大人の階段上る?下りる?

 大人の階段を上る。誰もが経験することですよね~。そんな頃のお話です。


 ちょうど小学校6年生頃、○○くんが好き~とか、少女漫画を回し読みしてきゃっきゃ、きゃっきゃ言っていたころ。


 私は少年漫画とアドベンチャー系の映画に夢中になっていました。インディージョーンズとかハムナプトラとかOZの魔法使いとかハリーポッターとかが大好きで、映画好きの父と一緒に映画三昧の生活をしていました。


 厳格だった父は高校に合格するまではTVゲームは禁止!というつわものだったので、私の楽しみは映画だった。という訳ですw 映画で時間を潰すのは良い事なのか?と今なら突っ込み入れるところですよね~。


 もちろん父の好きな映画は私とは違っていて、007とか、戦争ものとか、宇宙戦艦ヤマトとか…。ちょっと当時の私には刺激の多いいタイトルばかりでしたが、勉強するより映画を観ている方が楽しかったので一緒に鑑賞するおませなガキんちょだったのです。


 なので(?)クラスのみんながアイドル推しの中、私は独り違う推しを持っていました。


かいりちゃんはさ~、誰が好きなの~?」

「う~ん?みんなの知らない人だよ。」

「え~教えて~。みんな言ったんだから、かいりちゃんだけ秘密はナシだよ。」


 私は昨日観た映画を思い出します。とってもかっこよくて素敵な人。


「知らないと思うよ~?」

「いいよ。言ってみなよ~。」


 私は戸惑いながらも正直に言ってみる。


「ショーンコネリー…。」

「え?誰?」


 その場が静まり返り…、私は正直に言ってしまったことを後悔(/ω\)。あ~やっぱり。知らないよね~。でもすんごくかっこいいんだから!


 その頃の私はインディージョーンズ最後の聖戦を何度も観て夢を膨らませていました。そしてショーンコネリーと教会でデートするんだ!という訳のわからない夢を抱いて。


 なぜ教会w? それは~もちろんおじいちゃんだし、教会が似合うと思ったから。


 そんなある日のこと。


* * *


 ここは学校の構内。さっきまで談笑していた友達もいなくなり、気づいたら一人教室に取り残されていました。


 非常階段の方角に人影を感じた私は、教室を出て人気のない廊下を影を追いかけて走っていきます。


「待って!置いて行かないで。」


 私は閉まりかけている非常階段の扉を体でこじ開けて、慌てて下を覗き込みます。高所恐怖症のはずなのに、ぜんぜん怖くなくて…。

 覗き込んだ先、螺旋階段の下のエリアに誰かがいるのです。


 私の声を聞いて、足を止めます。


 私はゆっくりと階段を降り、その人物のそばに…。


 その人物は黒い服をまとっていました。白髪で背が高くて…。男性だっていうことはわかりました。私は2段ほど上で足を止めます。そこでちょうど顔と顔が同じ位置になるような、そんなポジションで。


 私の心臓がトクトク音を立て、知らない人なのに良く知っている人の様なそんな不思議な感覚に身体が支配されていきます。手すりに手をかけ一歩階段を降りると、その人物が振返ります。

 

 恥ずかしくて顔を見れず、私は彼の黒い服と黒い靴を見つめることしかできませんでした。


「会いたかった…。」


 多分そんな言葉を呟き、私はギュッと彼に抱き着いて…。

 彼は何も言いません。でもしっかりと彼は私を支えてくれてハグをしてくれました。


 映画のワンシーンの様に、この螺旋階段の上で。彼は私の髪を優しく撫で、ハグの後…。


* * *


 そこで目が覚めました。


 心臓がドキドキドキドキしていて、息が止まっていたような感覚を覚えています。今思えば、あれはキスでもなんでもなくて、外国人の挨拶。頬を寄せる挨拶だった気がします。


 でもね…夢の中で大好きな人に会えるそれだけでも嬉しいのに、なんと私は夢の中でハグをしてもらったのです!


 その日友達に夢の話をしても、みんなぽか~ん、って顔をしていました。やっぱり私は変わってるんだな~ってつくづく実感したのも、こんな話があったからかもしれませんね。


 夢で逢えたら。それだけでも幸せなの。


 純粋なころのかいりちゃんは、そんなことを考えていたのでした。


END


*次回はぎゅーんと大人になって仕事三昧の頃の夢のお話。続きはNext storyで☆

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