第3話 たまに願いを
「Hey My Son,もしお前、嫌になったらたまに空拝めYO。
お天道様は見ていてくれるYO。そうしたらきっとお咎めなしYO。
もう果たす、ワシ先に逝くぞ。任す形見のマイクロフォン。」
親父が最期に残した言葉。熱すぎ。
「許したまへあらずばこその今のわが身うすむらさきの酒うつくしき」
与謝野がみだれ髪で書いた歌。エロすぎ。
「宝くじ当たってもまだまだ働くし親に仕送りしたまに食う寿司」
俺が頑張って韻踏んだだけの短歌。ヘボすぎ。
しがねぇラッパーの俺、お弁当タッパー詰めてバイトばっか。
フリースタイルは仕事も同じ、むしろラップは正社員ばりのマニュアル通り。
このままじゃいけねぇと薬物頼るか、人生畳んでお陀仏決めるか。
いつだって悩み尽きない、運も月もない。
うんこあんま出てない。
便秘気味に少し焦り、買ったビオフェルミン&ビタミンC。
今年の願掛け健康に、それでも叶ったことない神頼み。
あ、流れ星。
だって聞いちゃくれない、俺の声ただの耳障り。
それでもかまわず言ってみよう。
恥を忍んでお手手合わそう。
「神様どうかお願いします、私に夢を見させてください!」
夜空の向こうへ消えてゆく、あの星に願いを託しても。
蛍の光のメロディと共に、いつかは消えるlike a 打ち上げ花火。
あれ、また流れ星。
流星群?いや、ひとつだけ。
運、いいだけ?
いや、燃え尽きない、あれは隕石?!
いや!死にたくない、夢半ばに!
「安心しろ!私は敵じゃない!」
誰かの声が頭の中で響き渡る。
誰だ?誰が俺に気づいた?
「傷ついた君のもとへ呼ばれて来たんだ。」
俺の願いを星に賭けた。
その星が俺に声かけた。
こんな奇跡、いや、魔法か?信じられない。
それでも絶対手放さないこの機会。
「流れ星、俺の願いを叶えてくれ。」
近ずく石に再度念押しだ。
「あぁいいさ、だけどすこし勘違いしてるな。私はただの流れ星じゃない。」
そうだ、まるで流れ弾に当たったような感覚。
パチンコで大当たりした時の百倍の気分。
「そうじゃない、俺は星じゃない。」
なんだ?星じゃない?冗談じゃない。
ふざけんじゃない、俺は見たんだぜ。
一日に二つも星は流れない。
「今言ったとおりだ。私は星じゃない、二つの玉」
WHAT?! Are you the 【DRAGON BALL】?
「No! I'm just the "balls" 君は生まれた時から私を知ってる。」
HAHAHA,笑わせんじゃねぇ。
俺は昔、闇市で臓器を売ったんだ。
金がなくて"金玉"落としたんだよ。
今頃になって天からお年玉?
転げて笑うわって本当にお稲荷さん?!
「Like a once upon a time! つるつるの玉の恩返しだ! 」
まるでビリヤードみたいに頭突かれた。
脳天にごっつんと鳴り響いた。
最後に見えた星の姿は、ギザギザじゃなくつるつるだった。
バイト帰り道、嘘のような毎分毎秒。
なぁ信じてくれまいか?My bro?
もうすぐ、語りだす真相究明。
とりあえず、明日は休養申請。
バイト先、毎度お先に失礼します。
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