私は佐川さんが嫌い。

「はぁ…。」

桔梗ききょうさん、佐川さんの暴走なんとかなりませんか?昨日言ってたことと、真逆のこと言ってますよねー。」


 私たちは終わりが見えない仕事をしています。なぜか?それは顧客との窓口の佐川さんが、ブレブレでグダグダで…。仕様変更の嵐だからです。でもスケジュールは変わらない。お尻は決まっているのです。

 だからみんなイライラしていてボイコット寸前です。


 今の問題点を伝えようものなら佐川さんはヒステリーを起こします。


 しまいには、「私の言うことが聞けないの?」と言うしまつ。独りよがりの女王様。これでは誰もついていかなくなります。でも一日、一日と時間は過ぎていくのです。


 熱血だった頃のかいりさん。間違いは間違い、情報の整理をしてきちんとスタッフのみんなに状況を説明して、二度手間作業をなくすべきだ!と熱く上司の佐川さんに苦言を申し立てています。


「お前はさ~、正面からぶつかりすぎだし、受け止めすぎだ。大きな怪我する前に、スルーすることも覚えろよ。」


 他の先輩のアドバイス。でもスルーすることなんて…できない性分のかいりさん。悩みながらも佐川さんに突撃です。


「はぁ~?何言っちゃってるの?二度手間でもなんでもやるのがアナタたちの仕事でしょ? ねぇ、馬鹿なの? だから仕事が終わらないんじゃないの?」


 スイッチの入った佐川さんを誰も止めることはできません。人の気持ちを抑え込むことに命をかけているような辛辣な言葉が浴びせられます。かいりさん…協力会社のみなさんと、佐川さんの間に立たされてゲロゲロ状態。


 こんな日がここ何か月かつづいているのです。夜も遅いし朝も早い。ランチも自席でコンビニ飯。心身ともに疲れておりますw

 唯一の救いは、協力会社さんが味方になってくれること。佐川さんにとっては気に入らないことこの上ない。


「ねぇ、桔梗ききょう。そんなんだからダメなんじゃないの?この仕事向いてないんじゃない?もう辞めちゃえば?辞めろ辞めろぉ~!」


 なぜそんなことを言われなければならないのか理解もできず…、かいりさん鼻血がツ―っと垂れ…。吐き気が。


 頭に血がのぼると鼻血がでる。というのは本当なのかもしれませんね。あ~今思い出しても…(むむ…。ここからは自粛しますw)


 毎晩なかなか寝付くことができなくなっていたかいりさん。目をつぶっても佐川さんが明日何て言ってくるのか、そんな答えがでないことばかり考え続けています。心をすり減らしている日々。


 そんなある日の夢。


* * *


 私は背中にポスターケースを背負って走っています。


「納品に遅れちゃう!」


 急に背中を掴まれポスターケースを奪われ、それでも私は走り続けます。なぜか走らなければならないと思っていたから。


 しばらく走ると、大きな橋にたどり着きます。そこは太鼓橋のようなアーチ状の橋でした。


「こんなくだらないもの納品する気?」


 どこからともなく佐川さんの声が聞こえます。


 カランカランカラン…。


 私のポスターケースが投げ捨てられてコロコロ転がり橋の真ん中で止まります。


「ひどい…。投げなくてもいいのに。」


 向かい側にいたのは佐川さん。足を広げて腕を組み仁王立ちしています。人を小馬鹿にしたようなつんけんした顔。私の大っ嫌いな顔がそこにあります。


 私がポスターケースを拾おうとした時、どこからともなくチームで一緒に働く高畑くんが私の背中を押します。


桔梗ききょうさん、逃げて!」


 その声とともに、大きな雷が橋に直撃。橋は真っ二つに割れ、私のポスターケースも橋の下へ。


 橋の向こう側は佐川さんが腰を抜かしたように座り込んでいます。


「今のうちに逃げよう。」


 私は高畑君を従えて走り出し…。


* * *


 目が覚めた私の頭の中は、佐川さんのことでいっぱいでした。


「どうしよう。ポスターケースを落としちゃった…。佐川さんになんて言えばいいんだろう。きっとけちょんけちょんに言われる…。どうすればいい?どう言えばいい?」


 結局私も佐川さんもそのプロジェクトから外されて、二度と彼女と一緒に仕事することもなく平和を取り戻したかいりさんでした。


 今思えば…昼も夜も、夢の中でも佐川さんのことばかり考えていました。もしかしたらこれって…恋?



END


*「落雷」は怒りや激しい感情を示すそうです。そして「橋」は、今頑張っている事は、いずれよい結果に結びつきそうとのこと。(夢占い夢ココロ占いさん説)結構夢って面白いものですね~。


*次回はちょっと夢から離れて「食神」について綴ってみたいと思います!続きはNext storyで☆

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る