第4話 魔女ミアン

「おやおや、誰かと思ったら随分と可愛らしいお客さんだねぇ」


 イブリットとタニアの顔を見るやいなや、女性の濁っていた瞳に光が差した。


「来客なんていつ以来かなぁ。迷子にでもなったのかい?」


 急に声にハリが出て、ボリュームもアップ。

分かりやすいくらいテンションが上がっている。


「えぇっと……あなたは?」

「私はミアン。この荒野に住んでいる魔女さ」

「魔女ですか。――魔女!?」


 思わず叫ぶイブリット。

 そのリアクションに魔女ミアンは驚きつつ、話を進めていく。


「そんなことはどうでもいいじゃないか。それよりも……君たちのことを教えてほしいな。お茶でも飲んでいかないかい?」


 ミアンはそう言うと、指をパチンと鳴らす。たったそれだけでテーブルは綺麗になり、真っ白なティーセットが並び、紅茶で満たされたポットまで出てきた。


「す、凄い……」

「私は立場的にこんなことを言いたくはないのですが、まさにメイドいらずですね」


 青ざめた顔つきでタニアは言う。

 それはともかく、イブリットは魔法が持つ可能性に震えた。

 すると、ミアンがグッと距離を縮めてイブリットの顔を覗き込む。


「分かる。分かるよぉ……何もしてなくても私には手に取るように分かる。君はとても優れた魔力を持っているようだね。食べちゃいたいくらいにそそられるよぉ」

「す、優れた魔力……?」


 その言葉が気になりはしたが、それよりも驚いたのはミアンの美貌だった。近くで見れば息を呑むほどの美人だが、中身はあまりにも残念なタイプ。まともにしていたら、きっと町の誰もが振り返り、男たちは放っておかないだろう。だからこそ、これまでの振る舞いが本当にもったいないとイブリットは思った。

 しかし――魔法の実力は本物だ。

 その手の業界には疎いイブリットではあるが、素人だからこそ素直に凄いと思えたイブリットは、もっと彼女と話をしたいと思った。


「あ、あの、私はイブリット・ハートレイクと言います」


 イブリットはまず自己紹介から始めてみる。

 タニアも同じように自分の名前をミアンへと告げたが、彼女が気になったのはイブリットの実家だった。


「ハートレイク……あのハートレイク家か」


 どうやら、ミアンはイブリットの家を知っているようだ。


「あの一族は剣術を得意としているが、君は魔法に関心があるようだね」

「は、はい。それで……さっきの話なんですが」

「優れた魔力という話だろう?」

「そ、そうです! ……あれって、本当なんですか?」

「もちろんさ」

「だったら――」


 食い気味に迫るイブリットは、畳みかけるようにミアンへある提案をする。


「私に魔法を教えてください!」

「君に魔法を?」


 ミアンは一瞬だけ驚いた表情を浮かべるが、


「それはとても楽しそうな話だねぇ」


 すぐに強い関心を示したのだった。






明日は12:00に投稿予定!

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