいい、そうゆう関係があっても不思議じゃない。深入りはしない、そう自分に言い聞かせたのだ。
『私、あなたのこと知らないし、付き合えない。もう帰るから。離して。』
『君は、過去やその人の経歴で人を好きになったりするの?それっておかしくない?』
『過去や経歴で人を判断したりしないわ。』
『じゃぁ、俺と付き合ってよ。』
『どうしてそうなるの?なんか嫌なことでもあったの?』
『そんなのないよ。』
『じゃ、どうして私に話しかけたの?』
『話したかったから。』
佑二の言葉は魔法の様に私の心の中に染み渡る。まるで佑二という人の魔力に屈するように、私の心はとけたのだ。
出会ったころのことを思い、私は眉間に皺をよせる。今佑二が隣にいることが私を不安にさせているのだ。幸せが怖い。
ガチャっ。鍵が開けられ玄関の扉が開く。
「誰?」
「何で電話にでないの?心配してきちゃったじゃない!」
「えっ?お母さん?」
やばい。ベッドの中には佑二がいる。
「ちょ、ちょっと待ってよ。」
私は慌てて佑二をたたき起こす。脱ぎっぱなしの服をかき集めて押し付ける。
「母さんが来たの。服を着て。早く!お願い。」
佑二は寝ぼけながらも、何が起きたのかを理解したような顔をする。私は出来る限り母が部屋に入ってくるまでの時間稼ぎを考える。
完全に目の覚めた佑二は慌てて服を着はじめる。
「寝込んでるの?入るわよ。」
「まって。ちょっと散らかってるから。」
母は私のプライベートゾーンにずかずかと入ってきた。いくらなんでも一人暮らしの娘の部屋に許可なく入ってくるのはどうゆうことなのか…。私は混乱する。
佑二のことをどうやって紹介すればいいのか…。私たちの関係をどう説明すればいいのか分からずにた。
「来るなら、来ると連絡くらいいれてくれる?」
「電話に出ないあなたが悪いのよ。」
私は部屋のドアを閉めてキッチンスペースと繋がった玄関に向かう。母が少しでも部屋に入ることを阻止したい。
母と言い争いをしながら仕方なく部屋に入ると、佑二の姿はなかった。佑二はどこにいったのだろう。少しホッとしている自分がいる。
何とか母を追い返し、ベランダにいるであろう佑二を呼ぶ。
「佑二?ごめん。戻ってきて大丈夫だよ?」
ベランダに佑二の姿はなかった。どこを探しても佑二はいない。咄嗟に浮かんだ言葉…。それは…。
「逃げた…?」
私は思う。私たちには共通の友達もいない。知っているのは名前と年齢と、もらった名刺の情報のみ。そういえば、佑二が結婚しているのかどうかも聞いてない。
私より1つ年下で社会人1年生だってことは知っている。だからって結婚していないとは限らない。佑二も私のことを何も知らない。これから知って行けばいいよ、と佑二は言うけど。
どこかで私は佑二を信じていなかった。信じることができなかった。だからこうゆうことになっても仕方がないことだって、どこかで諦めている。
頭では理解していても、佑二と過ごした日々が頭の中を支配する。
私は苦しくて、辛くて…涙を流していた。佑二を失ったことが悲しいのか、楽しい時間がもう二度とこないことが辛いのか。それとも隠さなければならなかった自分が嫌なのか。もはや分からず泣いていた。
* * *
「…ぅ…ぐすっ。…ぐすん。」
私は自分の泣き声で目が覚めた。夢。夢だったんだ。
「どうした?怖い夢でもみたのか?」
佑二の声が聞こえる。佑二が隣にる。不思議そうな顔をしてこちらを見ている。
夢でよかったという思いが私をさらに追い込む。
「おい。どうした?」
優しくしないで欲しい。終わりがくるなら始めなければよかった。私は声をあげて泣いた。
この後から、佑二と会う時間が減り…連絡の頻度も減っていった。
桜が咲き、そして散ったのだ。ただそれだけのこと。
END
*お別れの前に見た夢を物語風に少しアレンジしてみました( >д<)、;'.・。きっと心の不安が見せた夢なんじゃないかな~と思ったり思わなかったり。
*次回は何だろう…自分の声で起きちゃった、第2弾。今度は笑ってもらえたらいいな~系でいきます。続きはNext storyで☆
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